研究室生活春夏秋冬vol.42 D1・8月 懐かしい出会いに頬を緩める。親へ博士号を取るまで広島へ帰らないと宣言

集中講義

博士課程修了要件の8単位取得。通常授業での履修を避け、夏季休暇を利用して2単位の集中講義を受講した。当初は面倒に感じていたが、講義が始まると予想外の面白さに引き込まれていった。

第一線で活躍する研究者の話は魅力的だった。最新の研究トレンドを踏まえた解説に加え、講師独自の解釈も織り交ぜられ、非常に興味深い内容となった。自分もこのようなユニークな語り口で研究を語れたらと、強く感銘を受けた。胸の高鳴りが止まらないまま、講義は終了した。

学内バイトの一日

学内バイトに応募し、夏季休暇の土曜日を小学生向けイベントで過ごした。学生バイト10名中、唯一の男子として女子に囲まれる珍しい経験となった。小学生の尽きない元気に圧倒され、こちらも活力をもらった。

午前中のパラシュート製作、午後の紙ヒコーキ製作と、充実したイベントの連続だった。JALの現役CAさんやパイロットさんの講演を聴きながら、自分の幼い頃の夢を思い出した。最初は「飛行機になる」という夢を持ち、現実を知って「パイロットになる」へと変更した懐かしい記憶がよみがえった。

オックスフォードからの正式通知

オックスフォード大学の事務部から、半年間の研究滞在が正式に承認された。長い不確実な期間を経て、ようやく確定した安堵感に包まれる。2ヶ月後には日本を離れ、イギリスでの生活が始まる。まだ実感が湧かないが、実際に行ってみないと分からない。

往復渡航費は27万円で確定。加えて在籍料として月々767ポンド(約14万円、半年で84万円)が必要となる。シェアハウス代も月々10万円近くかかる見込みだ。科研費から支出するため懐は痛まないものの、立て替え払いで一時的に口座が枯渇する可能性もある。学振DC1の月20万円の収入で何とか持ちこたえられそうだが、必要に応じてつみたてNISAの一部解約も検討している。

44回目の成分献血

44回目の献血を行った。博士修了までに70回という目標に向け、着実に歩を進めている。通常の金曜日から月曜日に変更したところ、血漿と血小板の両方の採血が実現。献血センターによると、月曜は献血者が少ないため血小板採血の需要が高いとのこと。採血中の満足感に、看護師さんから「何か良いことでもあったんですか?」と声をかけられる場面も。

先輩が札幌へ遊びに来た

学部4年時にお世話になった2学年上の先輩が札幌を訪れた。会社の様子や近況報告で話が弾んだ。これまで先輩を目標とし、「先輩を超えたい」という一心で努力を重ねてきた。後輩の仕事は先輩を超えること、その信念で突き進んできた道のり。

M2の10月にビッグジャーナルへの掲載を果たし、ようやく先輩を超えられた実感を得た。その後も、先輩の到達できなかった領域を目指して研究に没頭している。今回の再会で、偉大な目標として存在してくれたことへの感謝、そして4年次の実験指導への御礼を伝えることができた。

『博士号を取るまで広島へ帰らない』宣言

博士課程の順調な進捗に、ある種の危機感を覚えた。既に修了要件を満たし、このままでは何の困難もなく2、3年が過ぎてしまう。自らに高いハードルを課すため、「博士号を取るまでは広島へ帰らない」と家族にLINEで宣言した。

帰省によるメンタルの回復を断ち切り、博士生活の困難度を意図的に上げる決断だ。退路を断って前進するのみ。この覚悟で初めて、自身の限界を超えることができる。

この戦いの末には完全な燃え焼きが待っているだろう。そのため、修了後はアカデミアを離れる決意を固めた。業績競争の消耗戦から距離を置き、国内メーカーでの就職を考えている。できれば地元広島、悪くても山口や岡山で技術者として働きたい。博士課程での疲労を癒し、貯金して趣味の乗馬も再開したい。実は研究よりも乗馬の方が得意なのだ。

年金支払いの重圧

学振特別研究員になって最も辛いのは年金支払いの開始だ。学生納付特例の対象外となり、毎月16,520円の納付が義務付けられている。7月から支払いを開始し、さらに取立て業者から4〜6月分の遡及納付を求められた。

3ヶ月分の5万円が一気に消えていく。将来の給付も不確実な中での支出に、心が痛む。この金額があれば3泊4日の国内旅行が楽しめたはず。せめて冷蔵庫や洗濯機を購入してからの支払いを望んだが叶わない。現在の貧しい生活状況では、この支出は大きな痛手となる。

コンビニでの支払い後、店を出た瞬間に感情が溢れ出した。「理不尽だ、おかしい」と嗚咽まじりの涙を流した。久々の激しい感情の表出だった。

同期が札幌へ遊びに来た!

修士で実社会へ出た研究室の同期が札幌を訪れた。5ヶ月程度では大きな変化は見られず、以前と変わらない調子で会話を楽しめた。仕事について尋ねると、「納期がヤバい」という本音が漏れた。

研究室では意識する必要のなかった納期が、会社では顧客との約束として重くのしかかる。新しい環境への適応に苦心しているようで、「これからもっと忙しくなる」と不安を吐露していた。

同期との仕事の話を通じて、自分だけが異なるライフステージに留まっているような劣等感を抱いた。意味のない感情と分かっていても、自然と湧き上がってくる複雑な思いを否定できない。

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