前回のあらすじ
博士課程を早期修了し、地元・広島で社会人生活をスタート。勤務先は、太っ腹で名高い弊社。入社早々、引っ越し代に赴任手当、満額支給の初任給と、ケタ違いの厚待遇に思わず歓喜。思い出すのは大学院時代。あの薄給生活から一転、可処分所得の倍増にほくそ笑みが止まらない。
通勤ラッシュ、新人研修、初めての定期券購入──すべてが初体験。プライドを捨てて同期と打ち解ける。ビジネスコンペではチームで勝利を勝ち取った。北大生協の脱退。給与の振込先指定ミス。日々の些細な出来事に一喜一憂する。社会の荒波に揉まれ始めた、オールドルーキー27歳。
飢えから完全に解放された。会社員としての生活がいま、穏やかかつ静かに走り出す。第二の人生はここから始まる。炊飯器とともに、四股を踏みつつ、未来に向けて力強く歩んでいく。
健康診断C判定
弊社はSHUCDEC(スーパー・ハイパー・ウルトラ・超・どんだけ・エクセレントカンパニー)。勤務時間中に健康診断を受けさせてくれる。検査料は無料。一年に一度まで受け放題。驚くなかれ、健康診断まで勤務扱いになる。早朝からの検査ということで、早出割増手当まであてがわれた。いったいどれだけ良い企業なのだろうか。神でしょ、神。破格の待遇。
ん? ひょっとして、世間ではこれが普通なのか。アカデミアから離れて企業に行ったら、何でも恵まれているように感じる。幸せで結構。コケコッコー🐓。ああ、素晴らしい新世界。このままずっと錯覚に包まれていたい。現実の姿が見え始めたとしても「学生時代と比べればマシ」と心を慰めていたい。
四股や懸垂で全身をバキバキに鍛えてきた。日頃の成果を医療従事者に見せつけてやる。
厚待遇に気を緩め、稽古を怠る会社員さんは多い。弊社の新入社員も例外ではない。まだ入社ひと月目というのにミナモア(*広島駅新ビル)へ飲みに繰り出している。飲みすぎて排水溝にゲロをスプラッシュしたやつも現れた。お酒に呑まれてどうするんだ。ちゃんときれいに掃除したんだろうな。全部腹に吸い込んでおけよ。家まで持って帰って全部吐いてくれ。
アカデミアからミナモアに移籍した。いや、していないけれども、可処分所得は倍になった。それと身体の鍛錬とは別。身体を甘やかせば腹が三段峡になる。アラサー男がポンポコリンになろうが見苦しいだけ。ピーシャラピーのパッパラパーになっても可愛くもなんともない。鍛えてナンボ。めざせ、クリスティアーノ・ロナウド。チャンピオンズリーグ出場を目指して、粛々とやるべきことを積み上げていく。

健康診断を受けてきた。総合判定は『C』だった。
C判定だなんて久々。いつ以来? 高校時代ぶりか。高三の夏に受けた京大実戦模試で理学部C判定だった。10年ぶりのC判定。合格可能性は50%と油断ならぬ結果。ちなみに、秋の京大模試では農学部A判定(理学部B判定)。そこで調子に乗って勉強の手を緩めた。京大本試では最低点に6点届かず不合格となった。当然の報いだ。
健康診断のコメントに目を通す。「軽度の異常を認めます。健診にて経過観察してください」とのこと。おかしいのは、ずっと昔から。今さら何を言っているんだ。笑っちゃうね。おかしくなければ飛び級なんてしないでしょ。それでC判定だなんて、仰々しい。


いったい何がC判定なのか。白血球の数が少ないらしい。献血の血液検査でも同様の結果。だからといって、病気がちなわけでもない。生来ほとんど風邪をひかない身体。バカは風邪をひかない。要するに、自分は大バカ者だ笑
白血球が少ないのは、少なくてもやっていけるから。ランニングで体温が上昇する。体内の悪いヤツらが殺菌される。上裸で走るから、太陽光も皮膚表面のばい菌をやっつける。あとは覇気。目を血走らせて任侠力を示す。菌はビビり。すぐ逃げる。怖がりすぎて、体内へ侵入しようと試みすらしない。白血球の活躍する場面が無い以上、血液中に白血球を飼っていても仕方がない。だから、少ない。C判定だなんて仰々しい。ありがとうございます。
当健康診断の信頼性には若干の疑義を呈したい。視力が1.2ってどういうことだ。1.2なわけないじゃん。一年前に北大で受けた検診では1.5あったのに。この一年間、むしろ目は良くなった。特に、研究から解放された春休みで視力がブーストした。2.0に戻ったかなと期待していた。なのに、下がっている。視力の高さしか取り柄の無い自分から視力を奪わないでくれ。さすがに誤診だろう。大変遺憾である。遺憾砲を発射する。まずは目薬をさしてみようか。
部門配属、のち研修
弊社で配属式が行われた。偉い人が部門の名前を読み上げ、配属される新入社員の氏名を告げる。
配属式当日まで配属先を知らない人が半分以上いたらしい。博士組とインターン採用組と一部採用者の配属先は決まっている。私自身、内定時に入社後の勤務先を教えていただいた。学校推薦内定者の多くは、まだ配属先が決まっていない。希望は出したそう。希望が通るか否かは定かではない。いわゆる配属ガチャだ。おそろしい。
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B4で大学の研究室に入るとき、研究テーマでイレギュラーがあった。
配属前に研究テーマの打ち合わせをした。やりたかったテーマがあった。指導教員になる先生のもとへ相談に行き、テーマの確約をいただいた。いざ研究室に入ると、全く別のテーマをあてがわれた。抗議した。覆らなかった。”仕方がない”の一点張り。何の事情説明もなかった。テーマ確約は、口約束だった。メールや文書で確約の証拠を残しておかなかった自分が悪い。
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私は内定時の通知どおり、研究開発部門に配属された。生産技術や事務職に配属されたらどうしようかと思っていた。さすがは弊社。きちんと約束を守ってくれた。どすこい、どすこい。弊社の義理堅さに感謝したい。
研究室配属時の苦い教訓がある。企業内定時には、メールにて配属先を問い合わせ、形に残しておいた。配属ガチャなど起こりようがない。研究室でも最初からこうしておけばよかった。そうすれば、希望のテーマをやらせてもらえたはずなのに。指導教員を悪者にすることもなかった。昔の自分は青かった。もっと強くならねば。四股が足らなかった。どすこい、どすこい。
研究開発領域の基礎研修を受けた。研修といっても、半分は部署紹介。社内にどのような部署があるのか。役割分担はどうなっているのか。グループ配属前に諸々の知識を吸収した。弊社は広い。北大よりも広い。ディズニーランドの比ではない。敷地面積は、ドラえもんの四次元ポケットの中ぐらいある。覚えるべき話はポンポコリン。話を一日中聴いていて疲れた。インプット過多。週末のブログ執筆でイン-アウトのバランスを整える。
早く業務を始めたい。座っているだけでお金を貰えるのはいいが、そろそろ頭がなまってきた。働きたい。
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