早期修了は非常にチャレンジングな目標。標準年限での修了を比較し、求められる業績量が倍近くあります。標準年限での修了を目論む学生は圧倒的多数。そんな中、あえて少数の道へ飛び込むには勇気が必要かもしれません。
早期修了には適性があります。努力も大切ですが、それと同じぐらい向き・不向きが大切になってくるのです。
この記事では、博士課程早期修了挑戦をオススメしない3タイプをご紹介します。大学院早期修了へ関心のある方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧下さい。
かめそれでは早速始めましょう!
悪い意味でマイペースな人


博士課程での飛び級を目指すなら、時間に追われて過ごすことになります。研究成果創出速度の加速が必要です。毎日毎日論文を記す。”ゆっくりと”ではありません。超高速で記します。学会発表の件数増加にもあくせくせねばならないでしょう。発表で使うスライド資料の作成だって爆速で行う必要があります。
もしも標準年限での修了で構わないならば急がなくても構いません。研究を多少ゆっくりと進めていっても三年での修了に間に合うでしょう。しかし、早期修了志望者なら急がねばなりません。一日、一日を大切に使って、より多くの業績を積み重ねられるよう頑張ることが求められます。早期修了戦は時間とのせめぎ合い。「より早く・より多く」を合言葉に、二年間、休まず駆け抜ける覚悟が試されているのです。
早期修了するにあたって、自分を無理やり駆り立てねばならぬ場面は多々あります。時間捻出のため土日返上で大学へ行ったり、趣味に費やしていた時間を研究に捧げたりするケースも珍しくありません。それだけ急がねば間に合わないのです。急ぐべき時に急げるかどうかが早期修了の成否を決める生命線となるでしょう。周りの情勢に応じて作業ペースを変えない・変えられない方は早期修了に不向き。もともと爆速で研究を進める人ならOK。ゾウガメのようにのんびりと歩みを進める方は早期修了できません。
早期修了には『せっかちさ』が求められます。鷹揚な方は三年での修了を目指してください。
早期修了へのこだわりがない人


論文の編集者や査読者は、我々が早期修了志望者だからといって手加減してくれません。論文が雑誌掲載に求められる質に達していなければ容赦なくリジェクトしてきます。私なんて、D1の後期、同じ論文を四回連続でリジェクトされました。「早期修了に間に合わないかも…」と本気で焦りましたね。何とか五度目の投稿でアクセプト。早期修了にギリギリ間に合う瀬戸際のタイミングでした。
論文投稿を筆頭に、博士課程ではたくさんの辛い出来事が待っています。早く終了したいと思っているのに『そうはさせまい』と次から次へと障壁が立ちふさがってくる。困難を乗り越えるのは大変です。トラブルを”素早く”乗り越えるのはもっと難しい。問題ごとに足を引っ張られていては間に合いません。情熱の火に容赦なく水を差されるけれども、そこで鎮火しまわぬだけの燃焼の激しさが求められます。
早期修了を目指すにあたって、何か絶対的な理由が必要です。早期修了にこだわる理由、絶対に成し遂げなければならぬワケが。皆さんが博士課程を早期修了したい理由は何ですか? どうしても二年で出なければいけないのですか? その想いは、強靭で揺るがないものですか? 早期修了へ徹底的にこだわれるだけの執念を生んでくれますか?
私が辛い出来事にも負けず早期修了を達成できたのは、絶対に早期修了しなければならない理由があったから。自分の限界と闘って生き方を変えてみたかったから。受験浪人で作った一年の空白を埋めたかったから。そして、親が還暦になる前に修了して一人前になった姿を見せたかったから。早期修了を目指す理由が「何となく」では辛さに持ち堪えられないでしょう。早期修了へのこだわりがない人、そこまで強い想い入れのない方へは飛び級をオススメできません。
研究が好きで好きで仕方がない人


研究人生の中で研究を最も自由に行えるのは博士課程の三年間。知力・経験・体力がともに高水準で揃っているからです。
学士・修士課程は知識が少なすぎて研究を進められません。ポスドクになったら雇用主の指示に従わねばならぬでしょう。企業研究者なら応用を見据えた研究が基本線。若手研究者の間は今後の昇進に向けて業績作りのための研究が必要。PIになって研究室を構えられる頃には、歳を取って体力が衰えているはず。そう、研究者として受ける制約が最も少ないのは博士課程なのです。
博士課程を離れた瞬間からお金や組織のしがらみにとらわれるでしょう。自分のデザインした研究を思う存分やりたい方は博士課程へ留まる方が得策です。博士課程を早期修了するというのは、研究者にとって天国のような環境を自ら進んで捨てるのと同じ。今と同じような研究環境は、その研究室を離れたが最後、もう金輪際手に入らないかもしれません。本当にそれで良いのですか? もっとあの場所で研究をやっておけばよかったなぁ…と後悔しませんか?
いまの研究に対する思い入れが少ない人ならそれでも構わないでしょう。あるいは、大学の外でやりたいことを見つけた方は、研究よりも大切なものの方へ飛び移りたくなるかもしれません。いまの研究が好きな人。好きで好きで仕方がない人。こうした方々は、早期修了へ挑戦する前に少し考えてみて下さい。その決断が人生全体の幸福度を下げないかどうか熟考が必要です。
総括
博士課程早期修了への挑戦は、研究者としての生き方を大きく左右する重要な決断です。私の経験から、早期修了に適さない三つのタイプをご紹介しました。
一つは、マイペースな研究スタイルを持つ人。早期修了は文字通り「時間との戦い」。論文執筆も学会発表も、すべてを超高速で進めねばなりません。周囲の情勢に応じて作業ペースを柔軟に調整しない方に早期修了はオススメできません。
二つ目は、早期修了への強い執念を持たない人。なぜ早期修了を目指すのか。その理由が「なんとなく」では、幾度となく立ちはだかる困難を乗り越えられないでしょう。論文のリジェクトや研究の行き詰まりなど、次々と訪れる試練を突破するには揺るぎない信念が必要不可欠なのです。
そして三つ目が、研究への深い愛着を持つ人。博士課程こそが、最も自由に研究へ打ち込める黄金期。その環境を自ら手放すことは研究人生の幸福度を下げかねぬ決断。皮肉なことに、早期修了に向いているのは、実は「研究があまり好きではない人」なのかもしれません。
結局のところ、早期修了は誰にでも勧められる選択ではありません。皆さんも、ご自身の研究スタイルや価値観と照らし合わせ、慎重な判断を下してください。



















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