学振DC申請書作成時に注意すべき3つのポイント

こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大工学系大学院生のかめ (M2)です。2022年9月、日本学術振興会特別研究員DC1に内定し、それに伴い当ブログ『札幌デンドライト』を開設する運びとなりました。DC1の申請書を作成する時、指導教員や共同研究者さんの科研費申請書、東工大の大上先生の学振本など色々な文献を参考にしました。

この記事では、申請書作成の経験を踏まえ、学振DC1の申請書作成時に気を付けた3つのポイントを解説します。

  • 学振DCの申請に今まさに挑もうとしている学生さん
  • 今後学振DCへの申請を控えており、申請書作成のコツを少しでも早く知っておきたい学生さん

こうした方々にピッタリな内容なので、是非最後までご覧いただければ幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

審査員は忙しい。読む気の起こる、パッと見ただけで内容を把握できる構成に

学振DCは採択率20%未満の狭き門。申請者のうち80%以上は内定を得られず蹴られちゃいます。提出した申請書の出来栄えで内定可否が決まるのですが、書類の審査員は現役の学者さん。大学教員、国研の主任研究員など研究者さんに審査されるのです。

研究者の毎日は非常に多忙。朝から晩までスケジュールがみっちり埋め尽くされています。研究するのはもちろんのこと、雑誌社から回ってきた査読業務[関連記事]、大学教員なら大学の雑務や学生の指導、国研の研究員なら国家プロジェクトの会議などにも対応せねばなりません。我々が提出する学振DCの申請書は、そんなめちゃくちゃ忙しい研究者さんの隙間時間にパラパラと見られるわけです。目も体も疲れた状態で申請書に目を通すのだから、字でぎっしりと埋め尽くされた書類なんてそもそも読む気が起こりません。内容云々の前に読む気の起こる/起こらないで最初の選別がなされることを念頭に置いておきましょう。親切な審査員さんなら

親切な審査員さん

コイツ、ぎっしり書きやがって笑
でも頑張って書いたんだろうな…
仕方がない、読んでやるか!

と目を通して下さる可能性があります。しかし、世の中、そう親切な方ばかりなはずもなく、

意地悪な審査員さん

あぁ、もう何こんなぐちゃぐちゃ書いてんだよ。読む気失せた。パス、パス!

と歯牙にもかけて下さらない場合も。誰に審査されるかブラックボックスな状態で審査員さんの親切心に懸けてはダメ。パッと見て”読んでみるか”と相手に思わせる構成・デザインを心掛けてみてください。文書作成のコツは学振DC申請書の神・東工大の大上先生の学振スライドへ大量に掲載されています[関連リンク]。私の場合、

  1. 重要な部分は太字にする。太字箇所を流し読みしただけで大意を掴めるデザインにした
  2. 言いたいことを模式図に詰め込んだ。図の配置を工夫して文字の圧迫感を回避した

この2つに特に気を付け構成を練って内定しました。

審査員と申請者とで専門分野が異なる可能性も。高校生にも分かる程度に専門用語を減らした文面に

意外と盲点になりがちなのは、申請者(自分)と審査員(研究者さん)の専門分野が微妙に異なる可能性です。申請書は『分析化学』や『物理有機化学』など無数の小区分別に提出されるのですが、審査員が必ずしもその小区分内の内容すべての専門なわけじゃありません。例えば私が申請書提出先に選んだ『エネルギー関連化学』という小区分の場合、

  1. エネルギー資源
  2. エネルギー変換材料
  3. エネルギーキャリア関連
  4. 光エネルギー利用、物質分離
  5. 物質変換と触媒
  6. 電池と電気化学材料
  7. 省エネルギー材料
  8. 再生可能エネルギー
  9. 未利用エネルギー

と9つもの学術分野を包含しています。”小”区分とは名ばかりに、全く小さくありません。もし私が審査員なら⑥電池と電気化学材料の申請書はまぁまぁ理解できるでしょうが、①鉱物資源系の申請書や⑧太陽光発電系の申請書については何が何だかサッパリなはず。同様に、太陽光や資源系の専門家が私の電池関連の難しい話を聞いてもチンプンカンプンというわけです。いくら夢を壮大に語ったとしても、肝心の内容が通じなければ努力が水泡に帰すのです。学振DCの申請書を書くにあたり、自身の専門領域の共通言語が必ずしも通じるとは限らない点に十分留意しておいてください

申請書を書く際は、研究分野の素人にも伝わるような文言でしたためましょう表現の抽象度の目安としては理系(or文系)高校生へ通じる程度に。専門用語を多用しても高校生には(なんのこっちゃ…)と伝わりません。多少の科学リテラシーを持った人間ならついて行ける程度の文章を書いていただきたいです。なお、表現をかみ砕きすぎても審査員さんが(馬鹿にしてんのか?)と心証を害されたようにとらえます。分かりやすく、かつ風格も備えた微妙なバランスが必要なのです。

もし自分の書いた申請書が他人の目にどう映るか知りたい方は、同じ専攻の別研究室の同級生を捕まえ読んでもらうのがすごくオススメ。研究室が違うだけで専門の共通言語が異なるため、分野の素人にも理解できるか否かの試金石となりうるのです。その同期も学振DCに申請するなら尚のこと都合が良いですね。私の場合、博士進学する同期とM2の4月中旬に申請書を見せ合い、フィードバックして互いの申請書のブラッシュアップに役立てました[関連記事]。

自分の言葉で書き記そう。申請書はラブレターだから、人間が醸し出す人間臭さでもって審査員の心を動かすべし

私が申請書を作成した2022年上半期時点では申請書を人間が作っていました。しかし、下半期からchatGPTをはじめ、GoogleやMicrosoft Edgeなどからトンデモなく賢い人工知能(AI)が出現し、今では申請書ですらAIに作ってもらえる環境が着々と整いつつあります。しかも何がすごいって、AIの作る文章がまるで人間が書いたみたいに滑らかなんです。AI黎明期のような文章のぎこちなさはもう見られず、私の書く文章よりよっぽど綺麗で文法的に正しいから困らされます…笑

申請書作成にチャット型AIを利用する流れはおそらく加速する一方でしょう。しかし、作成を全てAIにぶん投げていると足元をすくわれる可能性も。AIの出力する文章って確かにかなり読みやすいのですが、まるで息を吐くかのように平気でウソを話すんです。出力された文章がホントかウソかを正確に見極めねばなりませんし、科学的に明白なウソを見逃しちゃった場合、審査員さんに(AIを使ったんだろうな)と見透かされて低評点を付けられかねない。自分の命運をAIに委ねるのはすごく危険だと思います。AIを使うにしても部分的な活用に留めておくのが吉でしょう。

私は学振DCの申請書を【審査員さんへのラブレター】と位置付けていました。(自分はいまこんな事を考えています。こんな事をやったらきっと社会にこんないい影響をもたらすからお金ちょうだい🙏🏻)と思いの丈をぶつけたのです。恋文である以上、読む人ファーストで綴ります。

  • 読みやすいか?
  • 分かりにくくないか?
  • 誤植はないか?

など、何度も読み返して思いの通じる表現を求めて試行錯誤し続けたのです。皆さんが誰かにラブレターを書くとして、果たしてAIに文章を書かせるでしょうか?私は絶対に書かせません。だってソレではラブレターに想いを込められないし、起伏のないのっぺりとしたつまらない文章になっちゃうから。恋文には人間臭さが絶対不可欠。隠そうとしても隠しきれない人間味が相手の心を動かします。人間が文章を書いていると、AIには出せない人間臭さを意図せず醸し出せるのです。皆さんにはイケメン/美女な審査員さんを空想し、口説くつもりで申請書をお書きになるようお願いします。

かめ

と、彼女のいない私が言ってもあまり説得力がありませんね…泣

最後に

学振DC1の申請書を書く際に私が気を付けたポイントは以上3つ。まとめると、

  1. 審査員は忙しい。読む気の起こる、パッと見ただけで内容を把握できる構成に
  2. 審査員と申請者とで専門分野が異なる可能性も。高校生にも分かる程度に専門用語を減らした文面に
  3. 自分の言葉で書き記そう。申請書はラブレターだから、人間が醸し出す人間臭さでもって審査員の心を動かすべし

このような形になります。

学振DCの内定の可否は博士課程在籍中のお金の問題に大きく影響してきます。本記事を参考に申請書を作成し、内定を掴んで頂ければ幸いです(*≧∀≦*)

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