英語論文の作り方!論文執筆開始から雑誌投稿までの一連のプロセスを解説します

こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大工学系大学院生のかめ (M2)です。M2の3月時点で筆頭論文3報・第三著者での論文1報と計4報の執筆経験を有しています。

この記事では、これから論文執筆へ挑む方向けに論文執筆開始から作業終了(雑誌への投稿)までの一連のプロセスを解説します。

  • 論文をどうやって作ればいいか知りたい人
  • 近くに論文執筆歴のある先輩がいなくて情報を仕入れたくても仕入れられない人

こうした方々にピッタリな内容なので、是非最後までご覧いただければと思います。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

論文作成フロー

本記事で紹介する論文の一連の流れは以下の模式図の通りです⇩

それぞれについて以下で詳述します。

各段階の詳細

図表を作って考察する

何はともあれまずは図表。論文のコアとなるデータをまとめ、次以降のステップで論文を組み立てるための材料を揃えておきましょう。1st ステップではまだ図表を丁寧に作らなくて構いません。ある程度見やすく整理されてあればそれで問題ありません。

図表を作り終えたのち、データを論拠に主張できることを紙やWordへ書き出してみましょう。頭の中で考えているだけでは考えがまとまり切らないことも多く、言語化することで初めて論理が繋がったり・論理がハチャメチャだと分かったりと新しい発見があるのです。私の場合、パワーポイントに図表を貼り付け、PDF化し印刷して紙媒体にいたします。そして印刷した図表へシャーペンでもって思いついたことを記していきます。ここでの考察は文字通り『徹底的に』行いましょう。脳みそが「もうやめてくれぇ~!」と悲鳴を上げるぐらい何度も何度も考える。最初に深く思考を巡らしておけば論文を書く時がスムーズです。思考プロセスを少し整理するだけでそれが論文となるわけです。

結論を掲げる&別チームに先を越されていないか念のため確認する

図表を作成・考察し終えたら、次に思い切って論文の結論を掲げちゃいます。論文の到達点がどこにあるかを明確にしておくのです。”結論”といっても現時点では論文っぽく書かなくて構いません。「この論文は○○という新発見をした論文だ」とアピールポイントを明確にしておくのみです。行きつく先を早い段階で明らかにしておけば(どんな論文を書けばいいんだっけ…?)と迷子にならずに済むでしょう。執筆途中で苦しくなってもゴールが見えている故(ココへ向かって進めばいいんだ!)と希望をつなげます。余裕のある人は結論を論文っぽくまとめて頂いて結構です。序盤で苦労すればするほど終盤の作業が楽になるからやっておいて損はありません。

2nd ステップでは別チームに先を越されていないか念のため確認しておきましょう。研究の世界には数多くのプレイヤーが存在し、同じ時間に全く同じ研究をしていた、、、だなんていうショッキングな事態が稀に発生するためです。もし先を越されてしまっていたら、①論文のアピールポイントをガラッと変えるか②データをつけ足して先行研究を上回るかの二択クイズを迫られます。どちらにしても論文作成を最初からやり直さねばならず、後で気付けば時間的にも精神的にも大きな痛手を被るので、”前例がない研究かどうか”を早めに確認しておき後方の憂いをなくしておきましょう。

図表の最適な並び順を模索する

三つ目にやるべきことは図表の配置順の模索です。

  • どう並べたら視覚的に分かりやすいか?
  • この説を訴えるためにはどの図とどの図をセットで並べるのが効果的か?

などと一つずつ丁寧に考えながら並べていきます。ただテキトーに図表を並べると全く訳が分からなくなる。図表同士の関連が曖昧なせいで主張が頭に入って来ないのです。論文の読者的にも(コイツはいったい何を言っているんだ…?)とパニックに陥ること間違いなし。いくら論文内で斬新なことを言っていたとしても、配置順のせいでその斬新さを伝えられない場合があるのです。どうせ苦労して論文を書くのですから、読む人に理解してもらえる論文をどうか目指していただきたい。配置順次第で読みやすさは大きく変わるので、内容だけではなく順番にもこだわって論文を組み立てていきましょう。

先行研究を引用しながら日本語で本編を書く

第四段階にしてようやく文章の執筆開始。第三段階までに組み立てた論文の骨子へ肉付けしてあげましょう。いきなり英語で書くと英語表現に気を取られ、内容の精査にまで気が行き届かなくなる可能性があります。まずは我らが母語・日本語で本編を記し、表現ではなく論理性や主張の妥当性など本質的な部分をじっくりと検討すべし。

執筆の際、先行文献を引用しながら論文を作っていって下さい。引用によって自説に一層大きな説得力を持たせられますし、考察パートのボリュームを増せて風格のある論文に仕上がるのです。引用の際はZotero(ゾテロ)やMendeley(メンデレー)など文献管理ソフトを使ってください。これ等を使えば参考文献リストや引用文献番号をワンクリックでサラッと作れちゃいます。私の場合はZoteroユーザー。Mendeleyより使いやすく感じるZoteroを1年以上愛用しています。Zoteroの長所は論文のフォーマット別に参考文献リストを作ってくれる所です。M1の後期に同じ専攻の友人からZoteroの存在を教えてもらい、それ以降、論文を書くときはいつもZoteroに頼ってめちゃめちゃ楽をしています(*≧∀≦*)

本編を作り終えたら指導教員へメールで送り、内容に手を入れてもらうのがオススメです。自分では気付かなかった論理の破綻やスッキリする説明の仕方を色々と教えてもらえます。大学教員は大忙し。ですから自分の代わりに論文を書いてくれる学生が可愛くて仕方がないのです。たとえどれだけ忙しかろうと、先生方は我々に時間を割いて添削に協力して下さるでしょう。先生、様々。論文執筆の場面ほど先生へ感謝する場面はありません。

イントロ&アブストを日本語で書く

本編を作り終えたらイントロダクション(背景)とアブストラクト(要旨)の作成に取り掛かって下さい。わざわざ④本編と別段階としたのにはちゃんと理由がありまして、論文執筆にあたり最も大変なのがイントロとアブストの作成なのです。

正直、本編だけ書けばいいのならば論文執筆なんてお茶の子さいさい。ストロングゼロを飲み酔っ払いながらでも何とか仕上げられるでしょう。しかし、背景と要旨の作成はそう簡単には運びません。背景は『本編をスッと理解するのに必要十分な知識を提供する』という狙いがある。要旨には『読者の知的好奇心を強く掻き立てて論文を読んでもらう』という目的があり、両者とも明確な正解が存在しないから(どう書けばえぇっちゅうねん…)と途方に暮れてしまうわけです。

この段階に関しては私自身もコツを掴めていません。書いても書いても指導教員や共同研究者さんに「書き直し!」と突き返され、何十回ものラリーの末に「まぁ、いいんじゃない?」と及第点を貰ったほどですから。ある時、共同研究者さんから「英語圏の有名な先生が書いた論文を読めば書き方の勉強になるよ」とアドバイスを貰いました。言われた通り、著名な某・学者さんの論文を読むと、確かにイントロやアブストが非常に読みやすく感じました。それだけではありません、本編の内容と上記2つが見事にマッチしていたのです。過不足なく情報を提供する有様はまるでパズルか何かのよう。(きれいな論文だな…)と惚れ惚れとしたのを昨日の出来事のように思い出せます。

テクノロジーが進んだ今ならchatGPTにイントロを全文読ませ、「イントロを300字にまとめて」と指示するだけでアブストが出来上がってしまうでしょう。しかし、要約するための材料・イントロは自分で書かねばなりませんから、AIが賢くなっても論文執筆力は依然として必要になります。

書いた内容を英語化する(&論文を校正会社に送って校正してもらう)

第六ステップにしてついに英語化!自分の著作が国際雑誌へ投稿される瞬間が目と鼻の先まで訪れています。これまで一生懸命作ってきた日本語論文を英語に直し、

  • 適切な英語表現を使えているかどうか
  • 翻訳の過程で文の意味が変わってしまっていないかどうか

などを一文ずつ丁寧に検討しましょう。日本語をDeepLなど翻訳ツールに放り込めばソレっぽい英文が出来上がります。しかし所詮はAIの所作、どこかぎこちなさが残って読みづらく感じてしまうのです。人間の仕事は翻訳ツールがやりたくてもできない”読みやすい英文”を作ること。今まで義務教育で培った英語力をここで出し惜しみせず遺憾なく発揮し、自分の英語力じゃどうにもならない部分は指導教員の助けも借りて何とかしましょう。

私の指導教員チームの場合、先生が論文を添削し終えたら論文を英文校正会社へと送ります。校正会社へお金を払って論文を添削してもらい、英文をよりナチュラルかつ洗練した状態で雑誌投稿へと進むのです。校正により論文の質がもうワンランク・ツーランク向上します。加えて、発行していただける校正済み証明書を論文投稿時に添付すれば、『アジア人は英語がヘタクソだから』という欧米人の偏見を「は?こっちはネイティヴの校正済みですけど?ナメんなよ?」と容易に跳ね返せます。欧米人って口先では「平等!SDGs!差別をなくそう!」と熱心に訴えておりますけれども、内心では(自分ら白人の間だけ平等なら他の人のことなんてどーでもいいし笑)と超差別的思考を抱いています。そんな奴らと研究で戦うにはお金の力をも借りねばならない。内容的にも英語表現的にもパーフェクトにしてから最終段階へと進むのです…

投稿雑誌指定のフォーマットに直していざ投稿!

投稿前の最終準備として論文の投稿規定の確認をします。雑誌会社によって規定が微妙に異なり、

  • フォントはTimes New RomanかTimesじゃないとダメよ
  • 写真はJPGかTIFFで提出してね
  • 文章自体も雑誌指定のフォーマットに当てはめて出してね
  • あっ、映像はAVIファイルしか受け付けないから

などと非常に多くの注文があります。別に少しぐらい注文から逸れていたって大きな問題にはなりません。論文のアクセプト後、数日間ほど図表を修正する期間が設けられるのでその時に最終調整をすればOK。ただ、雑誌の編集者や査読者的には、最初から丁寧に整形された論文を受け取った方が気持ちが良いに違いない。アクセプトされる確率もこうした所で差がつくのかなと思います。

テキトーに済ませていた図表についてもココで丁寧に仕上げましょう。サイズやフォントの調整も忘れずやっておくように。論文は図表が命です。図表だけはなぁなぁで済ませず、細部まで作り込むよう何卒よろしくお願いします。

最後に

論文執筆のプロセスの解説はコレで以上となります。皆さんが今後論文を書く際の助けになれば幸いです。

この流れで実際に論文を書き、海外雑誌へ投稿した経験談を以下に添付しておきます。もし興味があればそちらの方もご覧いただければと思います。

論文がアクセプトされるまでのプロセスについてはコチラに詳しく書きました⇩

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