広島駅から路面電車が出てきた

広島駅がどんどんパワーアップしてきた。
数年前から広島駅の大改装が始まった。駅全体がハシゴや幕で覆われ、大仏建立のような様相を呈していた。ドリルが壁を突き破る音。現場作業員の荒い息遣い。これから天下分け目の一大決戦が行われるのだと思うと、胸が高鳴って突き破られた(死んどるやないか)。
今年の3月下旬に除幕した。覆いが解かれて姿を現したのは、とんでもない怪物だった。本当にこれは広島駅だろうか。山手線内のターミナル駅ではないのか。私の知っている広島駅ではない。広島駅というと、なんかこう、もっと野暮ったい、古色蒼然としたイメージだった。何なんだ、これは。めちゃめちゃカッコいいやないか。これで堂々と東京駅と張り合える。

シン・広島駅の雰囲気は、どこか札幌駅と似通っている。中央にデーン! デデデデーン! と大きな駅ビルを設け、横にボボボーボ・ボーボボーとした高層ビルを屹立させる。最近、この駅デザインが流行っているのだろうか。なんせカッコいいもんね。デーン・ボボボーボ・ボーボボー式ステーション。
広島駅と札幌駅を見比べてみる。やはり、広島駅の方がカッコいい。広島の方がムチっとしている。我らが広島駅の方が強そうだ。我らが札幌駅はスタイリッシュ路線。札幌駅だって素敵だが、カッコいいというよりもお洒落である。
駅に住むなら、どちらの方がいいだろうか。検討を加速させてみたところ、札幌駅に軍配が上がった。札幌駅には大きな三省堂書店がある。広島駅にも書店はあるが、コンビニより小さい敷地面積しかない。これでは本の海にダイブできない。広島駅はもう少し本屋を大きくしてほしい。マジで小さすぎ。札幌駅の唯一気に入らない所は、お好み焼き屋が存在しないこと。麵の入っていないものはお好み焼きではない。あれは小麦爆弾だ。
我らがホームステーションの生まれ変わった姿に、遠くから目を細めていた。これで広島も転出超過が止まる。東京や大阪から人が集まってきて、ちょっと集まりすぎて、もういいですっていうぐらい来て、どこのアパートも人でパンパンになって、屋上まで人で溢れかえるようになるだろう、と。これは決して笑い事ではない。もうすぐ現実になろうとしている。
なんせ、広島駅にはミナモアがある。あんなに多機能な駅ビルは他にない。ミナモアへ行けば何でもできる。バク転宙返りだって、月面宙返りだって、映画視聴や食事もできる。おまけに、ミナモアにはホテルもある。宿泊さえ可能。ミナモアで寝れば、翌朝には広島空港に着いている。それはまあ、そんなことは無いんだけれども、ミナモアへ行けば何でもできる。

やっぱ広島っていい街だなぁと、駅前大橋から広島駅を眺めながら妄想していた。突如、広島駅から路面電車が出てきた。
最初は見間違いかと思った。駅から市電が出てくる!? 何ということでしょう。働きすぎて頭がおかしくなったか。いや、おかしいのはもとからである。どうして市電が広島駅から出てきたのか。今までは、あんなところから出てこなかったのに。
幻覚を見ているのかと思って、市電の行き先を確認してみた。グリーンムーバーは言う。「俺は広島港に行く」と。グリーンライナーはこう言った。「ワシゃあのぉ、八丁堀とニシヒロを通ってのぉ、宮島口まで行くんじゃ」。ちょっと何を言っているか分からない。彼らは正規路線ということか。
iPhoneで調べてみた。広島駅では8月初旬に市電の新路線【駅前大橋線】が開通したらしい。今まで地上の広島駅を起点としていたのが、空中を起点に発射するようになった。街のど真ん中を市電が貫いて、お客さんを市内まで大量輸送できるようになった。これは、すごい。生まれたての赤ちゃんが開口一番「天上天下、唯我独尊」とドヤ顔で言い放つようなものだ。
乗ろうか乗るまいか、本気で迷った。乗ることにしたが、あまりの行列の長さに難なくはじき返された。新線に乗るのは、開通フィーバーが落ち着いてからにしたい。
ああ、早く乗りたい! 行列には敵わない。これだからもう、一生ディズニーランドに行けないままなんだ。

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