13. 好きなだけ学術論文を読める
にゃん博士学生って、毎日ずっと実験してるの?



論文を読む日もあるよ。朝から大学に行って、「今日はこの辺の論文をまとめて読もう」と決めて、一日じゅう画面を見ている日もある



一日じゅう? 途中で眠くならないの?



なるよ。イントロと実験方法を読み終え、次はディスカッションかとなったあたりで眠気の第一波がくる



じゃあ、寝るの?



立って読む。意地でも読む
博士課程だと、研究に必要な論文を読むこと自体が仕事になる。情報収集も、立派な仕事。こんなに論文ばかり読んでいていいのかなって思わなくていいんだよ、むしろ論文は読めば読むほどいい



研究好きにはたまらなさそうだね♪



大学では、大学が契約している電子ジャーナルにもアクセスできるから、有料の論文をたくさん読める。Google Scholarで面白そうな論文を見つけて、印刷するなり文献アプリに登録するなりして、どうぞごゆっくりお楽しみください☕



それはいいね
論文って普通の人が一本読むのに何千円もかかるでしょ。それを読み放題となれば、論文を読みまくれば、学費の元を取れそうだね!



確かに。学生時代の自分に、その発想はなかったな…
14. 無知の知を思い知る



博士課程まで行ったら、専門分野のことは大体分かるようになるんでしょ?



むしろ、勉強すればするほど分からないことが増えるよ



何年も研究してるのに?



最初は知らないこと自体に気づいていないんよ。論文を読んでいるうちに、「この式って、そもそも何を仮定して導いているんだ?」とか、「この測定法、本当に何を見ているんだ?」とか、細かい疑問が次々出てくる



勉強すればするほど、自分の無知が増えていくのか



もともとあった無知が発見される
無知の知ならぬ、無知の無知を自覚する



ゴキブリみたいだね
一匹見つけたら、奥に何十匹もいる感じ



研究をゴキブリ扱いするな。偉い人に怒られるぞ



となると、博士課程は、知識を増やしているのか無知を発掘しているのか、よく分からないね



ホントにね
15. 自分より優秀な人がいると知る



博士課程まで行く人って、みんな賢いのかな。きっと自信家が多いんだろうね



D進すると、定期的に自信が粉砕されます



なんか、怖いな



学会で切れ味抜群の質問を受けて悶絶することもあるし、自分が何日かけて考えても分からなかった問題をその場で解いてしまう人もいる



ムカつかない?



ムカつくを通り越して、ため息が出る。「なんでこの人はこんなことを思いつくの?」と思う。自信が打ち砕かれるたびに落ち込むんだけど、へこんでばかりいても仕方がないので、優秀な人に追いつこうと努力を重ねるようになる



そっか~
優秀な人が多いと、謙虚で居られるかもね



研究業界では、イヤというほど優秀な人とたくさん出くわすから、傲慢になりようがない。少し調子に乗ってもすぐ謙虚モードに戻れる



何年か経って力をつけて、いずれは自分もピヨピヨの博士学生を打ち砕く側に回るわけか



学生を打ち砕くな
16. 「知らない」と言うことが怖くなくなる



博士課程に入ると、「そんなことも知らないんですか?」って言われるの怖くない? 知ったかぶりしちゃいそう…



それがそうでもなくて、「それ知らないです」「教えてください」って言えるようになるよ



そうなんだ、意外
なかなか言えなさそうだけど



専門家同士でも知らないことはたくさんある。学会でも、先生同士が「すみません、その手法に詳しくないので教えてください」って質問している



教授でも知らないって言うんだ



言う、言う。知ったかぶりして話を進めると、あとで余計に分からなくなるじゃん?



そういうことか
分かりませんって言っても怒られない?



「分からないので教えてください」と聞けばいい。その場で教えてもらえば、ねこさんは一つ賢くなれます



じゃあぼくも今日から積極的に使おう
分かりません!



何が?



全部!



何がだよ!
17. 困ったときに人の力を借りるのがうまくなる



研究って、自分ひとりで考えて進めるイメージあるけど



一人で全部やろうとすると詰むよ
例えば、自分が使ったことのない分析装置が必要になったとするじゃん。説明書を一週間読んで悩み続けてもいいけれど、詳しい人に聞けば10分で解決するかもしれないじゃん。時間がもったいないよ



さっきは三年腰を据えてじっくり取り組めるって言っていたけど…



何に取り組むかが大事なんだよ
誰かが知っていることを一生懸命考えても仕方がない。そういうのを『車輪の再発明』と言う。せっかく博士課程まで進むんだから、まだ誰も知らない知見を明らかにする方へ頭を使わなきゃもったいないでしょ



にゃ~



博士課程に行くと、「これは自分で調べる」「これは先生に聞こう」「これは装置担当の人に聞く」って分けられるようになる



人を使うのがうまくなるんだ



言い方を考えろ
自分がどこまで分かっていて、どこから分からないのかを説明して、詳しい人に相談する



「全部分かりません。助けてください」はダメ…?



さっきから全然成長してないじゃん
18. 自分に合った勉強の仕方が分かる



D進すると、勉強の仕方も変わる? やっぱり、分厚い専門書を1ページ目から読破するの?



そんな読み方したら途中で力尽きる。研究をしていると、「今、この知識が欲しい!」っていう場面があるんよ



どういうこと?



実験中に何かよく分からない現象が起きたとするじゃん。そうしたら、その現象を説明していそうな論文を探してみる。論文を読んで分からなかったら、教科書を開いて、理論ベースで考えてみる



教科書の37ページから読むの?



必要なら347ページからでも読む



著者が泣くぞ。第一章から丁寧に書いたのに。で、347ページ読んだら分かる?



分からんこともある。そしたら前の章へ戻る。「この式の意味が分からん」となったら、さらに基礎の本を開く



347ページから始めたのに、気づいたら高校数学まで戻ってたりして



あるあるだね。「オレは博士論文を書いていたはずなのに、なぜ三角関数を復習しているんだ」みたいな。でも、何を分かっていないか分かった状態で勉強するから、必要なところはちゃんと頭に残るよ



博士課程って、勉強が上手くなる場所でもあるのね



そして、昨日まで知っていたはずの概念を今日忘れる場所でもある



差し引きゼロじゃん
19. 理系ジョークで大笑いできる



研究室の学生同士って、研究の話ばっかりしてるの?



真面目な議論もするし、研究ネタでしょうもないこと言って笑うことも結構あるよ



研究ネタで笑えるの?



うん。専門知識を共有しているから、理系ジョークだけで腹を抱えて笑える
たとえば誰かが「昨日行ったラーメン屋、めっちゃ美味かった」と言ったら、「n=1で結論を出すな」と返ってくる



昼飯にもサンプル数を要求されるのか



「少なくとも3回行って再現性を確認してください」とかね
誰かが最近太った気がすると言えば、「測定誤差では?」で始まり、「一週間測って統計処理しよう」まで行く



面倒くさ~



研究室に長くいると、科学的なジョークで笑いを取れる。世間が1ミリも理解してくれない話で、研究室内では大爆笑が起きる



世間から隔離しておいた方が良さそうだね



だから、研究室に隔離されてんじゃん



あっ…
20. ひとつの専門分野に関する体系的な知識を得られる



論文を何百本も読んだら、全部覚えてるの?



タイトルまで全部覚えるのは無理よ。ただ、この実験なら、あの人たちが昔やってたなとか、この測定なら、あの論文を見れば条件が載ってるなとかいった大事な内容は頭に入っている



頭の中に論文棚ができるんだ



そうそう
最初、頭の中に何もない状態で、論文を一本読んで「へぇ~」と唸る



論文って難しいもんね
二本目は?



また「へぇ~」



三本目は?



また「へぇ~」って



語彙が終わってんじゃん



500本ぐらい読むと変わってくる。論文同士がどう関係しているか見えてきて、頭の中で知識が有機的に繋がるんだ。専門分野について体系的に理解しつつあるなって感じ



千本読んだら、「この研究はあの論文の焼き直しかな?」みたいなマセた読み方もできるようになる。論文をアタマから読まなくても図表をチラ見すれば何がいいたいか分かるようになる



ちなみに、あなたは学位をとるまでに論文を何本読んだの?



数えきれないぐらい。数千本は読んだよ



それで、どうなったの?



頭のねじが吹っ飛んだ



アカンやん
21. 論文を読むのが楽しくなる



論文って読むの大変そうだけど、何百本も読んで嫌にならないの?



知識が増えると面白くなるよ。論文を読んで「おお、こんなことが分かったのか!」と感嘆できるようになる



最初は?



どんだけ長いんだよって思った



長いよねぇ



背景知識が少ない頃は、書いてある内容を追うので精一杯なんよ。何年か研究するにつれ、著者がどういう狙いで実験したのかまで考えて読めるようになる



研究者の考えていたことまで分かるの?



実験条件がちょっと不自然だと、最初はこっちを狙ってたけど、途中で予想外の結果が出て方向を変えたんだろうなって想像することもある



舞台裏まで読めたら面白そうだね!



この追加実験、査読者に言われてやったんだろうなぁ、可哀そうだなぁ、とかね



そこまで見えるの?



査読で同じ目に遭うと、だんだん見えるようになる
22. 分からないことを分からないままにしない習慣がつく



博士課程にいると、日常生活でも何でも調べるようになる?



なるね。何か気になると、そのまま放っておけなくなる



たとえば、どんなこと?



ヨドバシカメラに行って家電を買うとするじゃん。説明書きを読んで知らない用語があったら、すぐスマホを取り出して、納得がいくまで調べる



邪魔になってるよ



そうかもしれないけどさ、気になるんだもん。気になってムズムズして痒くってさ。研究だと、曖昧なまま進めて、何か月後かに自分の首を絞めることがよくあるから



じゃあ、なんでネコは箱に入りたがるのか気になったら、調べる?



もちろん



なんで肉球はぷにぷになのか気になったら?



調べる



なんでぼくはこんなにかわいいの?



は?



調べてよ!!

















コメント