31. 質問上手になる
にゃん質問って、上手い・下手があるの?



あるねぇ。何が分からないのか分からないような曖昧な質問から、核心をつく火の玉ストレートな質問まで様々ある



博士課程では研究で「なぜ?」とたくさん考えるから、自然と質問も上手くなるんだろうね



どんな研究も、ひとつの問いから始まる。仮説と仮説を結ぶのも問いだし、問いの質に応じて到達点の高さが変わってくる。良い研究をしようともがく過程で、良い問い方ができるようになるんだよ



じゃあ、何か質問したらなんでも答えてくれる?



いいよ。何が聞きたいの?



生きる意味って、何だと思います?



それは私も気になっている
32. 抽象と具象を行き来できるようになる



研究って、実験結果を眺めて考えるだけ?



実験結果を見たら、なぜそうなったのかを理論で考える。その理論が合っているなら、次に何が起こるか予想して、また実験する。抽象と具象を行き来するんだよ



実験して、考えて、また実験して?



そう



食べて、祈って、恋をして?



それは名作映画なんよ



行ったり来たりしてるなぁ



三年間、ずっとそんな感じ
33. 一つの出来事に、複数の解釈を思いつけるようになる



実験で何か結果が出たら、原因は一個に絞るの?



最初は何個か候補を出すよ
試料由来の誤差かもしれないし、温度のせいかもしれないし。あるいは、装置の機嫌の問題かもしれない。常に、あらゆる可能性を想定しておく



犯人候補を並べるんだ



うん。そのあと、一個ずつ確かめる。温度が怪しいと思って調べたら、温度は関係なかった、みたいなこともある。容疑者、釈放だね



おめでとうございます



ありがとうございます
で、次に別の被疑者を取り調べする



なんか、刑事ドラマみたいになってきたぞ。犯人が見つかったら、どうするの?



もちろん逮捕する。んで、拷問する。徹底的に取り調べる



かわいそう。やめてあげなよ



容赦すると後で仕返しされるから、徹底的にやりこめる
34. 考えを改めることに前向きになれる



何か月も信じていた仮説が間違っていたら、へこまない?



へこむよ。終わった、と思う。文字通り、目の前が真っ暗になる



辛いねぇ…



ただ、間違っていたと分かったら、次に進めるじゃん。軌道修正できるのは嬉しいよ。間違ったまま進む方が、あとで大変だからね



昨日まですがりついていた信仰を、今日捨ててもいいの? ねぇ、本当にいいの? 神さまを捨てるの?



捨てるよ。新しいデータが出たなら、主張もデータに応じて変えなきゃね



にゃんこ…
昨日までラーメン派だったけど、今日からは寿司だ! 寿司しか勝たん! みたいな感じ?



なんかちょっと違う気もしなくはないけど、だいたいそんな感じ
35. 教科書に書いてあることを疑えるようになる



教科書に書いてあることって、全部正しいんでしょ?



学部生の頃は、自分もそんな感覚だったよ。でも研究を始めると、教科書では説明できない現象に出会う



教科書と実験結果がケンカするの?



する、する
教科書にはこう書いてあるのに、自分のデータは違う。そうなると、実験をやり直して、論文を調べて、それでも同じ結果が出るなら、自分の目の前で起きている現象をちゃんと考えなきゃいけない



教科書より、自分の実験結果を信じるの?



何度やっても再現するなら、実験結果を信じるよ。教科書って、これまでに分かっていることを人間がまとめた本だからね。研究が進めば、説明が書き換わることもある



小学生の頃は教科書に落書きしたら怒られたのに、博士課程に行くと内容にケチをつけ始めるんだ



言い方、ひねくれすぎだろ
36. 別の分野で学んだことを、自分の仕事に持ち込めるようになる



博士課程って、自分の専門だけ勉強していればいいの?



他分野の論文も読むよ。別の分野で面白い測定法や解析法を見つけたら、自分の研究にも使えんかな~って考える



よそのウチから道具を借りてくるの?



そんな感じ。医学系の画像解析手法を材料研究に応用するとか、物理で使われている考え方を化学へ持ってくるとか



学問に国境なし、専門分野にも国境なし



使えそうなものを見つけたら、とりあえず自分の研究畑に連れて帰る。で、尋問する



また拷問だ



尋問だって
37. 議論の楽しさを知る



研究室の議論って、どんな感じ?
先生に詰められるのかな



それもあるけど、



あるんだ笑



笑うなよ
話が面白い方向に転ぶときもある。自分では原因Aだと思っていたのに、誰かから原因Bもありそうと言われて、話しているうちに原因Cが出てきたりする



ひとりで考えるより色々な見方を取り入れられそうだね



そうそう。気づいたらホワイトボードが文字でびっしり埋まっている



なんか楽しそう♪



楽しいよ。自分の考えを話すことで、頭の中も整理されるしね。そのまま実験やシミュレーションを回すこともある



ごはんは食べないの?



ときどき忘れることがある



ごはんはちゃんと食べた方がいいよ…
38. たくさん失敗できる



研究に失敗はつきものなんだよね



うん。同じミスを何度も繰り返すのはダメだけど、仮説検証のためにやった実験で的を外すのは仕方ないよ



博士課程の三年間で、失敗コレクションがどんどん増えそう



死ぬこと以外はかすり傷の精神で、どんどん失敗したらいいんだよ。失敗すればするほど経験値が積み重なって、何事も巧くなっていくんだから。それに、一度失敗して痛い目に遭えば、次は同じ失敗をせずに済むでしょ



なんか、エジソンみたいなことを言うね



失敗は成功の母です



成功は?



次なる失敗の母です



にゃん…
39. 待つことが上手くなる



研究を何年かやっていると、待つのも上手くなるのかな



そういえば、なったね。データを見てすぐに「原因はこれだ!」と決めるのではなく、論文を読んだり翌日にもう一度データを見たりして検討に検討を重ねられるようになる



その場で答えを出した方が早くない?



早いよ。でもね、次の日になって、「あ、全然違うわ」って気づく場合があるんよ。昨日は原因Aしか見えていなかったのに、一晩置いたら原因Bもありそうだなとか。散歩している途中にひらめく場合もある



頭の中で寝かせておくのか
カレーみたいだね



研究結果を一晩寝かせると、熟成されて味が変わる



腐ることもある?



実験ミスに気づいて、全部ボツになることもある



腐ってんじゃん
40. ネガティブ・ケイパビリティが育つ



ネガティブ・ケイパビリティってなに?



考えても答えが分からないときに、分からないまま抱えておく力のこと。博士課程ではネガティブ・ケイパビリティが激伸びするよ



分からないままでいいの?



データが足りなければ、やむを得ない。原因Aでも説明できるし、原因Bでも説明できるとき、Aに決め打ちしたら自分が勝手に答えを作ったことになるでしょ。科学に恣意性を持ち込むのはご法度なのです



でもさぁ、気になるじゃん
Aなの? Bなの?
どっちなの!?



分かりません



イヤだぁぁぁ!!
決めてくれぇぇぇ!!



耐えましょう


















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