【超売り手市場】金属材料学専攻の就職活動あるある10選

金属材料専攻の就職活動について、ネット上に情報が少なすぎる。少なすぎるというか、ほとんど見当たらない。なぜなら、金属材料系の就活があまりに簡単で、わざわざ就活について語ろうとも思わないからだ。

楽勝だった人に体験記を書かせれば、「企業へ応募したところ、内定を得た。以上」で終わる。ここから一万字まで膨らませるには、面接会場で採用担当者と相撲を取るぐらいの出来事が必要である。相撲してこようかな、いや、やっぱりやめておいた方がいいか。

材料専攻当事者にとってはありがたい環境だが、進学先を検討加速している高校生や大学生には事情が伝わりにくい。材料系へ進んだ学生がどのように就職活動を行い、どのような会社へ入っていくのかを知れば、専攻選びにも具体的な判断材料が加わる。材料工学だけに、判断材料は多いほうが良いだろう。

そこでこの記事では、金属材料を学んでいた私の目線から、材料工学系の就活事情を書いていく。材料系に興味のある方にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただけると幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

①求人>供給人材数で超売り手市場

金属材料は現代社会のほぼすべてに使われている。スマホにも、スマホを充電するケーブルにも、電線を支える鉄塔にも入っている。金属抜きの工業製品はカレーライスのカレー抜きぐらい難しく、当然、材料の知見はどのメーカーも喉から腕が出るほど欲しい。

ところが、金属材料を専門的に学べる大学は限られている。機械系や電気電子系と比べて圧倒的に少ない。つまり、企業がどれだけ欲しがっていても、人材供給人数が足りないのだ。

その結果、材料系人材は、新卒市場でも転職市場でも超売り手市場となる。20代前半女性のマチアプと同じぐらい引っ張りだこである。四方八方からアプローチが届いて、手を引っ張られすぎて八つ裂きになるかもしれないから注意していただきたい。

②不景気でも採用枠がある

不景気になったからといって世の中から金属製品が消えるわけではない。景気が悪くても車は走るし、缶ビールはじゃんじゃん売れる。というか、むしろ不景気のほうがビールはよく売れるだろう。

金属の需要が続く限り、材料技術者にも仕事がある。新しい材料を開発する人に加え、工場では製造条件を管理する人が必要となり、不具合が起これば原因を突き止める人も要る。一つの製品を作り続けるだけでも、材料技術者には次々と仕事が回ってくる。

材料の専門知識は身につけるのに年月がかかる。不況のたびに採用を止めると、数年後には技術を継ぐ社員が足りなくなり、ベテラン社員が定年後も再雇用されて高齢者雇用の星になる。企業もそれを分かっているから、多少業績が悪くても一定数採用するのだ。

私が学生時代に参加した専攻の就職セミナーでも、就職氷河期やリーマンショックの時ですら材料系学生は一流企業に就職できていたらしい。もちろん企業ごとに採用数は変わるだろうが、材料系学生を求める会社が一斉に消えることは万に一つも無いだろう。

③学校推薦が山ほどある

材料系学生の人数が少なければ、企業は早い段階から囲い込みにかかる。夏のインターンシップで会社へ招き、秋には大学内の企業説明会へ現れ、冬が近づくと研究室の卒業生が訪ねてくる。久しぶりに会ったと思って話していたら、途中から福利厚生の説明を始めてくる。

囲い込みの最終兵器が学校推薦である。材料系専攻には、鉄鋼会社や非鉄金属メーカーに加え、自動車会社や電機メーカーからも推薦求人が届く。大学や専攻によっては、在籍学生数の数倍に相当する推薦枠が用意される。

推薦選考では、書類審査や適性検査がスキップされ、いきなり二次面接や最終面接に挑める。忙しい学生にはありがたい制度で、推薦でサクッと内定を取り、好きなだけ研究に打ち込めるのだ。

材料系学生の就活では、内定を取るのが至極簡単である。大量の求人票を眺めて待遇や勤務地を比べ、自分がどの会社へ行くかを決める簡単な作業なのだ。

④推薦を使うか自由応募で行くか迷う

推薦を使えば簡単に内定を貰える。その代わり、推薦経由で得た内定には必ず入社する責任がセットでついてくる。辞退すると大学と企業の間の信頼関係に影響し、後輩にも迷惑がかかるため、推薦を使う前に覚悟を決めなくてはならない。

後からもっと良い企業が見つかっても、既に行き先が決まっていたらどうしようもない。お前はもう死んでいる。いや死んではいないが、何者にもなれる自分という意味では死んでいる。そうか、やっぱり死んでいる。

最近は推薦を使わず、自由応募で就活を進める学生が増えてきた。材料系の売り手市場は自由応募でも健在であり、推薦なしでも大手メーカーの選考をパスできるのだ。実際、私自身も自由応募で就活を行い、一か月ほどで内定を得た。

自由応募では複数の会社を受けられる一方で、会社ごとにエントリーシートを書き、適性検査を受け、何度も面接へ参加することになる。推薦なら二週間で終わる選考に二か月を費やすのだ。推薦で安牌を狙うか、自由応募でフリーダムを取るか、どちらにするか真剣に悩む。

⑤就活への危機感が薄い

就活前、先輩に就活事情を尋ねてみると、「就活? 楽勝だったよ」と返されるケースが多い。大変だったと言われれば気が引き締まるだろうが、簡単だと言われたら気が緩む。ギリギリまでエントリーシートを書かず、面接練習もせず、ボーッと過ごす学生は結構多い。

そして実際、大抵の学生はどこかの企業から内定を得る。先輩の予言が当たったので、その学生も翌年の後輩へ「楽勝だったよ」と伝える。後輩も就職先を決め、さらに次の後輩へ同じ話をする。この循環が何年も続き、材料系専攻には危機感の薄い学生が安定的に生産されてきた。就活シーズンに入っても、文系学生と材料系専攻では顔つきが全く違う。本当に両者就活をしているのかと言いたくなるほど対照的である。

ただし楽勝なのは「どこかには決まる」程度の話であって、第一志望に受かるかは別問題である。油断していたら本命に落ち、第三志望あたりに着地するから、十分注意しなくてはならない。

⑥就職先は素材から商社まで幅広い

材料系学生の就職先は素材メーカーが王道である。大学で鉄鋼材料を研究した学生が鉄鋼会社へ入り、非鉄金属を研究した学生が非鉄金属メーカーへ進む。山本由伸投手のストレートと同じぐらい美しい進路である。

材料系学生は自動車メーカーでも活躍している。車体の軽量化や剛性強化には鉄・アルミ合金の知識が必要だし、電動車開発には電池・磁性材料の知識も求められる。私も一社目は自動車系企業で量産開発業務を担ったが、様々な場面で材料学の知識を活かせ、大学での学びが役立って嬉しかった。

最近だと半導体系にも行っている。材料学の講義では半導体工学も習うため、入社して以降の技術キャッチアップが容易である。半導体製造に用いられる金属配線や接合材料には材料学の知見がふんだんに注ぎ込まれており、半導体製造装置の製造でも耐熱性や耐食性を意識して作るのだ。

意外なところでは、コンサルや総合商社に進む学生もいる。研究で培った思考力と、教授からのアカハラ手厚い指導で鍛え上げたメンタルは、激務で有名なコンサル業界との相性が抜群である。素材分野の専門知識は、総合商社の資源・素材部門で事業投資の判断に使える。

そのほか、重工業や鉄道会社へ進み、発電設備や輸送機器の強度評価を担当する学生もいる。

就職先が多い材料系だが、あえて弱点を挙げるとすれば、選択肢が多すぎて逆に選べなくなることぐらいだろうか。

⑦素材メーカーは高年収

素材メーカーには企業間取引を中心とする会社が多い。一般消費者からは社名を知られていなくても、その会社の製品は自動車や電子機器へ大量に使われている。

高機能材料は作るのが難しく、製造可能な企業は世界でも限られている。独自性の高い製品を持つ会社は利益率が高く、給与水準もおのずと高くなる。日系素材メーカーは電子部品向けの材料で高い世界シェアを持ち、平均年収1,000万円オーバーの企業も多数ある。

2026年時点で総合職平均年収が1,000万円を超える企業を列挙した。材料系学生ならどの企業にも手が届くので、参考程度に眺めていただければ幸いです。

  • 日本製鉄(鉄鋼):1,251万円
  • AGC(ガラス・電子材料):1,158万円
  • 三井金属(亜鉛・銅箔・電子材料):1,124万円
  • 日本曹達(農薬・工業薬品):1,104万円
  • 神戸製鋼所(鉄鋼・アルミ・銅):1,082万円
  • クラレ(樹脂・合成繊維):1,062万円
  • 住友金属鉱山(銅・ニッケル・電池材料):1,050万円
  • 東レ(合成繊維・炭素繊維):1,040万円
  • 富士フイルム(半導体材料・医療製品):1,023万円
  • 東京応化工業(フォトレジスト):1,018万円
  • 三井化学(樹脂・半導体材料):1,017万円
  • JFEスチール(鉄鋼):1,015万円
  • 日産化学(半導体材料・農薬):1,010万円

⑧工場はたいてい田舎にある

ここまで読んで「材料学専攻、最高じゃん」と思った方には、ぜひ材料系に進んでいただきたい。けれど、ちょっと深呼吸して、冷静になってもらいたい。

素材製造には広大な敷地が必要となる。原料の搬入や工業用水の確保も考えると、工場は田舎か臨海部に建てられることが多い。工場の周囲には豊穣な日本の原風景が広がり、コンビニへ行くにも車が必要になる。休日は近隣のイオンへ行き、フードコートで昼食を食べ、特に買うものもないまま帰宅する。そして、翌週もまたイオンへ行く。

大手素材メーカーは給与水準が高く、地方では住居費も抑えやすい。その結果、お金がよく貯まる。お金の使い道が見つからない社員は、NISAで毎月オルカンを買う。NISA貧乏とか何とか云われても、お金の使いどきがないんだから、ホントどうしようもない。スリルを求める人はFXや三階建ての株式信用取引を始め、モノの見事に焼き尽くされる。

⑨研究室の中で志望企業がかぶる

待遇がよく、知名度も高い企業には、同じ専攻の学生から応募が集中する。自由応募なら全員が応募できるけれども、学校推薦枠が一人分の場合は候補者を絞る必要がある。

同じ研究室の二人が同じ推薦枠を希望すると、本人同士で相談したり、就職担当教員が成績や志望理由を確認したりして応募者を決める。最初は二人とも笑顔で話し合うが、腹の中では(お前が譲れ…)と思っている。

とはいえ、譲った側も別の人気企業を選べば済むので、最終的にはみんな笑顔になって研究室が平和になる。ハッピーハッピーハーッピー、ヒャッハー!!!! である。

⑩就活がさっさと終わり、研究に戻る

文系学生は学部三年の春から就活を始めると聞く。早い人は学部一年生から長期インターンに参加しているらしい。

材料学専攻の学生が就活を始めるのは、M1の1月か2月あたり。遅すぎるやろと思われるかもしれないが、実際これでちょうどいいのである。2月に始めて3月に終わる学生もザラにいる。始めた瞬間に終わる猛者もいる。文系学生が一年半かけて走る道程を、材料学学生はものの数週間で駆け抜けるのだ。気持ち良すぎますね、最高です。

就職先が決まると、学生は研究室へ戻る。就活中に止めていた実験を再開し、学会発表や修士論文の準備を進める。。メーカー志望の大多数にとって就活とは、研究の合間にちょっと社会と接点を持つ程度の軽いイベントである。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

カテゴリー

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次