博士課程へ在籍していたとき、日本学術振興会特別研究員DC1として活動していました。あてがわれた研究費は年間140万円と、採用者の中でもトップクラスの額です。DC1申請前までに筆頭論文を三報出版済みでした。学振DCの審査では、審査において、業績面を高く評価していただけたものと捉えています。
そんな私がD1前期に「若手研究者海外挑戦プログラム(以下、若手海外)」へ挑戦し、残念ながら落ちてしまいました。この記事では、学振DC1内定者が若手海外に応募した末路を記します。
かめそれでは早速始めましょう!
海外留学資金上乗せのために申請


私が若手海外へ挑戦しようと考えたのは、留学資金を増やしたかったからです。
D1後期にイギリス留学する予定がありました。渡航期間はおよそ半年間の予定です。イギリスは物価が高いことで有名な地域。なんでも、日本とは比にならぬレベルで高いらしい。ネットで調べてみたところ、月々の家賃がシェアハウスでも10万円以上! 12~15万円ぐらいが相場のようで、円安だと20万円を超えるケースもあるようです。
学振DC1としていただける科研費は、留学中の宿泊費として使用できます。自分に一日何円かの手当を設定して、それを衣食の充実に充てることも可能です。
しかし、私は危惧しました。イギリスの物価があまりに高すぎて、学振DC1の科研費だけでは不足してしまうのではないか、と。もしも、もしもですよ。生活原資が底を尽きて帰国せざるを得なくなったら悲しすぎませんか? 自分の研究力不足で通用せずに帰るならまだしも、お金の問題で留学先にて苦労するのは避けたかったのです。
若手海外に採用されれば、留学資金を100万円以上も上積みできます。学振DC1は次年度の科研費を繰り上げ使用可能で、次年度部門使えば、留学中に400万円近く[140万円/年×2年+100万円] のお金を使えることになります。さすがに400万円もあったら大丈夫です。イギリスでも、アメリカのニューヨークでも、たいていの地域で半年は暮らせるでしょう。若手海外に採用されれば、お金にまつわる懸念を完全に払拭できる。そうである以上、挑戦しない手はありません。
悲観的シナリオを考えてみましょう。もし、若手海外に不採用だったら。仮に落ちてしまったら、留学資金がやや不足してしまうかもしれません。
日本とイギリスの往復渡航費が25万円です。向こうでの宿泊費で約100万円。食費は30万円を見ておきましょう。その他雑費で15万円、諸々の移動や旅行などで、追加で15万円ほど使うかもしれません。
それだけだったら問題ないでしょう。私の場合、滞在先の研究室へ在籍料を支払わねばなりませんでした。その額、半年分で約90万円。90万円って、何十万円ですか。考えうる出費を合計すると、約275万円になります。二年分の科研費は280万円です。科研費枠にギリギリ収まるか、収まらぬか瀬戸際の戦いになりそうでした。
若手海外に採用されれば、渡航資金を100万円も上積みできます。そのおかげで、予算に余裕をもって海外へ飛び立てるでしょう。これは是が非でも採用を勝ち取りたい。日本代表のワールドカップと同じぐらい負けられない戦いだったのです。
不採用ランクはC
申請してみて、結局どうなったか。
・・・・・・・
落ちました!
僅差で落ちたならまだ悔しがれます。私はぶっちぎりの低評価で落ちたので、悔しいどころか、笑ってしまいました。不採用ランクは堂々のC。要するに、箸にも棒にも掛からなかったってことです。C判定を突きつけられたとき、あまりに評価が低すぎて、再挑戦する気にもなりませんでした。
「不採用ランクC」ということで、さぞかし評点も低かったのでしょう。恥もクソッタレもありません。結果を一緒に見てみましょうか。
以下はすべて5点満点です。ちなみに、若手海外の採用率は約50%。理論上、評点で3以上を獲得できれば、内定はほぼ間違いありません。





挑戦性・進展性、3.25!



悪くないな
「学振特別研究員として遂行する研究の一環として行う」感が強すぎたのはよくなかった。若手海外へもっとリスペクトを払うべきだった。特別研究員としての研究とは別の、若手海外申請書内だけで独立した研究内容を記せばよかった



研究計画、3!



まぁ、そんなもんかな
海外留学中にできることなんて限られている。できもしないチャレンジングな計画を書いて出しても現実味がないでしょ。留学中にやり切れそうなことしか書かなかったから、評価が平凡でも仕方がないかな



研究者としての能力・将来性、3.75!



おっ、思っていたよりも高い!
チェックポイントは、自己評価欄と業績なのかな。自己分析では乗馬の話をした。他の人にはないユニークなエピソードを語れた。業績は、申請時点で筆頭論文が四報あった。若手海外の競争相手は博士学生全員とポスドクだけれども、彼らと業績でほとんど対等に殴り合えたのかな



そういえば、今のところ全部3以上やん。コレ、受かるんちゃう? 受かるよな。だって、若手海外は3あれば通るんやもん。平均以上の評価を貰えれば受かる。これは採用される流れやわ。通った通った。しめしめ。イギリスに行ったら豪遊してやるぞ…



総合評価、2.5!



ん?



総合評価、、、
2.5!



…ウソやろ



2.5!



ウソや



2.5!



マジで?



2.5!



ホンマか?



2.5!



なんでや



2.5ッ!



黙れやかましいわ蒸し焼きにして食うたろうかお前



にゃん…



なんでや。なんで総合評価がこんなに低いんや
さっきまで見てきた評価は全部3以上だった。てことは、総合評価も普通は3以上やろ。総合評価って何なんや。総合評価なのに全然『総合』と違うやんか
いったい何が評価されて2.5になったんやろか。評価書? そんなに変なことは書いてない。英語力? 英検準一級でもダメなんか? 思い当たる節がない。もしもあるとすれば…学振DC1に内定したせい?



にゃん
(怒らないで…)
学振DCと若手海外プログラムの併給狙いは無理かも


私が総合評価で2.5を食らった要因は何か。
採点ミスの可能性は除外しましょう。ただの集計ミスかもしれないけれども、ヒューマンエラーの可能性を除外して考察してみます。
総合評価が2.5だった理由は「学振DC1に通っていたから」ではないでしょうか。学振特別研究員が若手海外を併給しようと試みたがゆえの悲劇かもしれません。
審査員を担う30~40代の研究者がまだ院生だったころ、博士学生に対する金銭的支援は今ほど多くありませんでした。JSTフェローシップなどありません。企業の奨学金も採用者はごくわずかだったはず。ほとんど唯一と申し上げても過言ではない支援制度が学振DCでした。もしもそれに落ちれば、在学中の苦学が決定的に。JASSOから多額の借金をしつつ博士課程へ通わねばならなくなったのです。
審査員さんの中には、金銭的に苦しい思いをしてこられた方がたくさんいらっしゃいます。中には、学生時代の借金を今に至るまで返済中の方がおられるかもしれません。そんな方にとって、学振DC1内定者のクセに若手海外に応募してきた私は強欲に映ったのでしょう。「既に十分お金を貰っているはず。それなのにまだお金を貰おうとするのか」と。もしも私が審査員側なら「けしからんヤツだ!」と腹を立てたでしょうね。総合評価で低評点をつけたくなるほどムカついたでしょう。
私の成績表を再度見てみると、総合評価以外の項目は3以上でした。そんななか、総合評価だけ「2.5」と3未満でした。この点数は、審査員のどなたかが「評点1」をお付けになった証であります。学振と若手海外の併給を試みた行為が良くなかったのでしょうね。不快な思いをさせて申し訳ありません。
てなわけで、学振DCの研究費だけで貧乏海外生活をしてきました。





















コメント