私が博士論文を書き始めたのは、修了七か月前のD2・9月から。着手は割と早めかもしれません。早めに書き始めた方が良いなと感じ、自ら決心して執筆にとりかかったのです。結果的にこの決断は正解でした。完成したのは提出期限の一か月前。見直しして内容を入念に確認する時間的余裕をもってサブミットできました。
私がもしも後輩へ博士論文の件で何かアドバイスするならば、「なるべく早期に書き始めた方が良いよ!」とお伝えしたいです。執筆着手の最適なタイミングは、D論提出要件クリアが見えた瞬間。早くから書き始めることで大きな恩恵を受けられるでしょう。
この記事では、学位論文提出要件クリアが見えた瞬間に博士論文を書き始めるべき理由を解説します。博士課程在籍中の方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。
かめそれでは早速始めましょう!
博士論文は仕上げるのに時間がかかる


博士論文は今までの成果の結晶。学術論文何報分もの成果を一作にまとめて出版します。どれだけ少なくとも100ページは超えるでしょう。私の博士論文は英語で計205ページ。海外の博士学生らも平気で200ページ書いてきます。
100ページや200ページの大作全てをゼロから記すわけではありません。研究成果を載せる章は、既に出版した学術論文を再編集してペーストしたもの。我々がD論提出に際して新たに記すのは研究成果以外のパート。具体的には、「イントロダクション」と「総括」と「謝辞」の三つを記していくわけです。自分のイントロは38ページ。結論と謝辞はそれぞれ8ページと4ページ。合わせて合計50ページ。
私は卒論がおよそ50ページでした。ひとつのページに図表をデカデカと載せる超絶技巧を駆使しても50ページ。D論でページ稼ぎは許されません。学術論文と同様の”適切な”サイズで成果を載せて著述する必要があります。そう、我々は、卒論以上のボリュームを作成していくのです。
特に大変なのがイントロ。ネギトロではなくイントロです。イントロはイントロでも”General”なイントロの執筆が求められます。Genralな、とは何か。「研究背景の背景」です。根本的なところから一段ずつ丁寧に積み上げていかねばなりません。
もしも博士論文をギリギリから書き始めたらどうなるか。提出期限までに仕上がらないかもしれません。D論のボリュームは膨大です。書き上げるのに数か月はかかるでしょう。皆さんはこれまで頑張ってD論提出要件のクリアを目指してきました。肝心のD論を期限内に出せなければ、オーバードクターまっしぐらです。
イントロと今後の展望と謝辞ならいつでも書ける
先ほどの章では、博士論文をなるべく早くから書き始めるべき理由をお伝えしました。早めの着手が求められるのは、何十ページもの超大作を書き上げるのに膨大な時間がかかるからです。
博士学生に朗報があります。記さねばならぬ部分の大半はいつでも書き始められるのです。
General Introductionは背景の背景。これまで学習してきたことについて、大風呂敷を広げて壮大に論じて下さい。どれだけ壮大なものは、私のD論を例に説明しましょう。
私は院生時代に次世代電池材料の研究をしていました。電池は再生可能エネルギー(再エネ)の貯蔵源として期待されています。再エネは日本の自然と密接な関係がある。その自然は、天地開闢とともに生み出された。すなわち、自然を作ったのは、高天原にいらっしゃる八百万の神。要するに、私の研究は日本神話と密接な歓迎があるのです。そこで、General Introductionは古事記を引用しながら記しました。D論の引用文献[1]はKojikiでした↓


背景と同様、総括パートの「今後の展望」も自由に論じられる所でしょう。博士課程で得られた研究成果が社会へどのようなインパクトをもたらすか、期待と妄想全開で語ってください。謝辞は謝辞。日ごろの感謝を綴りましょう。周りへ本当に感謝していれば、タイピングする手が止まらないはずです。皆さん、ちゃんと感謝していますか? 先生方への思いのたけを表現してください。
私のオススメ執筆順は謝辞→イントロ→総括。
謝辞が一番書きやすいです。書きやすいものから始めればD論執筆に勢いをつけられるでしょう。その次に書くべきはイントロ。イントロはボリュームの多いパート。だからこそ時間のあるうちに仕上げておきたいのです。最後に総括。イントロと研究成果を踏まえ、思う所を余すことなく書き記してください。
学位論文提出要件クリアが先決


博士論文執筆のコツをご紹介してきました。最後にひとつ重要な話をしましょう。
D論執筆に着手するのは、学位論文提出要件を満たした直後にしてください。まずは提出要件を満たすのが先。専攻ごとに定められた学術論文出版数を上回りましょう。出版数の規定を満たしてようやく博士論文を審査してもらえるのです。提出要件を満たさぬうちは、どれだけ一生懸命にD論を書いても仕方がありませんから。
我々がまず注力すべきは、学術論文をアクセプトさせること。論文を記すためにデータを揃え、データの考察へ頭を使ってください。
十分な出版数を得られたら、頃合いを見計らってD論の執筆へ着手する。研究成果パートは出版論文の再編集で。イントロと総括と謝辞は早め早めの執筆を心掛けましょう。なお、D論提出要件充足が修了目前にずれ込んでしまう場合、予備審査会の2か月前からD論を書き始めるのが宜しいかと。D論と投稿論文の対応の並行作業は大変かと存じます。なんとか気力を振り絞って乗り切ってください。




















コメント