【比較】学振DCとJSTフェローシップとではどちらが『得』なのか?

こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大化学系大学院生のかめ (D2)です。日本学術振興会特別研究員DC1として国からお給料をいただきかながら研究しています。

今から2~3年前、博士進学者 (D進者)の生活費を支援するフェローシップ制度が設立されました。学振DC1の採用枠にあふれた方の多くがフェローシップ制度を利用し、おかげで日本のD進者の大半が健康で文化的な研究生活を営めるようになったのです。

ここでふと一つの疑問が浮かび上がります。「学振DCとフェローシップとではいずれが総合的に見てお得なのだろうか?」と。20年以上続く支援制度 (学振DC)とJST肝入りの支援制度 (フェローシップ)。どちらも魅力的に見えますけれども、果たしてどちらを選べば良いのでしょうか?

そこでこの記事では、学振DCとフェローシップを5項目から比較していきます。

  • D進を考えていらっしゃる方
  • 学振DC1内定を目論んでいる方

こうした方々にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

給与:学振 (20万円/月)>フェローシップ (15~18万円/月)

ひと月ごとに貰える給与は学振DCの圧勝。フェローシップは所属大学によって貰える金額が若干異なっているものの、最高額の給与を貰える大学でも学振DCとは2万円近い差が生じているのです。また学振DCの場合、2024年度より、任期最終年度に限って月額3万円が報酬に追加されます。つまり、給与が月額23万円となるワケです。学振DCとフェローシップとで受給額がますます離れてしまう結果に。

研究費:学振DC (100万円/年)>フェローシップ (40万円/年)。ただし…?

両制度ともに、給与に加えて研究費も支給されます。学振DCの場合は年間100万円程度フェローシップだと年間40万円の支給額に。このように記すとフェローシップの方が圧倒的に少ないように見えますね。しかしフェローシップは、国内外への出張費を無限に支給してくれる神仕様。出張費が年40万円の枠を超過しても、使った分だけキッチリ全額支給されるみたい。学会や共同研究等で出張の多い方は学振DCよりもフェローシップを選んだ方が得するかもしれません。

納税額:学振DC (給与所得)>フェローシップ (雑所得)

学振DCは給与所得。サラリーマンと同じような感じで税金を源泉徴収されます。学振DCの給与は全体の3割が所得から除外される。”研究遂行経費”というヤツ。年間240万円×0.7=168万円が課税対象額となっているのです。

フェローシップは雑所得。フリーランスや個人事業主と同様、e-taxや税務署で確定申告して納税額を決定する形。フェローシップの給与に関しても経費申請すること課税所得額を抑えられます。学振DCよりもフェローシップの方が経費に繰り込める対象が幅広いよう。例を挙げると、学振DCの研究遂行経費には家賃を含められません。フェローシップの確定申告なら家賃を組み入れられ、総納税額をグッと抑えられるのです。

収入も納税額も多いのが学振DC。収入も納税額も少ないのがフェローシップ、という形。

奨学金や助成金の得やすさ:フェローシップ (何でもOK)>学振DC (JASSOは禁止)

学振DCに内定した学生はJASSOの奨学金を受給できません。修士の時のような奨学金返済全額免除レースに参加する権利さえないのです。フェローシップの場合、JASSO奨学金との併給が可能。フェローシップの給与 (15万円/月) に加えてJASSOの奨学金 (12万円/月)まで得られるとなると、奨学金の返済が全額免除になれば学振DCの給与を越えてきます。最も、返済全額免除になる学生は全体の2割程度。返済免除になるのをアテにして奨学金を使いまくっていたら後で大変な目に…

フェローシップとJASSO第一種奨学金の併給を禁止している大学もあるようです。皆さんの所属する大学でもそうかもしれませんので、気になった方は一度ご確認願います。

2024年4月9日追加:JSTフェローシップを利用している方は、博士課程在籍中に借りられるJASSO第一種奨学金返済免除の対象外となるようです。とんでもないルール変更かありましたね… なんとも恐ろしいことです。

なりやすさ:フェローシップ (倍率1倍未満)>学振DC (倍率6倍)

現状、フェローシップの採用倍率は1倍を下回っています。D進者の数に対する採用枠数があまりに多すぎ、事実上、全入状態となっているのです。研究計画さえキッチリと仕上げて提出すれば全員がフェローシップ生に。お金の問題でD進を諦める学生はほぼいなくなったのではないでしょうか?

学振DCの採用倍率はおよそ6倍。落ちる人の方が圧倒的に多いのが学振。フェローシップ制度設立により皆がD進できるような環境が整いました。『せっかくだし、フェローシップだけじゃなくて学振にも申請してみるか!』と軽いノリで申請する方の数が近年増加傾向に。学振DC内定を巡る競争は今後、ますます苛烈になっていくであろうと考えられます。生成AIの出現の影響もあり、学振DCに内定するのに必要な研究業績の数は多くなる一方でしょう。

結論:学振DCの内定を得られるなら得ておこう

学振DCとフェローシップとを5項目から比較してみました。まとめた表を以下に示します↓

学振DCフェローシップ
給与月20万円月15~18万円
研究費年100万円以上年40万円 [出張費は無限支給]
納税額多め (給与所得)少なめ (雑所得)
奨学金や助成金の得やすさJASSOは禁止何でもOK
なりやすさ倍率6倍倍率1倍

結論としては【学振DCの内定を得られるのならば得ておくべき】といったものになります。給与の額や研究費、それに内定に伴う資金獲得業績の箔といった観点から学振DCの方がオススメ。フェローシップよりも学振DCの方が博士課程で豊かな生活を送れるでしょう。残念ながら学振DCに落ちてしまった方はフェローシップによる救済を受けて下さい。

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