57. 論文の査読でボコボコにされる
にゃん論文は、出版の前に、専門家の目で査読されるんだよね。でもどうせ査読って形だけなんでしょ? たいしたことないんじゃない?



いやいやいやいや、たいしたことあるよ。時間をかけてしっかり審査される。審査された挙句、不掲載になるケースもある



え、厳しいんだね



査読してもらうと、査読者からコメントをいただく。その量は論文によってまちまちだけど、数ページにわたってこと細かく指摘事項が連ねられている



そんなにあるのか
ほめ言葉も入っているの?



最初に研究を評価する一文が書いてあって、その下から本題が始まる



何だか、怖いな



自分では説明できていると思ったところを、ここが分からない、この根拠は弱い、この実験も必要だ、と突かれる。ボッコボコにされるんだよ



一生懸命書いたのに?



そうなんよ。悔しいことに、ボコボコにされた原稿を直すと、投稿前より論文が良くなるんよ



じゃあ感謝しなきゃね



嫌だよ。しんどいもん
58. 論理的で簡潔明瞭な文章が書けるようになる



論文を何本も書くと、文章もうまくなる?



巧くなるよ
論文では、何を調べたのかを簡潔明瞭に書く。自分の解釈には、主張の根拠となるデータを添える



リゾットみたいに?



イタリアンじゃねぇんだよ
誰が読んでも分かるよう、論理的な文章を書いていくんだ。AならばB、BならばC、ゆえにAならばCと、丁寧に組み立てていく



いっそ、小説みたいに雰囲気で押し切ったら? われ思う、ゆえにわれありって。きっと査読者から評価されるよ、「著者らのアツい思いが伝わってきました」って



そんな査読コメント、見たことないわ



何度も文章を直していくにつれ、端的に文章を書くのが上手になりそうだね



先生から赤字を入れられて、査読者からまた直されるから、最初から短く書けるようになる



博士課程は文章の脂肪吸引コースなのか



たまに骨まで削られるけどな
59. 自分の主張を専門家相手に守れるようになる



ところでさ、査読者から突っ込まれたら、全部従うの?



私の解釈が正しければ反論するよ。データと論拠を示して、この理由から自分たちはこう考えます、と返す。譲れる部分は譲り、譲れない部分はがっぷり四つを組む



相手は専門家だよ? 研究のプロに向かって、あんたの方が間違っとるよって言うの?



言うよ。ツッパリをお見舞いする



勝てるの?



勝てないこともある



負けてんじゃん!



科学の世界では、肩書よりも科学的事実の方が優先される。常識とは異なる結果が出たら、常識から離れて考えなきゃいけない。査読者相手でも言うべきことはちゃんと言って、主張を守るんだよ



査読者と文通しながら殴り合うんだ



敬語でね



京言葉、レベルマックス
60. 論文アクセプトの喜びを知る



査読を乗り越えたら、どうなるの?



おめでとう! あんたの論文はアクセプトだ! ってメールがくる



そりゃ嬉しいだろうね



嬉しいよ。時間をかけて作り上げた論文が、ようやく世の中に出るんだから



はじめてアクセプトメールを見たときは、どうだった?



スパムメールかと思って捨てた
あとで先生が学生部屋に飛び込んできて、アクセプトおめでとうって言ってきて、あ、スパムじゃなかったんだと気付いた



最悪じゃん
素直に喜ぼうよ



ちなみに、四回連続リジェクトされて五度目の投稿でアクセプトされたときは、先生も「スパムメールが届いたかと思った」って言ってた



リジェクトに慣れると、アクセプトの喜び方が分からなくなるんだね
61. トップジャーナルに論文掲載できることがある



化学系ではIF(インパクトファクター)15程度のJACS誌が一流誌とされていて、それ以上のIFの雑誌は、ジャンルトップクラスの論文を集めていることから『トップジャーナル』と言われている



たしか、M2のとき、IF24の国際誌にアクセプトされたんよね? すごいじゃん!



すごいでしょ



うるさいよ



ごめんって
トップジャーナルは多くの人が見る雑誌だから、掲載を目標に研究する研究者も多い。もちろん査読も厳しくて、標準的な雑誌よりも深く突っ込まれる。私は三度のリジェクトのすえにアクセプトされた



載ったら、きっと嬉しいだろうね



一周回って、嬉しくなかった。現実味がなさすぎて。え、ホントにアクセプトされたの? マジで? いや嘘だわ、さすがに載るわけないじゃんって。何度も論文掲載ページを見に行って、自分の名前があるのを確認したもん



一回見ればわかるでしょ



何回見ても、自分の名前があったね



そりゃそうだよ
62. 論文の本数で人を判断しなくなる



アカデミアでは研究業績を論文の出版本数で測る傾向がある。博士課程の間に〇本出したからすごいとか、あの先生は教授になってからまだ△本しか出していない、とかね



なかなか露骨だね



確かに、たくさん出版している人はすごいんよ。ただ、論文を何本か出版すると、業績のすごさを本数では測らなくなるよ。というか、測れないなって分かる



そもそも研究って、運要素が強いじゃん。論文が出やすいテーマもあれば出しにくいテーマもあるだろうし。論文を量産できるからといって、中身があるかどうかは別問題なんだよ



そっかぁ。もちろんIFが高い雑誌に論文掲載されたからといって、偉いわけじゃないもんね



そりゃそうだよ。研究の価値は、何十年も経った後にようやく分かる。論文一本一本に魂を込めて書くのが大事なんだと分かったよ



たまにはいいこと言うじゃん



え、ずっと言ってきたつもりだけど?
63. 他人の研究の大変さが分かり、尊敬できるようになる



論文を何本も書くようになると、他人の論文を見る目が変わりそうだね



うん。綺麗なグラフが一枚載っていると、この裏で何回実験したんだろうなって考える



論文には成功した実験のデータしか載っていないもんね



そうそう。実際には、条件が決まるまで何十回も試しているかもしれない。装置が壊れたり、査読で追加実験を要求されたりしたかもしれない。自分も論文一本出すのに散々苦労したから、完成品を見ると、この人たちよく最後までやったなぁって思う。すごいなぁって



論文を読むたび、裏で繰り広げられたドラマを想像するのか



Figure 1を見る前に、著者らへ合掌する。南無南無、南無南無…



まだ生きてるからね
64. 学会で声を掛けられるようになる



学会って、毎回知らない人ばかりのところへ行く感じ?



最初はそうだったよ。発表回数を重ねるにつれ、過去に発表した研究を覚えてくれている人が現れる。有名人になれる



規模が小さいわ



ポスター会場で立っていたら、前の学会で話した先生から、その後どうなったのって声を掛けてもらうこともある



研究の続編を待ってくれてるんだ
嬉しいね^ ^



ホントにね
学会発表って、連載漫画みたいだよね



休載すると、次の学会が気まずいし、ね



気を抜けないね
65. 学会発表が楽しみになる



さっきは質疑応答が怖いって言ってたのに、学会が楽しみになることもあるの?



うん。発表に慣れてくると、新しいデータを携えて壇上で話して、他の研究者がどう反応するか見たくなるんだよね



自慢しに行くの?



そうそう。この結果、すごいでしょって
学会では、論文を読んで気になっていた研究者の発表を聞くこともできる。学会へ行くたびに顔見知りも増えるから、だんだん遠足みたいな気分になってくる



そうなんだ



指導教員も同じことを言ってたな。学会で知り合いと会えるのが楽しみだって



いいなぁ
ぼくも博士課程に行きたくなってきた



行っちゃいなよ
グイッと



ウィスキーかよ
66. 論文の被引用数を眺めてニヤニヤできる



論文を出したあとって、何かすることあるの?



あるよ。Google Scholarを見て、引用数が増えていないか確認する



えっと、何のために?



自分の出した論文が誰かに引用されたら、嬉しくない? だって、研究が世の役に立ったってことじゃん。文献管理アプリに登録してもらえるだけで幸せだし、引用されちゃったら、もうね、



なによ?



嬉しいんよ



そうですか
0が1になったら嬉しいよね。1が2になったら?



嬉しいよ



2が3になったら?



超嬉しい



3が4になったら、超超嬉しい?



うん
67. 海外の研究者から質問メールが届く



論文って海外の人も読むんよね



読むよ。ある日、知らない海外の研究者からメールが来ることがある



英語で?



そう、英語で。あなたの論文を読みました、この実験条件について詳しく教えてほしい、とか



すごいじゃん。地球の反対側から、ご指名で質問が届くんだ。返信はどうするの?



丁寧に書くよ。一文字ずつ人差し指でポチポチ打つ



はよ書けよ
せめて両手で頑張ろうよ

















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