勤め先は広島No.1企業

4月から企業で会社員になる。勤め先は広島の最大手企業。
会社の名前を「弊社」としよう。弊社は伝統的日本企業ではない。今どきの言葉で喩えるならSHUCDYCか。スーパー・ハイパー・ウルトラ・超・どんだけ・優良カンパニー。
札幌から広島へ工場見学に行ったら交通費で10万円もくれた。10万円あったら二往復できる。サバ缶なら軽く300個は買える計算。太田川放水路へ東岸から西岸まで一直線にサバ缶を浮かせよう。300缶もあれば、きっとその上を歩いて川を渡り切れるほど大量に買える。日本神話に登場する『因幡の白兎』のイメージだ。白兎はワニに食われて傷だらけになる。SHUCDYCの一員たる私は食われないことになっている。弊社は引っ越し代も全額支給してくれた。なんという太っ腹。もうすぐ大関へ昇進するだろう。
弊社のお腹を叩いてみれば、チョリンチョリンと銭の音がする。
弊社は広島トップクラスの高給企業。高い給料をもらって豊かな生活を送りたいと考えて弊社へ応募した。地元の広島を豊かにするには、まずは自らが満たされる必要がある。人に与える前に自分が豊かにならなきゃ始まらない。自分の手元に『何か与えるもの』があってようやく周りに還元していける。利他主義、利他主義と口で言うのは簡単だ。本気で利他主義していきたいのなら、その準備として、ある程度の期間は利己主義を敷いて己へ資源を集積させるべき。
家選びにはこだわりにこだわるぞ
これから新生活を始めるにあたって、特に重要なのが物件選び。人生の三分の一は睡眠。三分の一は余暇。そして、残り三分の一は仕事。家とは、人生の三分の二を下支えしてくれる盤石な本拠地であるべきだ。一人暮らしならば「城」。好きな人と暮らすなら「愛の巣」。いずれにせよ、住んでいて満足できる物件なのが必要十分条件。
家選びには徹底的にこだわりたい。家選びの成功は広島生活大成功への布石となる。織田信長は桶狭間の合戦の前に熱田神宮で必勝祈願したと聞く。私もそれに倣いたい、弊社での勤務成功を祈って家選びの検討を加速させていく。私がこだわるのは以下の3点↓
- 立地:ランニングコースから走って2分圏内にある家
- 階数:最上階。できれば10階以上の高層階
- 駅との距離:玄関から改札まで歩いて20分以内
北大入学後、部活にもサークルにも入りそびれた。暇を持て余して走ってみたら思いのほか楽しくて、今に至るまで趣味で走り続けている。D2の11月には福知山マラソンを2時間42分でフィニッシュした。学会発表翌日、フライトまで時間があったのでフルマラソンを走った形。会社員になってもタイムを狙っていきたい。本気で練習するには充実したランニング環境が必要。家からすぐの所にランニングコースがあると嬉しい。芝生や舗装路、急斜面など、多様なコースがある地域が理想的。札幌のアパート付近には坂がなかった。弊社における広島生活ではランニングコースをまず重視したい。
私は音に若干神経質。頭上でドンドンと大きな音を立てて歩かれたらイライラする。学部生時代の家は辛かった。上の階の人がゴジラのようにドスドス歩いていたから。修士進学時に別のアパートの最上階へ移り住んで悩みから解き放たれた。広島でも最上階へ住みたい。どうせ住むなら高い所へ住みたい。今まで4階以上の階へ住んだことがない。今回は思い切って10階以上の超高層階へ住みたい。キラキラ輝く広島湾を見て、休日の夜にベランダでニッカウィスキーを飲みたい。タワマン生活春夏秋冬。最高じゃないか。広島、万歳。弊社、万歳。
また、会社員として週5での通勤が求められる。足しげく通い詰めるであろう弊社にはなるべく短時間で行けるのが理想。玄関からJR改札まで20分程度で行けたら嬉しい。自転車なら7~8分で着く距離だといい。通退勤の負担を減らしたい。自己研鑽を行う時間を確保して労働の質向上につなげるのが目的だ。
こんな好条件な物件、あるわけがない… あった
ついつい調子に乗って条件をつり上げてしまった。ちょっとワガママを言い過ぎたかも。SHUCDYCの社員だからといってついついアレコレと条件をつけてしまった。こんな条件をすべて満たす物件などあるわけがない。あったらすごいな。あるのか?ないよな…..
あった。自分の希望をすべて満たす王宮が。
家から1分で河川敷のランニングコースに入れる。そこには直線10kmの芝生コースが待っている。家から2kmのところに高低差200m(勾配10%)の急斜面が。好きなだけ走れる。神様から「思う存分走りなさい」と言われているようなもの。
加えて屋上。10階以上の高層階。見晴らしは最高。広島湾を一望できる。目を凝らしたら宮島も見える気がしなくもなくはない。家から最寄りのJR駅まで早歩きで20分。自転車なら7分(ななふぅん?!)、ほふく前進ならたぶん50分。模範的会社員として日々通勤するのに何の問題も無い。
これだけ条件が揃っていて、家賃は月々5.5万円。弊社から 神の見えざる手 が伸びてきた。入社から約4年間は自己負担額1.5万円で住めるようだ。
広島は転出超過が続いている。人がどんどん減っていって寂しい。その反面、良い物件にも空き部屋が多くある。家を選びたい放題な現状、広島県民の住環境における満足度は高いのではなかろうか。今回のタワマン(笑)もあり得ないほどの好条件。東京なら月20万円してもおかしくない。いや、もっとするか。月50万円は覚悟しなければならぬだろう。いや~、これで港区女子の仲間入りか。アツいな。広島に港区などないし、生物学的にも性自認的にも男子なのだけれども。
いざ、鍵の受け取りへ

タワーマンション(笑)は大東建託を通して契約した。そういえば、契約まで一度も内見へ行っていなかった。まぁ、最上階だし、間取りも広そうだし、直接見なくてもいいかと思って選んだ。修士進学時に引っ越したアパートも内見せずに契約した。今回も大丈夫だろう。もしも嫌になったら引っ越せばいいだけの話。
JR横川駅前の大東建託へ。あたりを見渡すが、大東建託がない。地図を見てよく確認する。指定された住所のビルに大東建託の四文字は無かった。目の前にあるのは「いい部屋ネット」。ねぇねぇ、大東建託はどこにあるの?店内からCMの音が漏れ出てきた。

いい部屋ネット、大東建託♪
えっ、いい部屋ネットって、大東建託なの? は? ちょっと何を言っているの? いい部屋ネット は いい部屋ネット でしょ。小泉進次郎みたいなこと言わせないでよ。大東建託なら看板へ『大東建託』って書くよね。まさかねぇ、いい部屋ネットは大東建託じゃないでしょ。でもなぁ、CMは「いい部屋ネットが大東建託だ」って言っているし。なんのこっちゃ。自分でも何を言っているのか分からない。
半信半疑になってスマホで調べてみた。「いい部屋ネット 大東建託」っと。どうやら、いい部屋ネットが大東建託らしい。いい部屋ネットは大東建託だし、大東建託はいい部屋ネットってことか。ひょっとして、あなたはコナンくん?見た目は大人、頭脳は子供。……あぁ、それは自分のことだった。
あっ、分かった。もしかしてアレだよね?アレ、アレ。アレのことだ(←どれ?)
羽田空港から京浜急行線が走ってくる。ヤツは目を離した瞬間、都営浅草線になる。あれ、最初、ホント意味分からなかったんだよね。京急に乗っていたはずなのに、気付いたら都営地下鉄になっていて。自分はどこに連れていかれるのだろうかと恐ろしかった。初めて乗った時は「乗り間違えちゃった!?」と冷や汗全開。慌てて泉岳寺で下車。スマホで調べて勘違いに気付いた。
京急は浅草線だし、浅草線は京急。大東建託も同じか。いい部屋ネットは大東建託。大東建託はいい部屋ネット。なるほど、よく理解できた。初見殺しの広告を前に立ち往生した。物件の鍵受け取りは5分で終わった。さあ、広島での新生活を始めよう。
いざ、タワマン(笑)へ




広島市民の足は路面電車。またの名を市電、そのまたの名を チンチン電車 と呼ぶ(*下ネタではない)。全長40km近い大動脈が、広島市民を右へ、左へと忙しく運びまわる。全線均一運賃で240円。一本乗り遅れても15分後に次の電車が来てくれる。
大東建託の店舗前から市電に乗車。広島都心の紙屋町西で下車。まずはエディオンへ炊飯器と調理器具を買いに行く。炊飯器は一升炊きのものを、調理器具は鍋を買った。詳細は次々回号にて述べる。一升炊きの力は半端じゃなかった。
再び市電に乗車。今度は下宿のタワマンへ向かう。市電の駅から歩くこと15分少々。堂々たる風格を備えた超高層階のタワマン(笑)が見えた。まさか新卒一年目からタワマン(笑)に住めるだなんて。家賃1.5万円のタワマン(笑)だなんて聞いたことがないぞ。恵まれすぎていてバチが当たりそう。博士課程が辛くてもやめずに最後まで頑張った分、神様からご褒美を授かったと受け止めよう。自分は恵まれた生活をさせてもらえそう。後輩や子供世代にあたる次世代にも豊かな生活をさせてあげたい。Make Hiroshima Great Again. 自分が広島を支えていくぞという強いMHGA精神を抱いた。
早速部屋の中に入ってみる。
扉を開けて窓を見た瞬間、海を見渡せる絶景が目に入った。日差しに照らされた広島湾の水面(みなも)が燦然と輝きを放っている。その美しさは天の川のごとく、壮大なこと太平洋のごとし。タワマン、タワマンと冗談で言っていた。さすがにタワマンではないだろうと予想していた。行ってみたら本当にタワマンだった。タワマンよりもタワマンしていた。
夏はこのベランダから花火が綺麗に見えるだろう。広島湾や宮島での花火大会を特等席から眺められる。誰かと一緒に眺めたいな。妄想の前にまずはちゃんと家具家電を買おう。とりあえずは洗濯機を買いたい。札幌時代のように家電無し生活をしていたら誰も寄り付かなくなるだろうから。
~vol.3 クヤクショランドで転入手続き に続く~
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