【学振DC】研究奨励金月20万円(手取り16万円)で生計をどう立てていくか

会社の給与明細を見るたび、特別研究員時代の預金通帳が愛おしくなります。振込額は20万円。そこから諸々が引かれ、手元に残る金額は約16万円。ある月は黒字にガッツポーズ。ある月は雑費の使い過ぎで大赤字に。

日本学術振興会特別研究員DCは、若き研究者にとって最高の栄誉。自身の研究計画が、その分野の第一人者たちに認められた証です。そして同時に「生活設計」が新たな研究テーマとして立ち現れる瞬間でもあります。

会社員となった今だからこそ語れることがあります。手取り16万円の中で、いかにして研究パフォーマンスを最大化するか。この記事では、元特別研究員が、博士課程におけるもうひとつの知的サバイバルを勝ち抜くための「戦闘技術」を、具体的な収支報告と共に記します。

目次

月10万円の固定費は「基盤投資」

毎月決まった日に口座から旅立っていく固定費。我々の研究パフォーマンスを支える基盤コスト。重要なのは、出費の意味を理解し、各々に合った形で最適化すること。

家賃:60,000円

家賃は地域によって大きく変わります。地方大学であれば4〜5万円程度。都心部では10万円弱になるかもしれません。

家賃を抑えて大学から遠い場所に住む選択肢もあるでしょう。通学に往復1時間かかるとすると、通学だけで年間365時間も失われます。実に15日以上を移動に費やす計算に。その通勤時間で論文が何本読めるか。実験がどれだけ進むでしょうか。家賃は、研究時間を購入するための必要経費と捉えるのが合理的です。多少高くても、大学の近くに住むのをオススメします。

所得税・社会保険料:35,000円

特別研究員は個人事業主。学振と雇用関係のあるフリーランス(!?)。

特別研究員採用と同時に学生から事業主へ。身分の変化は、税金と社会保険料をも引き連れてきます(来ないでくれ)。そう、我々は納税しなければなりません。所得税は月0.5万円程度。社会保険料は3万円近く。所得額が一定ラインを超え、学生納付特例の対象外となります。国民年金の支払いを避けられなくなるのです。残念ながら税金の額は減らせません。3.5万円もの大金なしにどう暮らすかを考えていく必要があります。

研究関連費(生成AI使用料など):5,000円

論文執筆を補助するAI。統計解析ソフトのライセンス。研究能力を拡張するための「外部記憶装置」や「第二の脳」としての出費。月数千円の投資をためらえば、博士課程で累計数か月分もの時間を失うでしょう。ここは惜しまず投資したいですね。未来の自分に対する、最も費用対効果の高い「自己投資」と断言できます。

参考までに。私は博士課程在籍中にChatGPTとClaude AIを使っていました。両方とも研究遂行経費で落とせます。どうか安心してお使いください。

変動費6万円で生活を彩る

生活の質を左右するのが変動費。この項目の管理こそ、特別研究員の知性と創造性が試される主戦場ではないでしょうか。

食費:30,000円

一日千円分の予算。自炊が基本戦術となります。お米。肉や魚。野菜。果物。基本物資をいかに美味しく、かつ栄養バランスを保ちながら摂取するか。週末に常備菜を仕込む作業は、さながら次週の実験準備に似ています。クリエイティブな調理能力は、研究遂行能力とほぼ同義と言えるかもしれませんね。

ちなみに、これだけ偉そうなことを記している筆者自身は、玄米・サバ缶・ゆで卵の「三種の神器」に全てを捧げていました。料理と呼ぶにはあまりに無骨ですが、調理時間を極限まで削り、思考のリソースを全て研究に注ぐための、私なりの『戦略的選択』だったと信じています。

水道光熱費・通信費:15,000円

研究室にいる時間を長く取りましょう。家を空ければ明けるほど、光熱費を抑えられます。

光熱費や通信費にも最適化の余地が。電力・ガス会社は自由化されました。大手会社のプランへ思考停止で加入していては大損する時代。最適なプランを選び直すだけで年間数万円もの差が生まれます。通信費も同様。格安SIMへの乗り換えは必須科目。私自身、ドコモからUQモバイルへ乗り換えた結果、月0.5万円もの通信費ダウンとなりました。

雑費(交際費・書籍代など):15,000円

友人との食事。書籍の購入。日用品の適宜補充。雑費へどれだけお金をかけられるかが生活を左右するでしょう。出費を恐れて内にこもるのは機会損失。せっかくなら自己投資に充てたいですね。お金は、有意義に使えば、より多くのお金を引き連れて戻ってきます。一つの判断基準として「この出費は、新しい知識や人脈に繋がるか?」「未来の自分の時間を生み出すか?」と自問してみると良いかもしれません。

学振時代の「赤字」は、未来の「黒字」である

あなたが今向き合っている一日一日は、必ず未来に繋がっています。胸を張って今日の探求を楽しんでほしいと願うばかり。

学振時代の経験は、あなたが将来どんな道に進もうとも、最も信頼できる武器となるはずです。企業で数千万円の予算を任された時、あなたは誰よりもコスト意識を持ってプロジェクトを推進できるのです。研究室を主宰する立場になれば、限られた科研費をいかに戦略的に配分し、最大限の成果を生み出すかというシミュレーションを起用に行えるでしょう。

知恵とお金のふたつを網羅するのが特別研究員時代の本質です。論文の新規性について頭を悩ませるように、家計の最適化について思考を巡らせる。知の探求者よ、財務の戦略家たれ。

あなたの価値は、手取りの額面では測れません。その頭脳と、逆境を乗り越える知恵と、未来を信じる心には、無限の価値が宿っています。まずは今夜、スーパーへ、最高の「未来」を投資しに行ってみませんか?

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