1. 日本の博士課程は、望めば誰でも入れる
にゃんねぇねぇ、ぼく博士になりたいんだけど、どうやったらなれるの?



博士になるには、まず博士課程に入る必要がある



その「まず」がもう難しそうなんだけど…



いや、簡単よ。行きたい研究室を決め、そこの教員に受け入れ承諾をもらって、大学院入試を受ければ入れるよ



天才しか入れない、みたいな縛りはないの?



ないない。魔法界からの招待状も来ない



ホグワーツみたいな感じかと思ってたわ。結構庶民的なのね



そう。特に、日本では博士進学する人が少ないから、入りたい人はほぼ全員入れる状態だよ



へえ~。じゃあ博士になるのって、思ったより簡単なんだね



入るところまではね



ひょっとして、出口になんかおるやろ?



博士論文と死の公聴会がある



やっぱハリーポッターじゃん
2. 修士の就職活動をスキップできる



修士のとき、就活せんかったの?



一瞬したけど、すぐ辞めた。博士に行くと決めて以降、ずっと研究してた



周りの人は、何をしていたの?



インターン行ったり、ES書いたり、忙しそうにしていたなぁ



修士で就職するんだったら、M1の夏から就活で忙しいよね。でも、博士進学するなら修士で就活しなくていいから、そのぶん長く研究できそう^ ^



そうだね、実際、修士課程二年間を研究に使えたのは良かったよ。修士って、ちょうど研究が面白くなってくる時期だし



就活はいずれやるんでしょ?
三年後とか



うん



やらなくて良くなったわけじゃなくて、後回しにしただけかぁ…



しかも三年間ずっとこっちを見ているんだよ
微妙にプレッシャーを感じるね



それはそれで怖いわ
3. 修士課程でやっていた研究を続けられる



研究をやるのって、めっちゃ時間がかかるんよ。修士まででは全然終わらない



B4から三年研究したのに、まだ終わらないの?



終わらないよ。むしろ、深く掘れば掘るほど、分からないことがたくさん出てくる。これ、なんでこうなるんだろうとか、条件変えたらどうなるんだろうって考えちゃうんだよ



全然スッキリ終わらないじゃん



やめられない★止まらない、



かっぱえびせんね



にゃん
全然終わらないから、修士論文の総括には「今後、詳細な検討が必要である」と書いて提出する



誰がやるん、その詳細な検討は



博士に進んだ人



誰?



オレ



あっ笑
4. 修士課程からテーマを変えて別分野に挑戦できる



逆に、修士までで研究に飽きたらどうするの?



研究に飽きるってことはないと思うけど、テーマに嫌気がさす人はいるかもしれない。そういう人は、博士からテーマを変える。研究室を移る人もいるよ



途中で変えていいんだね



学部から修士まで数年研究すれば、自分が何に興味を持てそうか見えてくる。今までやっていたテーマとは別の仕事をしたくなる人も現れる。今の環境じゃできないとなったら、博士進学のタイミングで動けばいい



そうかぁ
B4で研究室配属されるときって、研究のことほとんど知らんもんね



うん。論文もろくに読んだことない中で「コレ、なんとなく面白そう!」で選んだりするし。自分もそうだったから、よく分かる



一回食べてからメニュー選び直せる感じか。修士でラーメン二年間食べて、「やっぱ寿司やな」と寿司屋に弟子入りする



専門分野を昼飯みたいに変えるな



博士三年間は寿司か



どうせ食べるんだったら美味いものを食べたいし、ね
5. 学振申請書執筆を通じて研究計画力が培われる



学振って、博士の人がよく言ってるやつ?



そう。日本学術振興会特別研究員制度のこと。学振に採用されたら、月20万円以上の研究奨励金をもらえる。自分はDC1採用されたよ



で、採用されるためには何をするの?
踊るの? それとも、歌う…?



誰がPh.D.48や。アイドルのオーディションじゃないんよ
学振に採用されるには、博士課程で何を研究するか書いて出す。何をどこまで明らかにしたいか、そのために何をするか、三年分の計画を書くんだ



三年分も? 一年だけじゃダメ?



ダメです
三年分、書くの



まだ入学してもいないのに? 来年の自分が何をしているかも分からんのに? ムチャクチャだよ!



そう。来年の自分は何歳かなぁ、とか思いながら書く



進次郎かぁ
大変そう



でもね、学振の申請書を書くと、研究のことをめっちゃ深く考えるようになる。「この実験がうまくいったら次は何をする」とか、「ここでこういう結果が出たら、この仮説を確かめる」とか、普段から頭がよく働くようになる



申請書はね、書いているときは楽しいんよ。何でもできそうな気がするし



えっと、実際は?



半年後ぐらいに「誰だよ、こんな計画を立てたのは?」とキレたくなる



お前だよ
6. 修士よりも長い時間をかけて進路選びができる



博士課程まで行ったら、研究者になるしかない感じ?



いや、そういうわけでもない。研究者にもなれるし、企業で会社員になることもできる。三年間じっくり考えて、研究する中で結論を下す感じ



どういうことを考えるの?



実験するのが好きなのか、データを眺めて考えるのが好きなのか、人と議論するのが好きなのか、とかかな。修士プラス三年研究すると、自分の特性がよく見えるようになるよ



修士で就職した同期も、もう働いているもんね。「実際、どう?」って聞けそう



聞ける聞ける。研究開発をやっている人もいれば、全然違う仕事をしている人もいるし



先に世へ放った同期から情報収集できるわけか。お得じゃん♪



放ったって、何よ



三年後にボス猿博士学生が山から下りてくる



誰がサルやボケ



「ほう、世間では えくせる なるものを使うらしい」



大学にもあるわ
7. 給与を貰いながら研究ができる



そういえば、博士候補生もいちおう学生でしょ。お金はどうするの?



学振DCの研究奨励金で暮らす人もいるし、大学別の博士進学者対象フェローシップで生活費をまかなう人もいる。RA(リサーチ・アシスタント)やJASSOの奨学金で何とかする人もいるらしい。あとは、交際者のヒモになる人もいる



ヒモになれたら嬉しいけど、自分は独り身だしなぁ。となると、学振かフェローシップを頑張って取らなきゃな。研究して、お金もらって、学生なの?



そう、学生



社会人じゃなくて?



そこを突かれたら面倒なんよ



学生なんよね。仕事しとるよね。給料もあるよね



うん



何なん、お前?



自分もたまに思ってたわ
8. 三年単位で腰を据えて仕事ができる



博士課程って3年間あるんよね。そんなに長く研究する必要あるの?



あるよ。研究って、急いで答えを出そうとすると結構危ないんよ



どういうこと?



例えば、ある実験で予想通りの結果が出たとするじゃん。「仮説どおりでした、めでたしめでたし」で終わらせたくなるけど、本当にそうなのか確認しなきゃいけない



もう一回やるの?
めんどくさっ! ヤギぐらい臭いよ



条件を変えて、何回かやる。時には他の測定方法でも確かめる。「この説明で別の結果も説明できるか?」って考える。そうやって一個ずつ確かめていく。面倒くさいよ。その面倒くさいことをちゃんとやるのが研究なんよ



会社だったら、「今月中に結果ちょうだい」とか言われそう



仕事だから期限はあるよね。博士課程は三年間あるから、「この現象、まだ分からんな」と思ったら翌月も考えられるし、半年後にもう一回検証することもできる。「本当にそう言っていいの?」と、何回も自問できる



自分で自分の仕事にケチをつけまくる三年間か



言い方が悪いな



博士課程は、急がない代わりに逃がしてもくれないんだね



三年間、じっくり付き合ってもらいます
9. 指導教員からアドバイスを受けながら、みっちり修行できる



博士まで行ったら、先生に聞くことも減るんじゃない?



確かに「次、どうしたらいいっすかねぇ~」みたいな相談は減る。博士課程まで進むと、「データを見てこう思ったので、次はこの条件を変えて検証しますわ」と持って行く。相談内容が変わるんだよ



自分で考えてから相談するのね



にゃん。で、先生に「その説明だと、三週間前のこのデータと矛盾しない?」って言われる



三週間前の話まで覚えてるの?



覚えている先生は覚えている。普段の雑談なんか全部忘れていても、研究については記憶力抜群らしい。こっちが何日も考えて作った論理を、先生がものの7秒で突き崩すケースもある



先生もなかなか無慈悲だね



弾道ミサイルを飛ばしてこないだけマシ。先生とのやり取りを繰り返すにつれ、しっかり考えられるようになる。三年間、それを繰り返すんだよ
10. 20代後半まで学割が使える



博士課程って、20代後半まで学生なんよね?



そうそう。学生証も、持っているよ



てことは、てことはですよ…



なに?



もしかして、学割、使えちゃいます?



使えちゃいます。同世代の大半が一般料金を払っている横で、我々は学生料金でいろいろ楽しめちゃいます^ ^



やったにゃん!!!
じゃあ、二郎系ラーメン屋さんで学生ラーメンも食べられる?



食べられます👍



映画館も美術館も、Amazon Prime Studentも使える?



使えます👍



お得じゃん! って言おうと思ったけど、そういえば博士課程も学費を払わなきゃいけないんだったね。全然元を取れないじゃん…



気づいてはいけないことに気付いてしまったか
11. 平日も休める



博士学生って、土日は休みなの?



研究室や分野にもよるね
生物系は生き物の面倒を見るから、土日関係なく研究がある。実験予定を自分で決められる分野なら、土日休みにもできるし、フレキシブルに予定を組める。水曜を休みにして土曜に実験することもできるよ



なるほど、平日を休みにもできるのか



そうよ。例えば木曜に長時間実験するとするじゃん。この場合、水曜の午後は早めに帰って体力をチャージする選択ができる。博士課程に進むと、研究進捗の管理が学生に任されるようになるから、自分のやりたいように研究を進められるようになるよ



土日に全部詰め込まなくていいのは、なかなか助かるね



散髪も平日の昼に行けば予約が取りやすいし、人も少ない



パートナーがいるなら、平日にデートできる



いれば、ね



にゃん…
12. 平日料金で旅行できる



平日に休めるなら、旅行も平日に行けるんじゃない?



余裕で行ける。木曜まで実験して、金曜から日曜まで旅行して、月曜に研究室へ戻るとか



そんな組み方もできるのか



実験予定さえ合えばやりたい放題できる。平日は宿泊料金が下がるホテルが多いし、観光地だって平日は人が少なくて楽だよ



金曜の朝、会社員が通勤している横で旅行に行くの?



うん
いま、めっちゃ良いじゃんって思ったでしょ?



うん、思った



帰ってきたらね、現実が待っているから。論文を書いたり学会用のスライドを作ったり、忙しいんだから博士学生は



まぁ、旅行中ぐらいは夢の国に行ってもいいかぁ



たまにね、出先で先生からメールが届くんだよ。「この前渡してもらった論文の原稿を読んだけどね、」って



お風呂上がりに読んだら最悪だな



「至急打合せしたいので連絡ください」って



うわぁぁぁ~~!!



にゃーーーーー!!!!ってなるよ

















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