研究室の『守破離』指南書 – 博士学生が教える成長の方程式

北大と国研で研究している化学系大学院生かめ (D2)です。日本学術振興会特別研究員DC1として国からお給料を頂いています。今回は、研究活動における成長プロセスについて、日本の伝統的な考え方である「守破離」という概念からアプローチしてみます。

「守破離(しゅはり)」とは、武道修行の過程を表す言葉です。修行者は、①守る→②破る→③離れるという3段階を順序立てて進んでいきます。この順序は決して前後させてはなりません。守→破→離の順に進むことで最大の効果が得られるのです。

私自身、中学・高校時代に打ち込んでいた乗馬競技で、この「守破離」の考え方に基づいた指導を受けてきました。当時は気づきませんでしたが、全国大会での優勝1回・入賞8回という成績を残せたのも、この教えのおかげだったと今では確信しています。その経験から、「守破離」は研究活動においても非常に有効な考え方になるのではないかと考え、自身の研究室生活に取り入れてみました。結果として、この方法は研究力向上に驚くほどの効果をもたらしました。というよりも、「守破離」の順序で学ばなければ、十分な成果は得られなかったかもしれません。ただ守るだけ、あるいは最初から破ろうとするだけでは、真の成長は望めなかったはずです。

この記事では、研究室に所属する学生が実践すべき【守破離】の原則について、具体的な方法とともに詳しく解説していきます。

  • 伸び悩みを感じる研究室の学生の方
  • 学生を教える立場にある研究員・教員の皆様

こうした方々にピッタリな内容なので是非最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

守の段階:基礎を築く時期

最初に求められるのは、ひたすら守る姿勢。指導教員や先輩研究者から与えられるアドバイスや指導を、素直な心で受け入れることが重要です。時には反論したくなる場面もあるかもしれません。しかし、明らかに不適切な指示でない限り、まずは従ってみることをオススメします。なぜなら、先輩研究者たちの助言には、彼らが積み重ねてきた貴重な経験が凝縮されているから。彼らもまた、幾度となく失敗を重ね、試行錯誤を繰り返してきました。その過程で得られた知見は、何物にも代えがたい価値があります。

この段階で重要なのは、研究の『型』を習得すること。実験手順、データ解析の方法、論文の書き方、プレゼンテーションのコツなど、研究に必要な基本的スキルを確実に身につけていきます。与えられた手順や方法を忠実に実践することで、研究がスムーズに進むようになるはず。時には「意外と研究って簡単かも」と感じることさえあるでしょう。それは当然かもしれません。先人たちが確立した効率的かつ確実な方法論に則って研究を進めているのですから。

破の段階:創意工夫を加える時期

基本的な「型」を習得し、ある程度の経験を積むと、次第に違和感を覚えるようになってきます。「この方法、もう少し効率的にできないだろうか」「別のアプローチの方が良い結果が出るのではないか」といった疑問が湧いてくるはずです。この感覚こそ、あなたが成長したことを示す重要なサイン。基礎的な実力がなければ、従来の方法に対する建設的な疑問は生まれません。つまり、「型」に対する違和感は、あなたが次のステージに進む準備が整ったことを意味しているのです。

ここから「破」の段階に入ります。具体的には、基本となる『型』をベースにしながら、独自の工夫を加えていくのです。実験手順の一部を改良したり、データ解析に新しい視点を取り入れたり、プレゼンテーションの構成を工夫したりと、様々な改善を試みてください。ただし、この段階での改良は、あくまでも基本の形を維持したままでの修正に留めておきましょう。なぜなら、確立された方法論を完全に無視して新しいアプローチを一から構築しようとすると、膨大な時間と労力が必要になるだけでなく、致命的な誤りを犯すリスクも高まるからです。

離の段階:独創的研究への飛躍

研究を深化させていくうち、複雑でひどくややこしい問題に早晩出くわすことでしょう。自分でアレンジした型だけでは対処困難な問題に遭遇するはず。問題の新たな解決法を自らの手で編み出さねばなりません。そこで最後に”離”の出番。着心地最高な自らの『型』を脱ぎ捨て新たな『型』を作り出しましょう

新たな『型』を作り出すのは大変。どこから作業へ着手したらいいかもサッパリ見当がつかないはず。これまで研究が順調に進んできた人ほど苦戦させられるかもしれません。与えられた『型』を使って行う活動は型の”消費”。これから行わねばならないのは型の”創造”。消費と想像は真逆の行為。消費活動に慣れていればいるほど頭を創造モードに切り替えるのが難しいはず。ここは頭をひねって頑張るしかありません。教科書や論文をたくさん読んだり教員にアドバイスを求めたりして、鶴嘴に宝石がガツンと当たるのを期待して手を動かし続けるのみ。

かめ

このように苦労して出来上がった新たな『型』が後輩へ、そのまた後輩へと受け継がれていきます。我々先駆者が味わう大変な思いの一部分を後輩に味わわせずとも済むのです

最後に:守破離の順に進んだ方が早く実力を高められる

研究活動において、「守破離」の順序を守ることは、効率的な成長への近道となります。最初から既存の方法論を否定したり、独自の方法を追求したりすることは、多くの場合、時間の浪費につながってしまうでしょう。

私自身、乗馬競技と研究活動の両方で、この「守破離」の原則に従うことで着実な成長を遂げることができました。もし今、型にとらわれない自由な研究がしたいと考えている方がいらっしゃいましたら、まずは基本に立ち返ってみることをお勧めします。

確かな基礎があってこそ、真の創造性は開花するのです。まずは「守る」ことから始め、次第に「破る」要素を取り入れ、最終的に「離れる」ことで独自の境地を切り開いていく。この順序に従えば、必ず研究者としての成長を実感できるはずです。

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