北大博士課程を一年短縮修了した技術開発エンジニアかめです。
博士課程は通常三年あります。博士課程修了を目指す方の中には、「周りの人より早く学位を取ってやる!」と野心をお抱きの方がいらっしゃるかも。三年もかけていられない。二年で出る。どれだけ遅くとも二年半で出てやるぞ、と。
早期修了は大変です。標準年限修了者よりも短い期間で多くの業績が求められます。早期修了に挑戦してきた方々の中には、心が燃え尽きて挫折した人も居られるでしょう。「自分には無理だ」「飛び級なんて手が届かないわ」と早期修了を断念するのです。実際、早期修了に成功する博士学生は、全体の5%以下。早期修了は茨の道。「飛び級」を過度にリスペクトしてしまっても不思議ではないでしょう。
これから早期修了に挑戦する方々の、または、既に諦めてしまった博士候補生さんの時間を3分少々いただければと思います。
早期修了は到達可能な目標です。やり方とマインドセット次第で手繰り寄せられる称号であります。現に私自身、創意工夫の果てに一年短縮修了を成し遂げられました。早期修了に求められるのは「体力」と「テクニック」。体力は皆さんの自助努力に任せましょう。この記事では「技術面」で早期修了志望者をバックアップさせていただきます。
かめそれでは早速始めましょう!
博士課程早期修了に必要なのは「戦略」


出版ペースを計算する
早期修了に欠かせないのは「戦略」。どの時期にどの程度の論文数があればいいのかを綿密に計算してください。早期修了希望者の前に立ちはだかるのは業績量の壁でしょう。あまりのボリュームを前に怯むかもしれません。ビビるのではなく、まずは深呼吸。落ち着きましょう。冷静なアタマでもって出版ペースをシミュレーションしてみるのです。
私の所属元専攻では、標準年限で修了したければ主著論文を二報記すだけでOKでした。在学期間短縮を狙う場合、最低でも三報は記さなければ学位審査に臨めないようです。私の指導教員は、先生独自の早期修了要件を課してきました。主著論文五報。標準年限修了者の2.5倍もの論文数が必要な状況です。がむしゃらに研究していては手が届きません。限られた期間内に論文を五報書き切る戦略を練らざるを得ませんでした。
私はD進前から二年間での修了を狙っていました。二年間で五報を記すのが早期修了の絶対条件です。しかも、実験で出入りしている共同研究先の都合で、D1の一年間は研究を一切進められなくなった。あまりの重たい足かせに絶望しました。先生の温情で、M2時代に記した論文一報を修了要件へカウントできることに。私が記さねばならぬのは二年で四報。いったいどうすれば四報書き切られるでしょうか。
私が掲げた博士課程早期修了攻略作戦とは
私が練った戦略とは、「M2の間に論文執筆用データを三報分集めておく」作戦。実験のできないD1時代を実りあるものにするための苦肉の策。D1の一年はデスクワークに専念する。その間、論文を二報出版する。D1・D2それぞれで二報ずつ出版する。コンスタントな論文出版でもって要件を満たしにいく計略。
私の博士課程は、ほとんど計画通りに進みました。
一報目はD1の4月に投稿して5月にアクセプト。二報目はD1の9月に投稿し、四度のリジェクトを経てD2の4月にアクセプト。三報目は、投稿直前の全文書き直しを経て、D2の7月に投稿し9月にアクセプト。最後の一報は、在学中の出版までは求められていませんでした。D2の春休みに投稿して企業就職後にアクセプトされたのです。
博士課程在籍中は常に計画ペースを意識していました。自ら定めた納期に間に合わせられるよう、なるべく急ぎ目で論文を書き進めていったのです。論文アクセプトを自身の奮起材料に。出版されるたびに「あと二報♪」「あと一報 (*≧∀≦*)」と自信を奮い立たせました。やみくもに突っ走って走り抜けるには、博士課程はあまりに長すぎます。出版ペース計算が命。綿密に作ったプラン通りに完走できれば栄光を掴み取れるでしょう。
早期修了に憧れていては達成できない。「できて当然」の精神でいこう
オオタニさんは言いました
メジャーリーガーのオオタニさんは、アメリカ相手のWBC決勝を前にして名ぜりふを放ちました。彼は何と言ったか。「憧れを捨ててください」と言いました。
相手にするのは世界最高の選手たち。テレビで見たことのある、YouTubeで名前を聞いたことのある選手ばかり。リスペクトの気持ちを抱いて当然です。ベース上で握手やサインをねだりたいぐらいかもしれません。
日本チームがWBCで優勝するにはアメリカチームに勝つ必要が。相手を上回ってようやく勝てる。リスペクトの気持ちは勝利への足かせとなりかねない。メジャーリージャーのナインに憧れていては、自身の全力を出せずに敗北するのは明らか。憧れを捨て、「勝てて当然でしょ」のメンタリティーで試合へ臨む。それでようやく五分の勝負を演じられます。オオタニさんの金言を胸に刻んだ日本チームは躍動しました。アメリカを破ってWBC優勝。ピカピカの金メダルを首にかけた日本ナインは眩しかったですね。
早期修了に憧れてはいけません
博士課程の早期修了も同じです。早期修了に憧れていてはいけません。飛び級に対して抱いているリスペクトを今すぐ丸めて160km/hでゴミ箱へ捨てて下さい。
あなたは飛び級できます。絶対できる。できて当然。成し遂げて当たり前。
毎日ことあるごとに「オレは/私は早期修了して当たり前」と念じましょう。自身が早期修了する可能性を根拠なく信じられるようになるまで。論文がリジェクトされるたびに「大丈夫、間に合うから」と言い聞かせる。研究がうまくいかなければ「面白くなってきたぜ」と心を盛り上げていく。自分を自身の応援団長に任命するのです。気分が落ち込みそうになったときは、ノータイムですぐ鼓舞してあげてください。
私は不安になりがちな性分でした。ほんの些細なアクシデントにも不安を抱いて焦燥感に悩まされたものです。事態解決のため、下宿の壁に【2025年3月31日 博士課程早期修了!】と記した紙を貼りました。飛び級する未来がおぼつかなくなるたび、紙を見上げて心を落ち着けてきたのです。目標を紙に書いて貼るのは効果抜群。ネガティヴな気持ちがスーッとひいて、すぐに気分が良くなってきました。
早期修了はあくまで手段。その先の未来で何を叶えたいか考える
早期修了希望者は、少なからず優秀な方かと存じます。研究が得意。勉強ができる。頭の回転が速い。戦略に基づき計算高く行動できる。普通の人は早期修了しようとなんて考えもしないものです。 ”三年かけてゆっくり出ればえぇやん” とゆったり構えています。標準年限で修了するなら、わざわざ高い業績要件の壁をよじ登る必要はありません。難関へあえてチャレンジする。挑む意志と勇気と能力がある皆さんは優秀に違いありません。
決して自画自賛しているわけではありません。私が飛び級できたのはラッキーだっただけ。現に、大学受験で一浪しています。新歓シーズンをボーっと過ごしていて学生団体に入りそびれました。優秀とはほと遠い人間です。中一の頃なんて、”目”を表す英単語eyeを真顔で「イゥイ」と読んでいましたからね。アイでしょ、アイ。父親から「お前はバカか」と頭をしこたまどつかれました。
親愛なる優秀な早期修了志望者さんへ、ひとつメッセージを送らせていただきましょう。
皆さんの人生の目標は何ですか?
早期修了したあと、この世へどのような財産を遺していきたいですか?
早期修了は目標ではありません。博士課程修了後も人生は続きます。学位を取る前よりも取った後の人生の方が長いでしょう。仮に飛び級を最終目的地に掲げていたらどうなるか。Ph.D.になった途端に燃え尽きてしまうでしょう。
早期修了は、夢を叶えるための手段。人生の目標を一年早く達成するための近道。早期修了を目指す方々には『早期修了後の未来』を見据えていただきたいです。どのような未来を創りますか? 皆さんの力で社会を如何に豊かにしますか?
早期修了する方でも博士課程へ最低二年は通わねばなりません。経験したからこそ分かります。””二年間””って、それなりに長いですよ。気持ちを研究だけに向けていられるほど短くはありません。人生の目的地について夢想しながら息抜きして過ごしましょう。早期修了の先を意識しながら走っていって。きっと、実りある時間を過ごせるかと存じます。
もちろん、人生の目的地などそう簡単には見つけられません。私自身も博士課程の間に見つけられませんでした。当初の夢は、研究者になること。研究で痛い目に遭ったり海外留学で大失敗したりして夢を頓挫するに至りました。新たな目標を見つけられぬままサラリーマンになっています。でも、それでいいんです。「早期修了がゴールではない」と肝に銘じて頑張っている限り、真面目にやっていればいつか夢が見つかるでしょうから。






















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