TOEICとは何か

大学時代から、昨日より少しでも良い自分であろうと心掛けてきた。一日一善を基本とし、ご飯は二膳、筋トレは日に三度行ってきた。勉強に関しても余念なく進めている。専門の電気化学は、教科書が擦り切れるまで読み込み、ある程度習熟した。AIが汎用ツールになった今の時代、わざわざ専門バカになっても仕方なかろう。地動説を覆すための天体観測はもちろん、投石の角度と飛距離の相関関係を、実機試験×量子力学的考察の二本柱で河川敷にて探求している。
サラリーマンになると、多くの人は気が緩む。テキトーに過ごしていても毎月お金が入ってくるせいか、学生までは抜群に優秀だった人間も呆気なくだらしなくなる。キリっとしていた好青年も、JTCで過ごせばものの数年でぽんぽこりんに。「いまのままではいけないと思っている。だからこそ、いまのままではいけないと思っている」と思っている人はごくわずか。残念ながら、自分の理想像に掲げたい先輩社員は見当たらない。
私は入社式当日に決心した。何があっても自己研鑽し続ける、と。札幌時代に積み重ねてきた鍛錬を、そのままの勢いで広島でも継続する。自分はぽんぽこりんにはならない。ぽんぽこりんになどなってたまるか。大学入学直後の自分に顔向けできる自分であり続けてやる。現状維持を衰退と捉え、どれだけ僅かでも何かしら進歩してみせる。
自己研鑽にうってつけなのが語学。語学には明確な終わりが存在しない。日本語だけでも無限に上達できる。英語をはじめ、外国語も扱うとなれば、やれることは星の数ほどある。知らない単語を覚えたり、知らない国の言語に触れたりすれば、より重層的な価値観を築ける。そのうち地動説の誤りにも気付くだろう。スワヒリ語さえ覚えられればパラレルワールドと交信できるようになるのにな。
守備範囲を広げすぎると、何も身につけられぬまま時が過ぎてしまう。まずは日本語を極める。次に英語。それから第二・第三外国語へと進んでいくのがいい。私は日本語話者として28年過ごし、近代日本語の開祖たる夏目漱石の全集を二度完読した。もう、さすがに日本語は良いだろう。次は英語に触手を伸ばす。英語力をいまの日本語レベルまで高められたら、その後はスペイン語習得に移って、いよいよ大航海時代に打って出ようと思っている。
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語学は定着度を測るのが難しい。何となくできるかなぁ、といった感じの定性的な評価になる。定性的評価は甘くなりやすいうえ、人によって千差万別である。自分の真の姿を見誤れば、語学力はなかなか伸びないだろう。また、語学はモチベーション維持が大変だ。仕事で必要ならばともかく、日本人相手の職場なのに外国語を勉強するのは大義に欠ける。
そこで、TOEICの助けを借りることにした。何か月か後のTOEICにエントリーしておき、そこで高得点を取るために勉強していった。TOEICならば実力をスコアで定量評価できる。実力が700点レベルならスコアも700点前後になるだろうし、893点レベル(ヤクザ)ならば893点になって、ついでに出禁になる。TOEICスコアはキャリアアップにも効く。弊社では管理職昇進に500点が要る。グローバルに商売している日系企業なら足切りラインが800点。いま、TOEICのハイスコアを持っておいて損はない。TOEICで900点取れれば投石研究が一段と加速する気がする。
TOEICとは何か。それは非常に難しい問いである。
ある人はTokyo Oden Empire Is Coming!(東京おでん帝国が攻めてくる!)と主張している。またある人はTraining Over Ego, Internal Conquest(己のエゴを超えて鍛錬せよ)と言っている。なかなか手厳しい。別の人はTempura Over Economic Indicators and Currency(為替より天ぷらの揚げ具合が気になる)と言っていた。分かる。私はToughness Overcomes Every Impediment with Consistency(困難を打ち破るのは、日々の継続である)の説を提唱したい。
いずれにせよ、TOEICは多義的存在である。その解釈があまりに重層的すぎて、TOEICについて、丸の内オフィスで日々サディスティックな議論が交わされている。日本トップクラスの頭脳を寄せ集めて”朝までそれ正解”をやっても結論が出ない。PDCAサイクルをドラム型洗濯機レベルで超高速に回せど、何の効果もないらしい。困りかねた会社上層部が外資コンサルまで招聘する事態となっている。
何でも、TOEICにはリスニングとリーディングの二種目があるらしい。リスニングでは、一度だけ読まれるスクリプトを頼りに、正解に最も近しい選択肢を選ぶ。正解をマークすれば5点貰えて、不正解になれば次回の受験料が5円上がる。リーディングでは、文法問題や穴埋め問題や長文読解を課せられる。正解をマークすれば5点貰えて、不正解になれば次回の受験料が5円上がる。わざと不正解を選んだ不届き者は、受験料が5%も値上げされる。資格試験とはいえ、なかなか油断ならない。在宅業務中に四股を踏みまくっている私も、さすがにTOEICは真面目に受けようと決心した。
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