広島生活春夏秋冬vol.16 一年目・2月編|TOEICフラペチーノと春闘カツカレー交渉における朝三暮四型サルの非線形応答

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春闘

大企業には労働組合がある。普段から一生懸命働く我々を生温かくサポートしてくれる。普段は影が薄い一方、何かが起これば途端に存在感を増す。高市さんのように働いて×5していたら「そんなに働いてはいけません!」と歯止めをかけにくる。勤怠届に少しでも怪しい所があれば、「ちゃんと時間通りに就業してくださいね?」と現代サッカーよりも厳しくハイプレスしてくる。

大学時代は働かなければ怒られていたが、会社員になった今では働きすぎると労組に怒られる。ちょっと何が起きているのか分からない。働いた方がいいのか、働かない方がいいのか。いや、働くのは働くのだけれども、働きすぎてはいけないって、加減が難しすぎやしないか。骨の髄までハードワークが染みついている私には、セーブして働く感覚がイマイチ分からない。頑張るか・めっちゃ頑張るかの二択しかない。それだと会社員は務まらぬのだろう。

資本主義社会において、社員は資本家の駒にすぎない。地球に居る限り、r > gの原則からは逃れられず、労働階級と資本階級の格差は永遠に拡がっていく。河上肇の貧乏物語よろしく、放っておくと労働環境はますます劣悪になる。労組はそこに待ったをかける。「資本家になれないのならば、せめて幸せな労働者になろうぜ」と、快適な働き場を用意してくれる。

組合員たる我々社員は、毎月給与の何%かを労組に上納している。社員食堂のカツカレーは、組合費のおかげで今日も味が保たれている。もし、組合費の供給が途絶えれば、カツカレーを頼むと豚がそのまま出てくるだろう。調理師から「それぐらい自分で調理してください」と言われて、豚と一緒に「どうしたものかねぇ…」「ぶっぴぃ!」と家に帰ることになる。要するに、組合費はカツカレー。健康で文化的でファンタスティックなカツカレーのため組合費を支払う。

・・・・・・・

労組にはふたつの役割がある。ひとつは、先述したカツカレーのメンテナンス。表にはなかなか出てこない極秘業務だが、非常に重要な業務であることに間違いはない。普段の仕事がどれほど辛くても、カツカレーを食べれば ぽんぽこりん になる。ぽんぽこりんなら仕事も楽しい。パソコンをタイプする手も弾んで、文字化けしたのかと見紛うほどとんでもないミスタイピングを繰り返す。

労組にはカツカレー保守業務と同じぐらい重要な業務がある。それは、年に一度、会社にカチコミに行くことである。

労組は会社の首脳陣を相手に仁義なき戦いを演じる。「おらぁ、今年も分かっとるじゃろうの? ほな、よろしく頼んだで👍」と伝えにいく。カツカレーとカチコミ業務のウエイトは半々だという。我々組合員は労組にカチコミしてもらうためにお金を払っているといっても過言ではない。

労組は経営層に対して「給料を上げてくださいよぉ~」と にぎにぎ する。給料を上げてくれなきゃ、やる気が出ないじゃないですか。私たち、やる気が無ければ働けないんです。我々が働かなきゃ皆さん困るでしょ? 会社が回らなくなっちゃうもんね。ね? ね? 分かったでしょ。だから給料を上げてくださいよぉ~。

首脳陣も歴戦の猛者である。組合員の痛い所を容赦なく突いてくる。「別にアンタが働かんでも困らんよ。働きたい人は他にもおるけぇのぉ。辞めたけりゃ辞めんさい」とナウマンゾウの如き堂々たる返事。内心、経営層も冷や汗ドロドロである。社員に本当に辞められると困ってしまう。昨今の人手不足の影響は大企業にも波及している。どれだけ求人を出せどもなかなか相応しい人材が集まらない。せっかくコストを払って採用したのだから、数年間は勤めてもらわねば。

ここに労組と経営陣のチキンレースが幕を開ける。絶対に給与を上げさせたい労組vs.絶対に給与を上げたくない経営層。893ならいきなり抗争が始まる。広島は893の街。弊社にも抗争があると思われている。全然違う。大変遺憾である。大人なのだから、膝と拳を突き合わせて話し合う。どこまでなら互いに妥協できるか。カツカレーもカツ抜きで済ませられるか、いやアジフライに換えるか、いっそエビの尻尾揚げで手を打つか。

話し合いに話し合いを重ね、話し合いを加速していく。吟味に珍味をサンドイッチし、エビフライを犠牲フライに、マックのダブルチーズバーガーはお好み焼きサディスティックに換える。首脳陣が賃上げを渋ったら、「休んで休んで休んで休んで休んでまいります」と徹底的な休戦攻勢。ここは大学ではない。社会である。学位を人質に取られることなく、人間としての権利を主張できる。

インフレ時代に賃上げ無しだと、生活は苦しくなっていく一方である。それに、同業他社も他の業界の会社もガンガン給与を上げている。弊社だけ給与を上げなければ、他者と益々差がつき、人材が逃げていく。弊社が苦しいのは分かっている。グローバルでの競争激化に伴い、営業利益は縮小傾向にある。それでも賃金を上げねばならない。設備投資と同じぐらい人間にも投資する姿勢を見せねばならない。

・・・・・・・

初旬、春闘の要求案がまとまった。今年は昨年度よりも多い2万円弱のベースアップを求めるようだ。2万円って、何万円よ。2万円は2万円でしょ。いったいイワシ缶を何個買えるんだ。うまい棒なら、海外旅行用スーツケースに収まり切らないほど買える。さすがは我らが労組。よくやってくれた。よく2万円もカチコミに行ったな。

もしも給与が2万円上がれば、手取りは1.2万円ほど上がる。そうなれば年間で14.4万円増える。いったいイワシ缶を何個買えるのだろうか。いっそサバ缶にグレードアップして良いかもしれない。毎日、伊藤食品あいこちゃんのサバ缶190gを食べても、余裕でお釣りが出る。

イワシにはほんと申し訳ないのだけれども、ぶっちゃけ、イワシよりもサバの方が好きなんだよな。サバの方が肉厚だし、脂身がしっかりとしているし、くどくなくて、頭の中に太平洋を思い描きやすい。私がM1の頃から日本近郊で海水温が上昇し始めた。それに伴いサバ缶の値段が上がり、仕方がなくイワシ缶に切り替えた。本音を言えばサバの方がいい。サバを愛し、サバに愛された男が、サバを読んで仕方なくイワシを食べている。

ちなみに、イギリス留学中に食べた現地のサバ缶はクソマズかった。なんであんなに生臭くできるのかというほど臭くて、食べきるのがやっとの有様だった。イギリス留学中はほぼ無臭の鮭缶で生きていたが、日本に帰ったら元の味が恋しくなってイワシ缶スタイルに戻した。

ベースアップの要求額に喜んでいたが、ボーナスの要求額は0.何か月分か減らすらしい。マジかよ。それじゃあ給料変わらないじゃん。

中国は宋の時代、ある男がサルを多頭飼いしていた。男はサルに「朝にドングリ3つ。夕方に4つでどうだ」と言ったら、サルたちは「ふざけんじゃねぇぞ」と怒った。そこで男は「じゃあ、朝に4つ、夕方に3つでどうだ」と言った。するとサルは大喜びした。どちらも合計は7つで同じ。サルは見かけの数字に騙されてしまった…

これは朝三暮四の語源となった逸話。弊社で起きているのも同じことかもしれない。

当然、私はサルなので、ベースアップしてくれたら大喜びする。私と一緒に入社した同期も同じぐらい喜ぶと思う。冷静にホモ・サピエンスの頭で考えてみると、給料はそんなに変わらないと気付く。むしろ、年間給与を計算してみれば一年目よりも減る可能性すらある。来年度は住民税の支払いが本格化し、独身税や森林環境税の徴収も始まる。手取りは確実に減るだろう。

個人的な願望を述べるならば、労組にはカツカレーのカツのボリュームアップを頑張って頂きたかった。給与がどれだけ少なくとも、カツカレーさえ旨けりゃ我慢できる。努力と筋トレとカツは裏切らない。カツはいかなる経済理論をも超越している。カツ>>>>>r>gである。オルカンもS&P500も肉厚のカツには敵わない。

どうか来月には、食堂のカツカレーが少しでも豪華になっていますように。

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~COMING SOON~

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