博士課程早期修了志望者に求められるリスクマネジメント

博士課程の早期修了を目指す際に重要となるのがリスクマネジメント。修了時期を一年前倒しするには通常の1.5倍から2倍もの研究成果を短期間で出し切る必要が。しかし、研究の世界では、予期せぬ事態が次々と発生します。順調に進んでいた研究プランが突如崩壊したり、投稿した論文が掲載拒否になったり、体調を崩したりと様々な困難が待ち受けています。私自身も早期修了を目指す過程で数々の試練を乗り越えてきました。

北大博士課程を一年短縮修了した技術開発エンジニアかめです。この記事では、博士課程早期修了に挑戦する方々へ向け、考慮すべきリスクとその対処法についてお伝えしていきます。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

研究プランが途中で崩れるリスク

早期修了を狙うなら綿密な研究計画の立案が欠かせません。しかし、どれだけ周到に準備を整えても研究プランは突如として崩壊する可能性があります。

私の場合、D2の5月に壊滅的な打撃を受けました。それまでに得ていた実験データの大半が使い物にならなくなったのです。研究の根幹を支える仮説に誤りが見つかりました。半年以上かけて集めたデータが全て無駄になってしまった。論文執筆の目途すら立たない。早期修了どころか、標準年限での修了すら危うい状況に。

結局、実験をゼロからやり直しました。研究の方向性を大きく転換し、新しい実験手法をゼロベースで確立していったのです。幸運にも、実験をやり直し始めてすぐ、「この現象を深掘りすれば新しい展開が見えてくるかもしれない」との見込みが立ちました。力技で実験を進めてどうにかデータを集め切られたのです。遅れたのは当初の予定から2か月程度。許容範囲内で研究を立て直すことができたのが早期修了できた勝因でしょう。

研究プラン崩壊のリスクに備えるべく、常にプランBを用意しておくことが重要です。実験がうまくいかなくなった場合の代替手段をあらかじめ考えておきましょう。研究の進捗状況を定期的に見直す。異変の予兆を早期に察知できる体制を整えるべき。さらに、指導教員や研究室の先輩方と密にコミュニケーションを取り、問題発生時に素早く相談できる関係性を築いておくことも大切です。

論文がリジェクトされて出版ペースが狂うリスク

早期修了には規定以上の論文出版数が必要です。私の所属専攻の場合、通常の修了でも英語論文2報以上が必須でした。早期修了ならその倍となる4報以上を要求されます。これだけの論文を短期間で出版するには超高速ペースが求められます。早期修了するには論文出版のペース配分が重要。やたら滅多に頑張っても意味がない。どの時期にどの程度の数だけ業績を積み立てるべきか戦略構築しておかねばなりません。

私はD1の後期、投稿論文が4回連続でリジェクトされる苦い経験を味わいました。1回目は編集者から「研究の新規性が不足している」との理由で即座に却下。2回目は査読者から「実験データが不十分」と指摘され掲載拒否。3回目は「考察が浅い」と不受理。4回目は「類似研究が既に発表されている」と意味不明な説明。このように様々な理由を付けられ、掲載を拒否され続けて出版予定ペースが狂いに狂ったのです。一つの論文を出版するまでに半年以上もの時間を浪費してしまいました。三か月程度で出版されるはずが九か月もかかってしまったのです。この論文の出版が遅れたことで早期修了達成スケジュールが大幅に狂い始めます。あまりの焦りで夜も寝苦しい日々が続いて辛かったです。

この経験から学んだのが、複数の論文を並行して執筆することの重要性。仮に一報がリジェクトされても別の論文で即座に挽回できる体制を整えておかねばなりません。また投稿前に学内外の研究者から徹底的に原稿を査読してもらい、リジェクトのリスクを最小限に抑える工夫も欠かせないでしょう。自分の目だけだと贔屓目になります。論文と何の利害関係のない他の先生からアドバイスを受けると論文がブラッシュアップされます。

体調を崩して一定期間研究できなくなるリスク

研究ペースを上げすぎたら体調を崩しかねません。私はM2とD1の二度も喀血するほどの過労を経験しました。

一度目はM2の8月。上述のものとは別の論文が三回連続でリジェクトされ、そ研究のストレスとの相乗効果で血を吐きました。おかげで一週間ほど寝込む羽目に。どうしてこんな辛い思いをしてまで研究しなきゃいけないのだろうと虚無状態に陥りました。二度目はD1の12月。イギリスでの海外留学中、研究が思うよう進まないストレスから再び喀血。今度は二週間も体調不良状態に。この喀血が決定打となって研究の道を断念。国研志望だった将来の夢を企業研究者へと切り替えたのです。

体調を崩すと研究どころではなくなります。回復に時間がかかり、研究の進捗は著しく遅れます。早期修了を目指すからこそ健康管理には細心の注意を払う必要が。十分な睡眠時間の確保と規則正しい食事が大切です。週に一度は完全休養日を設けましょう。週二か週三ぐらいで有酸素運動でするのも推奨します。

私の場合、「ここまでやったら休もう」という限界値を設定して自分をコントロールしました。たとえば、夜10時には絶対にパソコンを閉じる。土日のどちらかは必ず休む。このようなルールを課すことで体調管理と研究の両立を図りました。

学位審査会で不合格になるリスク

早期修了の最大のリスクは、学位審査会での不合格。予備審査と本審査の二段階で審査が行われます。どちらか一方でも不合格になれば全ての努力が水の泡に。

私の場合、特に予備審査が厳しかったです。4名の審査員から60分間にわたって徹底的な質疑を受けました。研究内容はもちろん、研究者としての覚悟まで問われました。「なぜこの実験条件を選んだのか」「この解析手法の妥当性をどう証明するのか」「将来どのような研究者になりたいのか」。一つでも不適切な回答をすれば不合格判定を受けかねない緊張感があったのです。予備審査を終えたときには疲労困憊。貧血でぶっ倒れるかと思いました。

審査不合格のリスクに対処するには万全の準備が欠かせません。発表練習を何度も重ねる。想定問答を用意する。関連分野の最新の研究動向まで把握しておく。また、指導教員や先輩研究者から模擬審査を受け、本番での不測の事態に備えるのもアリかもしれません。

私は予備審査の二週間前にゼミメンバーの前で発表練習を行いました。発表の仕方や質疑のアドバイスを受け、指摘を踏まえて内容を改善したのです。また、家で発表を通しで何度も練習。用意していた原稿を見なくてもスラスラと発表できるようにしておきました。練習の効果か、本番ではあまり緊張しませんでした。質疑応答はかなり際どかったものの、どうにか炎上せず合格を掴めたのです。

まとめ

博士課程早期修了は決して不可能な挑戦ではありません。しかし、その道のりには様々なリスクが待ち受けています。研究プランの崩壊、論文のリジェクト、体調不良、学位審査での不合格。これらのリスクは適切な対策を講じれば難なく乗り越えられます。重要なのは、リスクを過度に恐れないこと。起こりうるリスクをあらかじめ想定し、対策を練っておくと安心ですよ。

早期修了に挑戦する方々には、適切なリスクマネジメントでもって、厳しくて大変な学位審査を乗り越えて頂きたく存じます。そして何より、自身の研究に対する情熱を忘れず、充実した博士課程生活を送っていただければ幸いです。

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