北大博士課程を早期修了した化学系大学院生かめです。
博士課程では三つの学位審査があります。最後の最後に行く手を阻んでくるものが公開論文説明会 (公聴会)です。
公聴会は「ディフェンス」と呼ばれています。日本ではもちろん、海外でもそう呼ばれているようです。私は博士課程在籍中、この呼称へ何だか違和感を覚えていました。ディフェンスじゃないでしょ。学位をもらっていない自分が何を守るというの?守りの意識で学位審査へ臨めば本番前に怖気づくでしょう。審査員からの厳しい指摘に(学位を失うかも…!)と動転して返答どころではなくなるかもしれません。
この記事では、公聴会へ臨む前に整えておくべきマインドセットについて述べます。博士課程進学予定者や学位審査へ臨む方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

それでは早速始めましょう!
学位は守るものではなく勝ち取るもの


我々博士候補生は、学位審査会を終えるまでは何も得られていない状態です。博士号はもちろん、よく頑張ったで賞も、よくもやってくれたなこんちく賞も貰っていません。手元にあるのは修士号だけ。公聴会を終え、審査員のみなさんに実力を認めてもらえ、それでようやく博士号授与に至ります。我々に守るべきものは何もありません。私たちが喉から手が出るほど欲しい学位は、博士論文主査の指導教員が大切に抱えて守っているのです。
未だ何も勝ち得ていない以上、守りに入ったって仕方がありません。プライド?頑張ってきた時間?そんなものは価値がありません。学位取得に必要なのは研究力だけ。実力があれば学位を得られるでしょう。実力がなければ審査で落とされます。
読者さんの中には(無慈悲にもほどがあるだろ…)と感じられた方がいらっしゃるかも。でもね、実力だけで評価してもらえるって、ある意味すごく親切だと思いますよ。情けや気分なんかで審査されたらたまったもんじゃありませんよ。実力だけは己の努力次第でどうにでもなる。実力を評価基準にするのが最もフェアではないでしょうか。
我々が考えるべきは学位を「勝ち取る」こと。守るのではありません。学位を、勝ち得るのです。
公聴会は「オフェンス」!攻めの意識で臨もう


学位審査会は博士号の砦。「学位が欲しい?なら力づくで奪ってみろ!」と博士候補生の力を試しにかかります。審査員の皆さんはプロ研究者。生き馬の目を抜く厳しい競争を勝ち抜いてこられた歴戦の猛者。最強のメンバー10名以上が博士号を前にガチガチのディフェンスラインを敷きます。どこにも隙がなさそうに見える。「そう簡単には渡さないぞ」と言わんばかりに強そうなオーラを放っているのです。
我々博士候補生サイドは一人。相手が強固なディフェンス態勢を敷く以上、こちら側はオフェンス態勢で臨まねばなりません。相手もこちらもディフェンス態勢では何も始まりませんよね。否、こちらが弱気になったとみるや、相手側がオフェンスモードに入ってボコボコにやっつけられてしまうでしょう。審査員さんはめちゃくちゃ強い。異分野をバックグラウンドに持つ専門家だから、繰り出してくる質問はちょっと何を言っているか分からない。相手から攻撃されたくなければ攻めの意識を持つしかありません。攻めて攻めて攻めまくるのです。攻めるしかありません、学位が欲しいのならば。
最高のプレゼン資料と博士論文を用意して臨みましょう。本番で味方になってくれるのはこのふたつだけ。指導教員はむっつりと黙っています。どれだけ厳しい質問がなされたとしても決して助け船を出してくれません。己の真の実力が試されるでしょう。博士号を勝ち得るのにふさわしい人間であることを全員に知らしめてやってください。
公聴会は通過儀礼。勝利はほぼ手中にある


皆さんに一つ、朗報があります。公聴会までたどり着けた時点で勝利はほぼ間違いありません。『公聴会進出』という事実は、研究力をD論の主査や副査から認めてもらえている証。彼らからお墨付きをいただけて臨む以上は自信を持って発表しても良いと思います。
博士号授与の如何は審査員間の多数決で決まります。賛成票が多ければ博士号認定。反対票の方が多ければ公聴会再挑戦、あるいは博士課程の最初からやり直しに。我々は公聴会進出時点で主査と副査を味方につけられているわけです。あとは審査会の何名かのメンバーを味方につけられれば勝ち。安心してください。質疑応答の出来が良ければ味方になってくれますよ。相手も鬼ではありません。学位に相応しい実力を感じさせられたら賛成票を投じてくれるでしょう。
公聴会は通過儀礼。博士号授与の前に誰しもが経るセレモニー。時には厳しい指摘が飛んでくるかも。答えられなくても気にしすぎないように。勝利はほぼ約束されているのですから。博士になる前に少しぐらいケチを付けさせてあげて下さい。「まぁ、どうせこのあと博士号を貰えるし、何をチクチク言われてもいいや♪」ぐらいのメンタリティーで行きましょう。
最後に
公聴会は博士課程における最終関門。「ディフェンス」という呼び名が一般的ですが、実はこの捉え方に大きな誤解が存在します。
博士号は未だ手にしていない栄誉。現時点で守るべき対象などありません。むしろ、実力で勝ち取るべき目標として位置づけるべきでしょう。守りに入った姿勢では、持てる実力を十分に発揮できないばかりか、自らの可能性を狭めてしまいます。
公聴会では攻めの姿勢が不可欠です。審査員の先生方は確かに高い壁として立ちはだかります。しかし、その壁を超えていく過程にこそ、博士号を勝ち得る真髄が隠されているのかもしれません。周到に準備したプレゼン資料と博士論文を武器に、堂々と挑戦する精神が求められるのです。
ただし、公聴会への出場資格を得た時点で、実は勝利の見込みは極めて高いものとなります。主査と副査からの信頼を獲得してきた証左だからです。質疑応答での多少の揺らぎも、通過儀礼の一環として受け止めればよいでしょう。
博士号は守りではなく攻めの姿勢で勝ち取る栄誉です。強い意志と積極的な姿勢があれば、必ず素晴らしい成果へと結実するはずです。公聴会に挑む皆さん、自信を持って前進してください。輝かしい未来が皆さんを待っています。
コメント