広島生活春夏秋冬vol.1 一年目・4月編|太っ腹の弊社で会社員生活開始!二度目の初任給に狂喜乱舞

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太っ腹の弊社で働くにあたって

池田勇人像

4月から勤める弊社はSHUCDEC (スーパー・ハイパー・ウルトラ・超・どんだけ・エクセレントカンパニー)。工場見学の交通費も札幌からの引っ越し代も全額支給してくれた。弊社は広島一の太っ腹企業。SHUCDECの弊社は昇給にも超意欲的。今年の春闘で月給を約2万上げてきた。2万円といったらなかなかの額。毎月、イワシ缶を80缶購入できる。そんなにたくさん食べたらイワシになる。弊社は従業員をイワシにしたいのか。

いずれにせよ、弊社は太っ腹だ。太っ腹すぎてやや心配になる。このままメタボになりやしないだろうか。研究開発への投資は十分なのだろうか。新入社員の自分になんかよりも既存社員に投資して欲しい。まぁ、受け取れと言われて拒む理由はない。お金はナンボあっても困りません。もらえるものはもらっておけ。博士課程で得た唯一の知恵である。

SHUCDECのご厚意だ。素直に受け取っておこう。おかなきゃ遺憾砲を連射される。新卒会社員に遺憾砲は受け止めきれない。ここは検討使のおひざ元。遺憾砲の威力は1.5倍に増幅される。ネコパンチよりも痛いかもしれない。想像するだけでおぞましい。

弊社はなぜ太っ腹なのか?

言うまでもない。人材を大切にしているからだ。会社が社員へ報いられるのは報酬面でだけ。やり甲斐を見出すのは社員の仕事。企業側はお金を出してあげることしかできない。お金に働き甲斐を見出してもらえる一縷の望みにかけて、弊社は太っ腹を急激に加速させた。

いやいや、それにしても太っ腹すぎる。太っ腹に太っ腹を重ねたビッグマウンテン。ひょっとして、密かに角界入りを狙っているのではないか。ここ二~三年間の昇給には目を見張るものがある。ぶつかり稽古だけではあそこまで太っ腹にならない。実は裏で過酷な食事トレーニングをしているのではないか。

…どうやら弊社は本気で角界入りを狙っているらしい。弊社の一員になる私にも食事トレーニングが必要だろう。生半可な鍛錬では業務へついていけない。お腹がはちきれんばかりにメシを食らう必要がある。悲しいことに、札幌生活にて炊飯へ使っていた電気圧力鍋が、いつの間にやら圧力がかからなくなった。小泉シンジローが進次郎節を使わず、まともにしゃべり始めたようなもの。それでは何の役にも立たない。炊飯器だ。樽のように大きなヤツを買おう。

エディオンで炊飯器を購入

広島県民が家電製品を買うなら「エディオン」と決まっている。これはもはや、遺伝子に刻まれた鉄則だ。胎内で耳にした最初の言葉が「エディオン」だった広島県民も大勢いる。

エディオンは広島に本社を持つ家電量販店。ビックカメラやヨドバシカメラよりも多くの店舗を見かける。

エディオンは、我らが紫軍団・サンフレッチェ広島のプラチナスポンサー。というか、サンフレッチェはエディオンの連結子会社。サンフレッチェはエディオンの一部。エディオンは、サンフレッチェの保護者。つまり、サンフレッチェはエディオン製。新スタジアムで躍動する紫の戦士たちは、実は家電量販店から生まれた超合金ヒト型ロボットだった。ヒーローインタビューではときどき正体をほのめかしている。「ぼくドラえもん今日も応援ありがとうございます!」と言っている。今度、耳を澄ませてよく聞いてみてほしい。

弊社は角界入りを狙っている。私自身、将来的な角界入りを狙っている。なるべく大きめの炊飯器が欲しい。たくさん食べて、体を丈夫にし、4月からのぶつかり稽古に備えたい所。三合しか炊けないのは論外だ。最低でも一度に五合は炊けなければ。できれば十合。一升炊きの炊飯器が好ましい。一升の炊飯器など見たことがない。あるのか、ないよな。業務用スーパーにでも行かなければ…

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あった。お望みの炊飯器を見つけた。
IH炊飯ジャー。象印の極め炊きシリーズ。にしても、大きいな。十合って、何合だよ。十合だよ。なに言ってんだ。こんなデカい炊飯器など使ったことがない。フタを開けて内部を確かめる。本当に十合炊けるようになっていた。”実は七合しか炊けません”っていうオチかと思ったのに。

一食に一合食べるとしよう。十合炊けるなら、十食分炊ける。今のままではいけないと思っている。だからこそ、今のままではいけないと思っている。素晴らしい。炊飯器側に猛烈な危機感を感じた。マーヴェラス。炊飯の回数を大幅削減できる。家事の効率化態勢は万全。願い通り、食トレもできそう。3月はしっかり食べて体を作る。4月からは、弊社で四股を踏む。これで業務にも食らいついていけるだろう。

早速、炊飯実験を試みる。

まずは玄米を八合入れる。上から雑穀米と小豆を一合ずつ投下。水につけて静置する。米と豆から発芽毒を抜く。1.5日経ったら水を入れ替える。いざ炊飯ボタンをクリック。これで任侠飯が出来上がる。

10合炊きの割に炊飯が速い。ものの一時間で任侠飯が出来上がった。ほの赤くなった玄米は、初恋に落ちた少女の頬のよう。すごい。釜の内側までしっかり火が通っている。ひと粒残らず炊飯できている。横綱の顔を思い浮かべながら食べる。いつか、自分も横綱になるぞ。美味しい。任侠力がどんどん上がってきた。今なら誰にも負ける気がしない。プラスチックの原料って石油なんですよね。意外にこれ、知られていないんですけど。

これから一食あたり一合ずつ摂っていく。五日で十合を消費しきるペース。食べても食べても太る心配はない。なんせ、毎朝、河川敷で20km走っているのだから。一度のランニングで1,200kcal使っている。むしろ、身体の限界まで食べなければ痩せる。ガリガリだったら弊社で働くどころではない。太っ腹の弊社に寄り切られぬよう、地道に食トレを積み重ねていく。

弊社への半年間パス購入

生まれてこのかた、電車通学したことが無い。
幼稚園まではスクールバスで通っていた。小学校へは、路線バスか徒歩で。中学・高校は自転車で。大学は自転車で。 すすきの でサドルを奪われてからは匍匐前進で。満員電車を経験したことが無い。テレビで報道されるぎゅうぎゅう詰めの光景を、架空の現象だと鼻で笑っていた。

会社員になって、ついに電車を日常利用する。会社へはJRで向かうことになる。家を出る時間が電車の時刻表で決まる。少し不便だ。好きな時間に出られなくなって。広島は10~15分に一度、電車がやって来る。一本逃せば会社へ遅刻するリスクがある。朝からあまり気を抜けない。まぁ、少々の緊張感は必要か。今までぼんやりと暮らしてきた。ここはひとつ、気合いを入れて、電車通勤とやらに挑戦してみようか。

弊社は太っ腹の大企業。通勤費用を全額負担してくれる。家から弊社最寄り駅までの半年分定期券代をくれる。タダで懐に入れるわけにもいかない。定期券を買おう。駅の自動券売機に向かった。

高校時代の記憶がよみがえる。彼女との初対面のとき思った。まるで初めて会ったみたいだなって(そりゃそうだろう)。人生で初めて自分で買う定期券。”初めて”って、何でも心が躍る。弊社への半年間フリーパス。弊社に行き放題。無限に通える。一日三往復ぐらいしてやろうか。土日も通う。追加費用は掛からない。あっという間に元を取れてしまう。

ところで、定期券の装飾はどのようなものだろうか。キラキラのラミネーションでも入っているのか。「ヘイシャ!」とでっかくプリントされているのかも。定期券から愛社精神を醸成しにかかる。さすがは弊社。太っ腹にもほどがある。何が出るかな。何が出るかな。

ただの交通系ICカード「ICOCA」が出てきた。ラメも、弊社のロゴも、何も入っていない。書かれているのは、行き先と有効期限のみ。そんなものか。ラメぐらい入れて欲しかった。落胆するのはまだ早い。改札にかざせばカッコイイ音が出る。シャキーン!!ばこーん!!ドッカーーン!! 出るわけがない。駅構内がうるさくてたまらない。

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