研究室生活春夏秋冬vol.53 D2・7月|身体に異常が次々と顕れる。限界寸前で英語論文を校正へ

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1日:住民税35,000円を納付(リア幸35)

成人日本国民としての勤めが始まった。

昨年4月から12月まで学振特別研究員として給与を受け取った。年間収入は月20万円×9か月=180万円。収入がある一定以上の金額を超えると居住自治体へ住民税を支払わなければならないらしい。住むだけで罰金を取られるだなんて世知辛い世の中である。初年度の住民税は年間35,000円。納付書を見たとき、一瞬、『月間』と書いてあるのかと思って「うわっ!」と声が漏れ出た。月に20万円しか収入のない人間から流石に月に3万円も税金を取らないよな。取られたら生活が破綻する。ただでさえ国民年金保険料でHPを削られているのに。

住民税は分割払いと一括払いを選択できる。税金の支払いだなんて不愉快極まりないものは一括で支払い、存在を一刻も早く頭から消し去るのが良い。銀行口座から3.5万円引き出し、コンビニで納付。コレで一件落着。来年はもっと多額の住民税を納付せねばならないのか。憂鬱だ。住民税課税世帯になったってことは、自治体からの給付金を受け取られなくなったということ。施される側から施す側へと移動。課税世帯が金銭的に特段恵まれているわけではない。非課税世帯と比べて相対的に余裕はあるが、それでも日々汲々としている。ウチの家には相変わらず冷蔵庫も洗濯機も無い。主要家電製品を有さぬ私から徴収されたお金が家電を有す人々へ分配されていくのは辛い。

3日:右耳の聴力がゼロに(リア幸30)

起床するや否や、「何かがおかしい」と気が付いた。右耳がほとんど聴こえなくなっている。目覚まし時計をいくら右耳に近づけてもアラーム音が聴こえない。左耳は大丈夫。右耳の聴力だけが失われた。いわゆる【突発性難聴】というヤツか。ストレスが過剰に与えられた際、脳の神経回路がおかしくなり、聴覚が損なわれる症状だ。

左耳は聴こえるので日常生活に支障をきたすことはない。しかし、ヘッドホンを着けて音楽を聴こうとした時、片耳だけからしか音が聞こえなくて気味が悪かった。右耳の奥から猛烈に耳鳴りがする。高周波な”キーーーン”という音が延々と鳴り響いている。コレは病院へ行くべきだろうか。放っておいたら直るんじゃないか。もう少しだけ様子を見てみよう。病を治してくれるのは薬じゃない、時だ。

幸い、翌々日には聴力が三割ほど回復した。一週間後には五割、月末には七割程度まで戻った。まぁ、大丈夫だろう。仮に右耳が聴こえなくなってもまだもう一方の耳が残されている。ジャンボジェットだって片方のエンジンが潰れても反対側のエンジンだけで航行できる。飛行機に可能な所業を万物の霊長たる人間が出来ぬわけがない。

5日

授業料支払い一年間全額免除! (リア幸35)

授業料減免申請の結果が郵送された。『支払い全額免除!』とのことだ。コレで三戦三勝。免除率は100%。今回の申請では後期の授業料支払いも審査対象となった。前期と同様、後期も全額免除。博士課程に入ってから授業料を一円も納めないまま大学院を修了できる見込みに。こうなったら授業を受けてみようかなという気になる。ゼロ円で講義を受け放題なら受けられるだけ受けておかなきゃ損だろう。後期は2~3個履修してみようかな。学部生の講義に潜ってみるのも良いかもしれない。

学振DC特別手当内定でSNSが賑わうも… (リア幸25)

学振特別研究員は本年度から、採用最終年度に特別手当として月額3万円を受け取られるらしい。今日が手当採用可否の発表日。SNSの大学院コミュニティでは『採用されたー!』『やったー!』との歓喜の声で溢れ返っていた。当サイトの学振系記事の閲覧数もこの日だけ異常に跳ね上がっていた。見てくれてありがとう。おかげで普段よりも少し多めの広告収入を受け取られた。

2024年現在、特別手当を受け取られるのは、飛び級をせず標準年限で博士課程を修了する学生だけ。DC1採用者ならD3の一年間だけ支給される。私の場合、DC1採用者だが、D2で娑婆に出ようと試みている。私のようにマイノリティな特別研究員は手当の支給対象外。当サイトの閲覧数とSNSの賑わいをよそにガックシと落胆。博士課程の最後まで月20万円生活か…

7日:帯状疱疹 (リア幸15)

突発性難聴の次は帯状疱疹 (たいじょうほうしん)だ。帯状疱疹は水ぼうそうの進化版。胸や背中、腕に大量の赤い湿疹が現れてむず痒くなってしまう。

帯状疱疹はストレス過剰の際に出現する。肉体的・精神的に高い負荷がかかったとき、免疫力が弱り、身体の奥底に隠れていたウイルスが大暴れして湿疹が浮かび上がってくるそう。コロナウイルス用のmRNAワクチンを打って帯状疱疹になった方が多くいらっしゃるそう。私は非接種者。ワクチンは関係ない。純粋にストレス過剰で帯状疱疹が出現した。ストレスの根源は研究室生活にある。研究が全く楽しくないにもかかわらず、研究を進めなければ早期修了まで漕ぎつけられない現実が辛すぎる。早く論文をアクセプトさせなきゃ。論文を出せればストレスが和らいで湿疹が落ち着くはず。指導教員の定めた早期修了要件さえ満たせればもう大学や研究所へ通う必要はない。全てから解き放たれる日を夢見て歯をくいしばって耐えるしかない。頑張るしかない。

体中に広がる帯状疱疹へ気を取られているうちに、左目の眼底まで徐々に痛くなってきた。左目の下には大きなクマが。このまま視力がなくなっていくのかな。まぁ、いいや。もう顔を見たい人なんて居ないし。

14日:福知山マラソン出走決定 (リア幸20)

11/20 (水)~11/22 (金)に京都で学会発表する運びとなった。学生最後の学会が大学受験で失敗した場所だなんて不思議な因縁だ。

本当は京大に行きたかった。でも行けなかった。病気と試験本番で犯したうっかりミスのせいで。溢れんばかりの悔しさを押し殺して北大進学。北の大地で八年間、たった一人で修行を重ねてきた。いつの日か京都でリベンジマッチをするために。勉強なのか、研究なのか、それとも趣味のマラソンでなのか知らないけれども、過去の弱い自分を超克して辛い過去と永遠に決別したかった。

せっかく京都で学会に出るのだから万全の態勢で臨みたい。京大の先生から共同研究を持ち掛けられでもすればこの上ない幸せだ。学会翌日にはフルマラソンへ出る。11/23 (土)は勤労感謝の日。福知山市でフルマラソンが開催される。京都から福知山までは特急で1時間。大会当日朝に福知山へと行くスケジュールでも号砲までに間に合う。レースが終わったら当日中に伊丹空港へ行き、最終便で札幌へと帰還する。伊丹-札幌便は研究費で乗れる。学会からの帰り道にフルマラソンを走るだけだから科研費を使って差し障りはない。マラソンの目標タイムは2時間40分。夏場にサボらず練習すれば到達可能な目標だと考えている。隙あらば2時間35分切りを狙う。自分の中に限界値を定めることなく、鍛錬し、レベルアップだけを図る。

20日:両親が札幌へ遊びに来た (リア幸21)

3月に広島へ行った際、実家で両親に「今年は最後の年やけん、一度ぐらいは北海道へ遊びに来んさい」と来道を誘った。わざわざ広島から北海道へ行く機会だなんてコレを逃せば訪れないだろう。母は私の大学入学式以来、父は人生で初めての北海道上陸だ。親ってたったこの程度しか子供の住む街を訪れないものなのだろうか。まぁ、広島から北海道まで結構遠いしなぁ。親を責める気にはなれない。自分が親なら北海道まで行くのは骨が折れるだろうし。

両親が金・土・日・月と三泊四日で北海道にやって来た。初日は移動日、二日目は積丹半島ドライブ、三日目は富良野と美瑛の観光、四日目はその辺をブラブラしたらしい。二日目の夜に札幌駅ビルで一緒に食事をした。ホタテやカキフライのジューシーさに驚いていた。両親は北海道を堪能したみたい。二人とも、気を付けて広島へ帰ってね。

26日:ゼミ発表で全く緊張しなくなった。が、 (リア幸20)

(今年度でこの研究室から離れられる) と思った途端、ゼミがあまりにどうでも良いものになってしまった。誰からどう思われようが構わない。何を言われても、詰められても、呆れられてもノーダメージ。発表で全く緊張しなくなった。多少の緊張感を持って臨んだ方が良いのは分かっているけれども、どうでも良さすぎてプレッシャーの一つも感じなかった。平常心 of 平常心。平常よりも平常だったかも。心拍数は48 bpm。発表中は終始鼓動のリズムが一定だった。

数多の論文執筆や文献調査の末、繰り出された質問の大半が私にとって既知の事項になった。既に知っている・既に考えたことのある内容が97%を占めた。質疑応答中に頭を使うのではない。思考を質疑応答”前”に巡らせておけば本番で頭を使わずに済む。毎朝30分取り組んでいる吃音対策トレーニングの効果はてき面だった。質問に対して頭が拵えた返答を吃らず円滑に言葉にできた。質問をサクサク処理していけている状況に快感を覚えた。まるで健常者だった昔の自分へと戻ったように錯覚し、夢見心地な時間だった。

31日:A報の校正へ(リア幸25)

指導教員とのディスカッションが終わり、A報の再・修正版がついに完成した。ChatGPTで英文校正。原稿を先生に渡して文章表現の確認を依頼。『校正 (会社) に出したほうが良いかもね』とのことで校正へ出す運びになった。校正に要する期間はおよそ5日。校正会社から返ってきた原稿を確認し、いざ、投稿だ。今月は校正会社へ送る所でフィニッシュ。来月初旬には投稿できるだろう。今回はビッグジャーナル行脚はしない。最初から標準的なランクの雑誌へ投稿して安牌にアクセプトを狙う。A報が無事アクセプトされれば、博士早期修了に必要な論文はあと一報のみに。アクセプトされると良いな。リジェクトされる予感がしないのでおそらく大丈夫だとは思うけれども。

研究が楽しくて博士課程へ行ったはずなのに、気が付けば論文執筆に追われ、論文を作るためだけに研究をするようになってしまった。人生を豊饒にするための手段が目的化された結果、生活があまりに辛く、面白さを何ら見出せずに困る。一刻も早く解放されたい。研究からも、業績集めからも、大学からも、研究室からも。あと半年間の辛抱だ。耐えろ。頑張れ。正気を保て。たとえどれだけ醜悪な姿にやつれ果ててでも命を懸けてフィニッシュ地点まで駆け抜けろ。

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