【インタビュー#3】博士課程早期修了者へ「就職活動」について尋ねてみた

目次

進路選択

インタビュアー

進路を決めたタイミングについてお伺いします。かめさんが民間企業への就職を決めたのはいつ頃ですか?

かめ

企業就職を決めたのはD1の1月です。イギリスから帰ってくる直前に決めました

インタビュアー

国研や大学の公募へ挑む選択肢はありませんでしたか?

かめ

最初は国研を目指していました。研究の都合で国研へよくお世話になっていて、国研の雰囲気に魅了されていましたから

かめ

しかし、目当ての研究ポジションが空きませんでした。博士修了後、いきなり正規職へ就くのは難しそう。ポスドクになって国研に在籍してポジションの空きを待つ作戦も考えました。いつになったら空くか見通しを立てられぬ以上、ポスドク待機作戦が失敗に終わって時間が無駄になる可能性があります。おまけに近年、「女性枠」なるものが誕生しましたね。持って生まれた属性による差別を平気で行う組織に身を置くのは嫌。こう考えて国研応募を見送ったのです

インタビュアー

大学の方は…?

かめ

ハナから考えていませんでした。多忙な指導教員を間近で見ていて、このような働き方を一生するのは厳しいのではないかと感じたのです

かめ

また、大学教員になると、周りから「先生」と呼ばれます。たいして偉くもない私まで学生や他の教員から「かめ先生」と呼ばれる。そんなことをされたら数年のうちに調子に乗ってしまいそう。謙虚さを保つには相当な自制心が必要でしょう。「先生」と呼ばれても天狗にならずに己を律し続けられるとは思えませんでした

インタビュアー

なるほど…
博士人材の活躍の場は国研や大学以外にも様々あるかと存じます。数ある選択肢の中で企業を選んだのには何か理由がありますか?

かめ

一番大きかったのが、役に立つ・デカい仕事がしたいという想いです
博士課程では基礎研究をしてきました。基礎は基礎でも趣味に近い研究です。正直言って研究の有用性に自信を持てませんでした。ここで得られた知見が何の役に立つのだろうと半信半疑で続けてきたのです。どうせ時間を費やすなら誰かの役に立ちたい。数十年後ではなく今すぐ、あるいは数年後、”確実に”役立ちたい

かめ

実験室スケールの仕事だと面白くありません。目に見える形で社会を直接的に変えられる仕事がしたかったのです。なるべく大きなインパクトが欲しい。自分が仕事に携わった成果物が街中のいたる所で見てやりがいを感じたい。実験室の域を出て、日本中を、いや世界中を自分の手で変えてみたい。私の希望を最も的確に叶えられそうなのは企業の開発職しかありませんでした

就活開始から内定までの経緯

インタビュアー

そうなんですね。
様々な理由で就職を決めたのがD1の1月。それからどのような経緯で内定までこぎつけましたか?

かめ

まずは就活の軸を決めました。やりたい仕事や住みたい場所、希望年収などを具体的に決めたのです。次に業界研究…と普通なら進むでしょう。私は住む場所だけはどうしても譲れませんでした。そこで、希望居住圏内にある企業をリストアップし、その中から就職先を選ぶことに。候補は2社しかありません。ふたつのうち、自分の専門性をより発揮できそうな方へと応募先を絞り込んだのです

インタビュアー

博士人材を積極募集する企業はあまり多くないと思います。かめさんは、就職希望の会社に対してどのようにしてアプローチをかけましたか?

かめ

おっしゃる通り、博士人材は通常の方法で募集がかけられることは稀です。私が就職を希望した企業でも博士人材の募集は表立って行われてはいませんでした。そこで、人事担当者へ直接メールしたのです。「貴社へ就職したいんですけど、選考してくれませんか?」と。メールから数日後に返信がありました。「ぜひ面接しましょう。履歴書と研究概要をお送りください」と

インタビュアー

早期修了者の選考もやって下さったのですね

かめ

そうですね。私自身、飛び級予定者を雇ってくれるか不安に感じました。飛び級はあくまで”予定”に過ぎません。ヘタしたら飛び級に失敗して就職できなくなる可能性もあります。メールで「早期修了予定なんですけど大丈夫ですか?」と問い合わせました。「何も問題ありません」とのことで無事選考に進めましたよ (*≧∀≦*)

インタビュアー

良かったです^ ^
面接ではどのようなことを尋ねられましたか?

かめ

研究概要や性格の深掘りなど、修士の人間に聞くような質問と同じようなものばかりでした。博士の面接ならではだなと感じたのは、「後輩の指導経験はあるか」という問い。将来、管理職や経営層に上がっていくであろう博士人材のマネジメント適性を見定める質問。大半の質問に難なく答えられました。手ごたえは上々。コレで落ちたら笑うしかないと開き直れるぐらいの出来でした

インタビュアー

その会社からは内定を頂けましたか?

かめ

はい!面接から4日後に内定を頂きました。一社だけ受けてその会社に通り、直ちに就活を終了した形です

インタビュアー

おめでとうございます🌸
かめさんは、就活と研究をどう両立させましたか?

かめ

就活は研究の待ち時間や移動時間に済ませました。
論文を指導教員に確認して貰っている間、就活の軸について考えてみる。飛行機や電車で長距離移動している間、二社ある候補のうちどちらへ応募しようかじっくりと思いを巡らせる。企業へのメールは、ヒースロー空港で帰国便を待っている時間に打ちました。研究概要と履歴書も同様です。隙間時間だけを使ってサクッと終わらせました

インタビュアー

短期集中型だからこそできる荒業ですね

かめ

そうだと思います
あと、博士人材の持つ特性もうまく使えたかなぁ、と

インタビュアー

…どのような意味でしょう?

かめ

博士人材は、企業から高い専門性を期待されています。修士まではジェネラリスト採用。博士からはスペシャリスト採用です。裏を返せば、専門と企業の求人とが合致すれば高確率で内定するでしょう。ニーズとシーズが噛み合う所を集中的に攻めれば良いわけです。私が内定をいただいた企業では、私のように電気化学的知識を有する人材が欠乏していました。しかも私は企業本社のある県出身。そりゃ欲しがりますよね。作戦勝ちです。通るべくして通ったと思います

就職で後悔していること

インタビュアー

就活には戦略が大事、とのことですね
では、就活を通して後悔していることがあれば教えて下さい

かめ

事前に定めた希望条件をすべて満たす企業へ内定しました。後悔はありません

インタビュアー

そうですか。では次の質問へ…

かめ

あえて後悔を挙げるとするならば、居住地にこだわりすぎずとも良かったかなと感じました。
自分が希望したのは地元・広島での就職。広島は西日本有数の都会です。しかし、関東の大都会から見れば田舎の部類。給料は低め。福利厚生はあまり良くない。転出超過数が全国一なのも頷けます。自分自身、広島が地元でなければ、広島への就職など考えなかったでしょう。広島へのUターン就職後、広島の良くない所に気付いて嫌な気持ちになるかもしれません

かめ

特に給与面の問題は大きいです。同業界の他企業と比べたら、福利厚生コミで年額200~300万円違ってきます。数百万円もの差を広島への愛着だけで埋められるかどうかは分かりません。
私は大学進学時、広島を離れて北海道に移住しました。札幌に住み始めて今年で八年目。今では札幌が大好きになりました。どのような場所でも住めば都。好きな場所に住むのもアリ。住んだ場所を好きになるケースも考慮し、事業内容重視で就活すれば良かったかもしれません

インタビュアー

就活って難しいですよね。何を重視するのが正解なわけでもないですし。私も時々インタビュー業が辛くなります。転職を考えることだってしょっちゅうです…

かめ

…私でよろしければお話を聴きましょうか

インタビュアー

あぁぁぁぁ、すみません!!つい本音がこぼれてしまいました。
では次の質問へ行きますね。集中、集中!

かめ

切り替え力、鬼やな。まるでアスリートみたいや…

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