研究室生活春夏秋冬vol.59 D2・1月|最終決戦に向けて気炎を上げる。広島での新生活準備を加速する

研究室にて新年を迎える

元旦は研究室で過ごした。実家への帰省も考えたが、あまりに面倒で断念した。未明から研究室で勉強を開始する。ブラインドを上げたら初日の出を拝めた。黄金色に輝く太陽が、空を焼き尽くさんばかりの勢いで昇ってくる。はるか1.5億km先から秒速30万kmで日光が両目へ嬉々として直射してきた。

今年は辰年。社会が大きく変わる年だと言われている。いびつな仕組みは壊れ去り、新しいリーダーが未来を切り開いていく。なりたい自分になれるターニングポイント。確固たる理想を持って進む者だけが幸せを掴める時代。自分には何か望みがあるだろうか。とりあえずは目の前の公聴会を乗り越えたい。未来について考えるのは、全てから解放された後にしよう。

三が日はもちろん、続く土日も研究室で過ごした。家を空けて研究室にいる方が暖房代の節約になる。この時期、一日中暖房をつけていれば300円ほどもかかってしまう。半日外出すれば電気代が半額になるから研究室へ行かぬ選択肢はない。おまけに正月には研究室へ誰も来ない。静かなおかげで一日五本ものブログを書けた。予約記事が150個に達した。これは来年の自分への贈り物なのか、それとも単なる暇つぶしなのか。その答えは雪の中である。

海外留学以外の理由で年末年始に実家へ帰らなかったのは初めて。一人で過ごすのは寂しいかと思われたが、むしろ心が軽くて楽に過ごせた。

私の母は、修士課程進学を境に「いい人を見つけなきゃね」と呪文を唱え始めた。いにしえの職業『専業主婦』に就く親の価値観は、化石のように30年前で停止している。価値観のアップデートは見込まれない。ネット回線から切断されたWindows XPのデスクトップパソコンのよう。子供へ結婚のプレッシャーをかければかけるほど子供が結婚を避けるようになると分からぬらしい。会社でこれをすればマリッジハラスメント。家庭の中だからまだ許されている。女尊男卑もはなはだしい。

父の生態もまた、人類学的見地から非常に興味深い。母から尻に敷かれ続けて29年。いったいなぜこのような状況下で生存可能なのか。現代科学をもってしてもこの謎は解き明かされていない。『ビジネス出張』という名の一時的逃避行動が生存のカギを握っているのかも。仕事で疲れて帰宅した父は、ガミガミうるさい妻の超音波攻撃にさらされて疲労困憊。この環境で長らく生存できる理由は科学の範疇を超えている。

結婚を避けたくなる原因を作った本人から”結婚を考えろ”とマリハラをされる。母はいったいどのような計算でもって子供の結婚願望を高めるつもりなのだろうか。実家への帰省意欲は見事なまでの左肩上がり。来年度から地元へUターン就職する。実家に顔を出すつもりはない。年に数時間でも帰れば十分だろう。

年賀状

TOEICとは何か。それは、極めて奥深い問題である。あまりに深いため、TOEICスコアはグローバル人材の証だとか、成人式の代わりだとか、アメリカからの嫌がらせだとか色々言われているが、その真相はマークシートの中である。

最近気づいたが、TOEICは「Taking yOur Economic Investment Continuously(あなたたちの経済的投資を継続的に受け取る)」の略ではなかろうか。受験者からの試験料上納で運営団体ETSが永遠に栄えることの暗喩だろう。コレを知ったら途端に試験を受ける気が失せてきた。皆さん、ご機嫌いかがだろうか。最高の気分だろう。ETSからずっとバカにされてきただなんて気付きもしなかったでしょう。

さて、そんな性悪な私へTOEICから年賀状が届いた。世間一般には喜ばしい初春の挨拶状。今回届いたものは普通の年賀状とは異なる。それは、我々受験者の懐を狙った「狡猾な金融商品勧誘状」とも呼ぶべき代物。善意の塊のような笑顔で年賀状を送る営利団体の真意はこうだ。

新年明けましておめでとうございます。今年も私どもの高度な国際ビジネスコミュニケーション能力測定試験に、大切な受験料をご献上くださいますようお願い申し上げます

なんとも洗練された金銭搾取作戦だ。正月早々、Amazon以外からも財布の中身を狙われるとは。

単なる年賀の挨拶で終われば好感度は上がるだろう。どうせ試験の催促状に違いない。こんなものを受け取って、受験者が

わざわざ年賀状までいただき誠にありがとうございます。ではさっそく、試験を受けさせていただこうかしら。きっと私も素晴らしいグローバル人材の仲間入りができることでしょう。世界が私を待っています!!

などと考えるはずもない。これは私の愛馬がシェイクスピアの全作品を暗唱しながらTOEIC満点を取るほど荒唐無稽な妄想だ。

試験制度としてのTOEICは、現代社会に巣くう闇の帝王である。TOEIC対策で日本全国の貴重な時間と金銭が吸い尽くされ、スコア返却時に受験者の心へ深い傷跡のクレーターを残す。TOEICこそ真のグローバルスタンダード!世界中から富を合法的に収奪する完璧なシステム。私の知る限り、これほど効率的な資金回収体系は他にない。特に、スコアへ有効期限を設けた人間には「ノーベルよくもやってくれたなこんちく賞」を授与したい。

それにしても、日本国内の大学院進学や企業就職で、なぜ英語力などが重視されるのか。我々日本人は、まず日本語での勝負を第一に考えるべきだ。学術論文などの外国語文献は、今や高度なAI翻訳技術で瞬時に日本語訳される。ちょっと利発な幼稚園児でも難なく理解できる。多くの研究室で外国人とのコミュニケーションする機会などほとんどない。それでも世間は”グローバル化を”と声高に叫び、我らが現役じゃぱにーずをTOEIC地獄へ追いやっていく。まさに、現代へ蘇ったピラミッド建設。ファラオの座へ降臨するのは試験団体ETS。

予想通り、年賀状には試験受験の催促状が同封されていた。過去の受験者向けの「プレミアムリピーター特別優待制度」のご案内だ。次回受験時には約1割お得に受験できる。なんという太っ腹。来場所、大相撲に出てみてはいかがだろうか。割引価格でも7,000円弱。これだけのお金があれば、高タンパクで低カロリーじゃない栄養価の高いサバ缶を約25個購入できる。これこそ限界大学院生の救世主!真のグローバルフード最右翼!!サバ缶さえあれば、TOEICなど受ける必要もない。魚油で頭が良くなってきて自然に英語が話せるようになってくるはず。

次回のTOEIC受験は、おそらく会社での昇進試験前になるだろう。弊社は昇進要件でTOEIC 600点以上のスコアが必須とされている。600点など、私にとっては昼食のメニューを選ぶより簡単な課題だ。ゆで卵か、生卵か、それよりもはるかに複雑な選択を日々迫られているのだ。しかし、「スコア有効期限」なる落とし穴が待ち構えている。現在保持している805点のスコアは、昇進時期までに失効してしまうだろう。腐った納豆なら余裕で食べられる。失効したスコアは完全に無価値だ。次回のTOEICは会社経費で受験できることを切に願う。

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