こんにちは。札幌と筑波で蓄電池材料研究を行う工学系大学院生のかめ (M2)です。
研究室生活春夏秋冬M1シリーズ第三作目は、M1の6月のアレコレについて記していきます。
それでは早速始めましょう!
中旬:もう慣れてしまった雑誌会
つくばから帰ってきて2週間後にM1前期の雑誌会を行いました。
この雑誌会用の論文は2か月前から決めており、今月頭までのつくば出張期間中に嫌というほど読み込んでいました。
不明点はつくばの国研にて論文の著者自身に質問するなどして既に解決済みでしたから、帰札後の2週間の準備期間をほぼ全てスライド作成へと充てられました。
スライド作成中に新たに湧き上がってきたいくつかの疑問点だけ後ほど各個撃破して、結局、雑誌会の用意はゼミ発表3日前までにすべて完了させられました。
その雑誌会本番は、イントロの作り方だけ少々指摘があったほかはおおよそ滞りなく進みました。
これまでいろいろな論文を読み知恵をつけてきた影響か、質疑応答も昨年度より随分とスムーズに行えるようになりました。
研究室配属以来2回目の雑誌会にして、早くも雑誌会に慣れてしまったように感じました。
- 如何に勘所を外さず最低限の労力で用意を終えられるか
- 如何に発表で良い印象を与え、質疑応答を和やかなものにさせられるか
この2つの要点を肌感覚として習得できたらしく、コレ以降、雑誌会では炎上を気にせず落ち着いて発表できるようになりました。
下旬:国際学会への申し込みで大苦戦…
本当になぜだか分かりませんが、いつの間にか9月初旬の国際学会に参加する運びとなっていました。
指導教員から「申し込みしておいてね♪」と軽いノリで言われてしまい、心の中で「なんでやねん笑」とツッコみつつも渋々参加用意を始めました。
のちにハッと気付いたのですが、国際学会の発表実績は学振DC1申請時にかなり有利となってきます。
そうとは知らぬM1の6月当時は指導教員を恨めしく思っていたものの、気が付いて以降は”先生、ありがとう…!”と頭が上がらなくなりました。
英語圏の学会に出る場合、募集要項や申し込みフォームは勿論すべて英語です。
英語圏のイベントになんて今まで出た経験がなく、殺人的な量の募集要項を前に気が遠くなりそうな思いでした。
いざ申し込みを開始すると、名前を入力する『First name』と『Last name』の欄でまず躓いてしまうんですね笑。
どっちが苗字?どっちが名前?
と訳が分からず、Google先生に質問してようやく疑問を解決できました。
他にも日本語と英語では住所入力の勝手が全く異なり、指導教員に「コレどうしたらいいですか…?」と代わりに入力して頂きました。
また、講演申し込み時にアブストラクト (要旨) も一緒に送る形式のため、これまで作成してきた日本語のアブストを参考にし、何とか英語Ver.のアブストを作りました。
何とか申し込みを完了し、あとはエントリー代を支払うだけという所まで到達しました。
ココで私、一つミスを犯してしまいました。
研究室のクレジットカードで支払うことで研究室の経費から落とせたにも関わらず、それを知らなくて自分のクレジットカードで決済してしまったのです。
のちに指導教員や研究室の秘書さんが私のエントリー代の立替手続きをして下さったのですが、その時、お二人にはめちゃくちゃ面倒な手間をお掛けしてしまいました。
下旬:Nature級のデータに大歓喜!
アレはたしか、今月頭までのつくば出張で得られたデータを整理し、それを指導教員に見せた時のことだったと思います。
いつもは菩薩のように穏やかな指導教員が急に興奮し始めたんですね。
(いったいどうしたんだ)と思って指導教員の様子を凝視していると、先生が
ヤバい、Nature級だ…
と騒ぎ始めるじゃありませんか。
「NatureってあのNatureですか?」と質問すると、指導教員は口をあんぐりと開けて”うん”とコクリと頷いておられました。
一体自分のデータの何がそんなに凄いかさっぱり分からず、「どこにそんなインパクトがあるんですか?」と質問してみました。
すると指導教員はむにゃむにゃと沢山色々なことを教えてくれました。
先生の話をまとめると、
- これまでリチウム二次電池研究分野では、リチウム析出が生じる電極表面においてリチウムの不均一(いわゆるデンドライト状)な析出形態が最大の問題とされてきた
- しかし、私の研究がもし正しければ、リチウムが析出する側ではなく”溶解する側”の電極の近傍でも重大な問題を抱えていることになる
このような話でございました。
私としてはつくばで実験の再現性を十分確認してきたわけですから、「自身の実験データに間違いはない」と断言することができました。
指導教員の話を呑み込めた途端、先生の部屋で私まで一緒に大騒ぎし始めてしまいました。
そりゃ嬉しいに決まってます。いくら狙っていてもNature級の成果を出せる研究者なんて日本にはほとんど居りませんのに、出そうと思っていないうちにいつの間にかとんでもない実験成果が出てしまっていたのですから。
(なんでこんな簡単なことを今まで誰も気づかなかったのかな??)と一瞬だけ不思議に思いもしました。
後に詳しく調べてみると、私の設定したような超高電流密度では過去にほとんど実験例がないため、遊びでやっていた実験が本当に偶然、電池コミュニティーの盲点を突いてしまったみたいだと分かりました。
指導教員やつくばでの共同研究者さんとの打ち合わせの末、この研究成果でもって、某・インパクトファクター(IF)42のCell系列の雑誌へ投稿を目指す運びとなりました。
6月時点では嬉しくて舞い上がっておりましたけれども、まさかコレが一年以上続く長い地獄への入り口だとは全く思ってもいませんでした……
Dの意志:50→90%
4月には30%、5月には50%だったDの意志は、6月末に90%と一気に急上昇を見せました。
だってNature級の実験成果が出てしまったんですからね。そりゃ研究も楽しくなるし、博士課程に行きたくもなっちゃいますよね♪
残り20%は何かと言うと、心の中のリトルかめが「D進しない方がいいんじゃないか?」とぼそぼそ呟いていた影響です。
心のどこかにまだD進を躊躇させるモヤモヤがあって、それを払拭できないせいで100%へはまだ達していなかったのです。
何を怖がっていたかと言うと、一番はD進後の3年間でメンタルを病んでしまわないか?という精神面での問題でした。
私、起こりもしない出来事についていちいち深く心配してしまうタチのため、”心配の累積により心が疲れて限界を迎えないか?”とまたココでもいらぬ心配をしていたのです。
そんな心配なんてしたって仕方がありません。気を揉むぐらいなら外で走り回っていた方が1億倍もマシでしょう。
ただ、石橋(D進後の私)をたたいて割れないかぐらいはしっかりと確認したいと思っており、当時の私は石橋をたたき割る勢いでリスクを重くとらえていました。
次回予告
研究室生活春夏秋冬M1・6月編はコレで以上となります。
次回の7月編では
- 論文作成の無間地獄
- 息抜きとしての就活と中間報告
これらの内容でお送りします。
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