北大総合理系あるある入試編

目次

数学重点プレイヤーはギャンブラー

北大総合理系には、試験の配点を自分で選べる独特の制度があります。数学が得意なら数学重点、物理に自信があるなら物理重点、化学で勝負したいなら化学重点といった具合に、得意科目の配点を上げて勝負できるのです。この制度、一見すると受験生に優しいシステムに思えますよね。

なかでも数学重点は、450点満点中なんと200点が数学に割り振られる、最も傾斜のきつい選抜群。全体の約44%が数学で決まるわけですから、数学が得意な人にとっては夢のような制度に見えることでしょう。「俺は数学で無双するんだ」「私の数学力を見せてやる」と意気込む受験生も少なくありません。

しかし、ちょっと待ってください。冷静になって考えてみましょう。

数学は恐ろしい科目です。計算ミス一つで雪崩のように点数が失われていく性質があります。最初の計算を間違えると、その後の計算も全部間違える。ちょっとした論理の繋ぎミスから芋づる式に点数を失っていくのです。しかも、二次試験本番は緊張するし、いつもの力が出せないことも珍しくありません。模試では満点近く取れていたのに、本番では手が震えて計算ミスを連発……なんてことは、受験あるあるの定番中の定番です。

つまり、数学重点とはハイリスク・ハイリターンの極みなのです。うまくいけば他の受験生に大差をつけられますが、失敗すれば一気に奈落の底。まさに天国か地獄か、というギャンブル的な選択といえます。

それでも数学重点を選ぶ人は、もはやギャンブラーと呼ぶほかありません。いや、むしろギャンブラーだからこそ数学重点を選ぶのかもしれません。彼らの背中には、競馬で三連単を一点狙いする勝負師と同じオーラが漂っています。勝負の世界に安全策などないと言わんばかりの覚悟が感じられるのです。痺れますね。

数学重点を選んだ皆さん、あなたたちの勇気に敬意を表します。どうか本番で計算ミスをしませんように。心からお祈りしております。

散々悩んだ末、結局「総合科学」を選びがち

さて、そんな魅力的な重点制度がある総合理系ですが、実際のところ、受験生はどのような選択をするのでしょうか。

受験生は悩みます。それはもう、ものすごく悩みます。たけのこの里か、きのこの山か、どちらにするかといったレベルではありません。なんせ、選抜群選びには人生が掛かっています。数学重点で攻めるか、物理重点で勝負するか、それとも化学重点か。自分の得意科目は何か、本番で実力を発揮できるのはどの科目か。

過去数年間の合格最低点や倍率を俯瞰しつつ、検討に検討を重ね、検討を加速する。過去問を解き直し、先生に相談し、友達と議論し、親を論破し、夜も眠れないほど悩み抜いて、最終的に「やっぱり総合科学にしよう」と決断する。

総合科学とは、特定の科目に重点を置かない、均等配点の選抜群。傾斜配点だった重点系に対して、総合科学はバランス型。総合科学であれば、たとえ一科目で失敗しても、他の科目でカバーできます。数学で大コケしても、理科で挽回すればいい。英語が思ったより難しくても、他の二科目でなんとかなる。

「重点をかけて勝負するぞ」と意気込んでいたはずなのに、出願直前になってビビッて「いや、やっぱりリスクは避けたいな…」と心変わりする。これ、北大総合理系受験生あるあるの代表格ではないでしょうか。人間、いざとなると保守的になるものですから。

筆者も例に漏れず総合科学で受験しました。自分は化学が得意だから化学重点でと一瞬考えたものの、「ちょっと待て、本番で失敗したらどうする」とリスクを重く見たのです。結果的に総合科学を選びましたが、重点科目で失敗したら終わりというプレッシャーとは無縁で、かなり気楽に試験を受けられたのを覚えています。

二日前に札幌入りして、ひたすら時間を持て余しがち

2月下旬の北海道は、容赦なく雪が降ります。本州の人間には想像もつかないような大雪が、当たり前のように降り積もるのです。雪というよりブリザードでしょうか。雪が好きな人でも雪嫌いになる。来る日も来る日も雪が降り続けて、もうえぇわと言ってもまだ降っている。

大雪になれば交通の便が乱れます。飛行機は欠航しますし、JRも運休や遅延だらけに。交通機関が完全に止まる日も珍しくありません。

皆さんに知っておいていただきたいことがあります。どれだけ勉強を頑張っても、試験会場にたどり着けなければ合格できないんですよ。基本的に再受験は行われません。「雪で飛行機が飛ばなかったので試験を受けられませんでした」なんて言い訳は通用しない。受験は受けに行くところから始まっています。

そのため、北大受験生の間では「入試2日前には札幌入りせよ」というのが鉄則になっています。何があっても試験会場にたどり着けるように、余裕を持って現地入りする。

ところが、2日前に着いたはいいものの……特にやることがない。ホテルで勉強しようにも、なんだか落ち着かない。見知らぬ土地の見知らぬホテルで、いつもと違う環境で、集中して勉強できるわけがありません。

かといって、外に出ようにも、雪や寒さで出る気が失せる。マイナス10℃の世界で長時間の散策は自殺行為です。5分も外を歩けば、顔が痛くなってきます。10分歩けば、手足の感覚がなくなってきます。観光どころの話ではありません。羊ヶ丘にクラーク像を観に行けば、歩いている途中で身体が固まって、自分まで銅像になりますよ。

結局、ホテルで無駄に緊張しながらダラダラとテレビを見たり、スマホをいじったり、ベッドでゴロゴロしたりして時間を過ごすことになります。こんなことしてていいのかなとか、もっと勉強した方がいいのかなと焦る反面、でも今さらジタバタしても仕方ないしと半ば諦め、投げやりになる。2日前から試験の朝まで、なんとも言えない気持ち悪さを味わいながら過ごす時間が流れていくのです。

これから受験する皆さんへのアドバイスとしては、試験前にサクッと目を通せる薄めの参考書を持っていくといいかもしれません。英語なら英単語帖、数学なら入試問題集などがいいでしょう。今まで使い込んできた参考書をパラパラめくって、「自分はこれだけやってきたんだ」と自信を取り戻す時間にしていただきたいです。

雪道で滑りまくって、縁起が悪いことこの上なし

北海道の冬道は曲者です。本州の道路とは質が異なります。

雪の上は当然滑りますが、特に危険なのは歩行者に踏み固められた路面です。多くの人が歩いた後の雪道は、表面が固く圧縮され、ツルツルのスケートリンク状態になっています。北大メインストリートを滑ってみると、トリプルアクセルできそうな気がしてきますよ。やらないでくださいね。たぶんケガします。どうせやるなら試験が終わってからにしてください。

さらに厄介なのが、アイスバーン。前日に気温が上がって雪が溶け、夜のうちに凍結すると、道路が完全に氷の状態になります。アイスバーンの上はね、もう、どうやっても滑ります。気合いとか愛とか勇気とかではどうにもならない。スランプに陥ったお笑い芸人ぐらい滑って滑って滑りまくる。よしもとクリエイティブ・エージェンシーへの再入学が必要なレベルです。

何をやっても滑る。ネットで調べた雪道の歩き方を実践しても、やっぱりズルズルと滑る。そして運の悪い人は、派手にこけて尻もちをつきます。試験前日にこけるだなんて、縁起が悪いにもほどがありますよね。「いま、滑ったよね….」と不吉な気持ちに苛まれることになるでしょう。

皆さん、どうか安心してください。滑ったんじゃなくて、ちょっとバランスを崩しただけです。滑ってこけても「危なかった~、もうちょっとでこける所だった~」と平気にしていればいい。

ちなみに、アイスバーンの上では、北海道民でも普通に滑るし、こけます。私も北大で学部から博士まで八年過ごしましたが、毎年冬に滑って尻もちをついていました。冬用ブーツを履いていても、滑り止め付きの靴を履いていても、あまり意味はありません。滑るときは滑る。こけるときはこける。自然の摂理として受け入れるしかありません。

受験生の皆さん、雪道で滑っても落ち込まないでください。あなたが悪いのではありません。雪が悪いのです。道が悪いのです。滑っても試験に滑るわけではありません…… おそらくね。

恵迪寮かビッググリーンに道案内されがち

北大札幌キャンパスはとにかく広い。広いどころではありません。とてつもなく広いのです。

どれくらい広いかというと、端から端まで地下鉄3駅分あります。エスコンフィールド約38個分もの敷地面積を誇ります。日本でも五本の指に入るほど広大なキャンパスですし、ちょっとした町がすっぽり入ってしまうほどの規模だと思っておいてください。

東西の幅はそこまでではないのですが、南北の長さがとんでもない。北の端から南の端まで歩こうものなら、ちょっとしたハイキングになります。しかも冬は雪で視界が遮られ、どこに何があるのかサッパリ分かりません。

そんな広大なキャンパスで、初めて来た受験生が試験会場にたどり着けるでしょうか。見渡す限り一面の銀世界で、目印になりそうな建物も木も雪に埋もれて見当たりません。地図を見ても、現在地がどこなのかわからない。もはや自分が札幌にいるのか、シベリアにいるのかさえ区別できない。「試験会場はどこですか」と聞き回りたくても、周りは知らない人だらけ……

そんなとき、救世主のように現れるのが、現役北大生たち。例年、受験数日前から受験生を案内してくれる先輩が道端に立っています。特に有名なのが「恵迪寮(けいてきりょう)」の寮生と、アメフト部「ビッググリーン」の部員たちです。彼らの姿は毎年見かけます。キャンパス内の要所要所に立ち、迷える受験生たちを試験会場まで丁寧に案内してくれるのです。恵迪寮の方なんて、素足に下駄を履いて待っていてくれています。寒くないのでしょうか。こちらの方が心配になります。

せっかくなので、道案内してもらいながら北大生活のことをいろいろ聞いてみるのもおすすめです。授業はどんな感じですかとか、サークルは何がありますかとか、恵迪寮ってどんなところですかなど、気になることを聞いてみましょう。先輩たちとの会話で緊張がほぐれ、リラックスして試験に臨めるようになりますよ。

なお、「単位、取れてますか?」とは聞かないようにしてあげてください。傷口に塩を塗られた先輩方が泣き出してしまうかもしれません。

試験会場、暑すぎる問題

北海道の屋外は氷点下。冬将軍が張り切っている日はマイナス10℃を下回ることも。安心してください。屋内は暖房が効いています。試験会場はポカポカとしています。受験生が寒さで凍えないように、大学側も万全の態勢で臨んでいるのです。本当は試験監督の先生が寒がりだからかもしれませんが、温かいぶんには受験生にも支障ないはずなので大丈夫です。

ここでひとつ問題があります。暖房が、あまりに効きすぎています

冷蔵庫よりも寒い屋外から試験会場に入ると、そこには25℃近い常夏のパラダイスが広がっています。北海道なのに沖縄。いや、グアムかもしれません。雪国の中に南国がある。ローマの中にバチカン市国があるようなものです。屋外と屋内の温度差は、実に30℃以上。頭が痛くなる方がおられるかもしれません。体がビックリして当然です。

受験生は席を受験番号順に割り振られます。教室の最前列になる方もいれば、ドアのすぐ近くになる方もいる。もちろん、ストーブの近くになる人もいるでしょう。熱源の近くに席を割り当てられた方は、体感温度が30℃を超えるかもしれません。灯油ストーブがガンガンに焚かれた教室の中で、汗を拭きながら試験問題と格闘する。テスト中にハーゲンダッツのチョコレート味が食べたくなるほど暑いですから。

外の寒さばかりに気を取られて行ったら、部屋の中の暑さにやられてしまいます。ヒートテックを上下しっかり着込み、セーターを重ね着し、ダウンジャケットを羽織ってきた受験生は、試験中に汗だくになること請け合いです。これぞ、北大入試の罠。暑くて集中できない。汗がしたたり落ちて、脱水症状になって、問題が頭に入ってこない。

これから受験する皆さんは、体温調節しやすい服装で臨むことを強くおすすめします。脱ぎ着しやすい服を重ね着して、暑くなったら脱げるようにしておくのがベストです。着脱の難しいインナーにヒートテックを着ていくのは避けた方がいいかもしれません。

理科終了後、謎の待機時間が長すぎる

全ての試験が終わりました。皆さん、おめでとうございます。「終わった!」「自由だ!」と叫びたい気持ちでいっぱいでしょう。勉強頑張りましたもんね。長かった受験勉強の日々を思い返すと涙腺が緩みます。気が早い方は理科の途中でもう泣きそうになっているかもしれません。全てから解放される瞬間がすぐ目の前まで来ていますから。

ところが、北大入試では最終科目の理科を終えた後、受験生は30〜40分ほど教室で待たされます。早く帰りたいのに帰らせてもらえない。

なぜ、こんなにも待たされるのか。理由は、受験者ごとに選択科目が異なるため、監督官が解答用紙を科目別に仕分けする時間が必要だからです。物理選択の人、化学選択の人、生物選択の人……それぞれの解答用紙を分類し、枚数を確認し、きちんと整理する必要があるのです。

まあ、理屈は分かります。我々の人生がかかった大切な解答用紙ですから、きちんと管理していただかねばなりません。

わかりますが、この待ち時間が地味にしんどい。もう試験は終わったのに、まだ解放されない。早く外に出たい。早くこの緊張感から逃れたい。早く雪合戦がしたい。早く恵迪寮生と かまくら を作りたい。やりたいことが沢山あるのに、なかなか外に出させてもらえない。我々は、ただ椅子に座って、ぼんやりと待つほかありません。

「まだですか、もうちょっとですか」「僕も手伝いますから点数を上げてください」などと心の中で何度もつぶやく。ソワソワしてどうにも落ち着かない。周りの受験生も同じような気持ちなのでしょう。教室内には妙な空気が漂っています。終わった安堵感と、まだ解放されないもどかしさが ない交ぜになった、不思議な雰囲気です。

もう待ちくたびれたと思った頃、ようやく「試験はこれで終了です。お疲れさまでした」と解放されます。嬉しくてはしゃぎたいのはよく分かりますが、どうか足元に注意してお帰り下さい。

なお、試験終了直後の地下鉄南北線はかなり混雑します。何百人もの受験生が一斉に最寄りの北18条駅に向かうのですから、当然といえば当然です。ホームは受験生であふれかえり、電車に乗るのもひと苦労でしょう。

札幌駅方面に向かいたい方は、無理に地下鉄を使わず、キャンパスのメインストリートを南に歩いていった方が早く着くかもしれません。20〜30分ほど歩けば札幌駅周辺に着きますので、混雑した地下鉄ですし詰めになるより快適かもしれませんよ。

最後に

いかがでしたでしょうか。

北大総合理系の入試には、独特の あるある がたくさん詰まっています。配点を選べる独特の制度、極寒の北海道、広大すぎるキャンパス、暑すぎる試験会場。どれも北大ならではの体験です。

これから受験を控えている皆さんは、この記事を参考に……というほど役立つ情報はなかったかもしれませんが、少しでも北大入試の雰囲気が伝われば幸いです。こんな感じなんだなと事前に知っておくだけでも、当日の心構えが違ってくるはずです。

くれぐれも雪道では滑らないように。いや、滑っても気にしないでください。北海道民だって滑るんですから。滑ったら「道についた霜が悪い」と責任転嫁して、何事もなかったかのように歩き続ければいいのです。メンタルの強さも受験には必要ですからね。

あとは、体調管理だけはしっかりと。せっかく2日前に札幌入りしても、風邪で寝込んでいたら意味がありません。暖かくして、しっかり寝て、ホテルの乾燥対策も忘れずに。

それでは皆さん、ご武運を。札幌でお待ちしております!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

カテゴリー

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次