21. 論文を読むのが楽しくなる
にゃん論文って読むの大変そうだけど、何百本も読んで嫌にならないの?



知識が増えると面白くなるよ。論文を読んで「おお、こんなことが分かったのか!」と感嘆できるようになる



最初は?



どんだけ長いんだよって思った



長いよねぇ



背景知識が少ない頃は、書いてある内容を追うので精一杯なんよ。何年か研究するにつれ、著者がどういう狙いで実験したのかまで考えて読めるようになる



研究者の考えていたことまで分かるの?



実験条件がちょっと不自然だと、最初はこっちを狙ってたけど、途中で予想外の結果が出て方向を変えたんだろうなって想像することもある



舞台裏まで読めたら面白そうだね!



この追加実験、査読者に言われてやったんだろうなぁ、可哀そうだなぁ、とかね



そこまで見えるの?



査読で同じ目に遭うと、だんだん見えるようになる
22. 分からないことを分からないままにしない習慣がつく



博士課程にいると、日常生活でも何でも調べるようになる?



なるね。何か気になると、そのまま放っておけなくなる



たとえば、どんなこと?



ヨドバシカメラに行って家電を買うとするじゃん。説明書きを読んで知らない用語があったら、すぐスマホを取り出して、納得がいくまで調べる



邪魔になってるよ



そうかもしれないけどさ、気になるんだもん。気になってムズムズして痒くってさ。研究だと、曖昧なまま進めて、何か月後かに自分の首を絞めることがよくあるから



じゃあ、なんでネコは箱に入りたがるのか気になったら、調べる?



もちろん



なんで肉球はぷにぷになのか気になったら?



調べる



なんでぼくはこんなにかわいいの?



は?



調べてよ!!
23. 課題設定力を育てられる



研究テーマって、先生から渡されるものじゃないの?



研究室配属されたての頃はそうだよ。博士課程まで来ると、自分で次に何を調べるか考えるんだよ



何が分かっていないかを調べるの?



にゃん。論文を読んで既知と未知の領域を線引きして、未知のエリアに行くための方法を考える。また、本当に行くべきなのかも考える



誰も知らないことなら、何でもいい?



それだと、『先生が味噌汁を飲んで来た日はなぜ機嫌が良いのか』も研究テーマになる



面白そうじゃん、考えてみようよ



嫌だよ、面倒くさい
24. 仮説ベースで検証する力が手に入る



実験って、とりあえず色々やってみたらいいんじゃないの? 考えるな、感じろ、みたいな



先に頭を働かせた方がいい。研究って膨大な量のパラメータがあって、イチイチ実験していたらキリがない



たとえば、温度の違いが原因かもと思ったら、温度を変えて結果がどう動くか確かめる。予想通りなら仮説を支える材料が増え、外れたらまた考え直す。期待値が高そうなものから順に試すんだ



何か月かかけて作った仮説でも、データと合わなければ手放すの?



そうだよ



愛着わかないの?



愛着を持つと、危ないんよ。「本当はこの子、いい子なんです」とか言って、データをチェリーピッキングするようになる



愛がないなぁ…



それとこれとは別なんだよ
25. AIを使って仕事する訓練を積める



AIって、研究でも使うの?



使う、使う。論文を読ませて内容を教えてもらったり、プログラムコードを書かせたり、調べ物をさせたりする



じゃあさ、全部AIにやってもらえばいいじゃん



それをやると、肝心なところで火傷する。最近のAIはかなり性能が良くなってきたけど、まだ時々ウソをつく。もっともらしい顔でハルシネーションを起こすから厄介なんだよね



誰かさんみたいだね



こっちを見るな



AIが出したものは、全部確認するの?
AIは、優秀な助手?



確認はするね。AIの出力内容を読んで、違和感がないか確かめる。本当は実験もやってくれたら助かるんだけどね…



それだとあなたの存在意義がないじゃん



怖いこと言わないでよ
26. AIへ的確に指示を出せるようになる



AIをずっと使っていたら、指示の出し方もうまくなるのかな



なるよ。いくら最先端のAIでも、いい感じにまとめてみたいなテキトーなプロンプトでは、欲しいものが出てこない。自分の意志をある程度伝えて、道筋まで立ててあげれば、彼らは爆速老け顔プレッシングアンパンマンで作業を進めてくれる



そっかぁ
あなたが博士課程の学生だったときも、AIってあったんだよね?



ちょうど自分がD進した年にChatGPTが出てきたんよ。あれは本当に衝撃だったな。高三の大学受験で国立一本で受験して落ちて、浪人が決まった瞬間ぐらい衝撃だった



めちゃめちゃ驚いてんじゃん。じゃあ、博士課程の間にみっちり使い込んで、AIマスターになった感じか



研究ではAIにお世話になった。論文を英語に直すときなんか、ほとんど全部AIが翻訳してくれたもんね。博士論文だって英語はClaudeが書いてくれた



AIネイティブ世代として研究したおかげで、研究にAIを使うのは当然っていう感覚がある。収入が少ないなか、毎月何千円もAIに課金して使っていたよ



研究室時代から使っていたら、会社員になってもAIを使いこなせそうだね



そう思う。会社に入って周りを見ると、AIを使いこなせている人と使いこなせていない人の間でアウトプットの量・質が全く違っている。若いうちにAIを使えるようになっておくと、これからの時代に役立つかもね
プロンプトはね、具体的であればあるほどいいよ
27. 手先が器用になる



実験系の博士って、手先も器用になるの?



なるよ。小さい試料をピンセットでつかんだり、細い配線をつないだり、狭い場所に部品を取り付けたりするからね。不器用な人でも、じき器用になる



最初からできた?



最初は酷かった。自分は手先が不器用だから、細かい作業ができずに癇癪を立ててすぐイライラしていた。ときどき奇声をあげていたもん、「もう無理!!」って



博士課程で三年過ごして、どうなった?



だいぶ器用になったねぇ。電極間距離600 µmの実験セルを、目視で±10 µm単位でアジャストできるようになった



神じゃん。目の分解能、どうなってんの
器用さは、日常生活でも役立つの?



まぁ、多少は。カニを食べるときとか



なんだ、ショボいな



うるさいなぁ
28. 科学リテラシーが育つ



博士課程まで行っちゃうと、科学系ニュースの見方も変わるのかな?



変わるよ。○○に効果があることが分かった、みたいな記事を見つけても、なぜ効果があるのか確かめるまでは信じないもん



疑り深いなぁ
もっと素直になった方がいいと思う
やけんモテんと思う



ほんと、ひと言多いな
科学的な成果を訴えてきたとき、何人を対象にした実験なのかとか、何と比較してどれぐらい差が出たのか、そもそもどうやって測ったのかと考える。元論文があれば、読みに行くこともある



コーヒーを飲む人は長生きします! ってニュースを見たら?



ホンマかいなと思いながら、一日に何杯飲んだのかや、比較年齢群は揃っているのか、運動習慣の違いは見ているのか、と色々考える。研究をやっていると、データと結論を慎重につなげる癖がつくから、結論に飛びつくのも慎重になる



そっか~
ニュースって大げさに伝えることが多いから、博士課程で科学リテラシーが鍛えられたら、将来役に立つかもね



ちゃんと修了できたらね



怖いこと言わないでよ



にゃん
29. 事実と意見を分けて考えられるようになる



研究を続けると、考え方も変わるんだろうね



そうだね。データと解釈をちゃんと分けるようになるね



どういうこと?



たとえば、実験して何かの数値が下がったとする。数値が下がったのは測定事実。んで、その原因をこう考えます、という部分は、自分の解釈だよね。原因まで事実と思い込みたくなるところをグッと堪えて、切り分けて考える



原因の部分も事実かどうか確かめるために、追加実験する感じか



そうそう



じゃあ、LINEの返信が遅いから嫌われたと思う、は?



返信が遅いところまでは事実で、
返信が遅いから嫌われた、は解釈



博士学生に恋愛相談したら、大変そうだわ



追加データをお願いします



やっぱ面倒だわ
30. 相手の主張を聞くと、反射的に根拠を探すようになる



誰かに「これは絶対こうだよ!」って言われたら信じる?



まず理由を尋ねる。なんでそう思うの? って



嫌なやつだなぁ



研究室では、むしろ私の方が普通だよ。「原因はこれだと思う」と言ったら、何でそう思うのかセットで聞かれるもん。答えられなければ、詰められる



何年も研究室で過ごすと、プライベートでも主張に根拠を探すようになるのか



なっちゃったね。友達が、この店が町で一番うまいって言ったら、何店舗食べて、なんで美味いと思ったのか聞きたくなるもん。ま、さすがに聞かないけどさ



聞くでしょ?



…聞くときもある


















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