61. トップジャーナルに論文掲載できることがある
かめ化学系ではIF(インパクトファクター)15程度のJACS誌が一流誌とされていて、それ以上のIFの雑誌は、ジャンルトップクラスの論文を集めていることから『トップジャーナル』と言われている



たしか、M2のとき、IF24の国際誌にアクセプトされたんよね? すごいじゃん!



すごいでしょ



うるさいよ



ごめんって
トップジャーナルは多くの人が見る雑誌だから、掲載を目標に研究する研究者も多い。もちろん査読も厳しくて、標準的な雑誌よりも深く突っ込まれる。私は三度のリジェクトのすえにアクセプトされた



載ったら、きっと嬉しいだろうね



一周回って、嬉しくなかった。現実味がなさすぎて。え、ホントにアクセプトされたの? マジで? いや嘘だわ、さすがに載るわけないじゃんって。何度も論文掲載ページを見に行って、自分の名前があるのを確認したもん



一回見ればわかるでしょ



何回見ても、自分の名前があったね



そりゃそうだよ
62. 論文の本数で人を判断しなくなる



アカデミアでは研究業績を論文の出版本数で測る傾向がある。博士課程の間に〇本出したからすごいとか、あの先生は教授になってからまだ△本しか出していない、とかね



なかなか露骨だね



確かに、たくさん出版している人はすごいんよ。ただ、論文を何本か出版すると、業績のすごさを本数では測らなくなるよ。というか、測れないなって分かる



そもそも研究って、運要素が強いじゃん。論文が出やすいテーマもあれば出しにくいテーマもあるだろうし。論文を量産できるからといって、中身があるかどうかは別問題なんだよ



そっかぁ。もちろんIFが高い雑誌に論文掲載されたからといって、偉いわけじゃないもんね



そりゃそうだよ。研究の価値は、何十年も経った後にようやく分かる。論文一本一本に魂を込めて書くのが大事なんだと分かったよ



たまにはいいこと言うじゃん



え、ずっと言ってきたつもりだけど?
63. 他人の研究の大変さが分かり、尊敬できるようになる



論文を何本も書くようになると、他人の論文を見る目が変わりそうだね



うん。綺麗なグラフが一枚載っていると、この裏で何回実験したんだろうなって考える



論文には成功した実験のデータしか載っていないもんね



そうそう。実際には、条件が決まるまで何十回も試しているかもしれない。装置が壊れたり、査読で追加実験を要求されたりしたかもしれない。自分も論文一本出すのに散々苦労したから、完成品を見ると、この人たちよく最後までやったなぁって思う。すごいなぁって



論文を読むたび、裏で繰り広げられたドラマを想像するのか



Figure 1を見る前に、著者らへ合掌する。南無南無、南無南無…



まだ生きてるからね
64. 学会で声を掛けられるようになる



学会って、毎回知らない人ばかりのところへ行く感じ?



最初はそうだったよ。発表回数を重ねるにつれ、過去に発表した研究を覚えてくれている人が現れる。有名人になれる



規模が小さいわ



ポスター会場で立っていたら、前の学会で話した先生から、その後どうなったのって声を掛けてもらうこともある



研究の続編を待ってくれてるんだ
嬉しいね^ ^



ホントにね
学会発表って、連載漫画みたいだよね



休載すると、次の学会が気まずいし、ね



気を抜けないね
65. 学会発表が楽しみになる



さっきは質疑応答が怖いって言ってたのに、学会が楽しみになることもあるの?



うん。発表に慣れてくると、新しいデータを携えて壇上で話して、他の研究者がどう反応するか見たくなるんだよね



自慢しに行くの?



そうそう。この結果、すごいでしょって
学会では、論文を読んで気になっていた研究者の発表を聞くこともできる。学会へ行くたびに顔見知りも増えるから、だんだん遠足みたいな気分になってくる



そうなんだ



指導教員も同じことを言ってたな。学会で知り合いと会えるのが楽しみだって



いいなぁ
ぼくも博士課程に行きたくなってきた



行っちゃいなよ
グイッと



ウィスキーかよ
66. 論文の被引用数を眺めてニヤニヤできる



論文を出したあとって、何かすることあるの?



あるよ。Google Scholarを見て、引用数が増えていないか確認する



えっと、何のために?



自分の出した論文が誰かに引用されたら、嬉しくない? だって、研究が世の役に立ったってことじゃん。文献管理アプリに登録してもらえるだけで幸せだし、引用されちゃったら、もうね、



なによ?



嬉しいんよ



そうですか
0が1になったら嬉しいよね。1が2になったら?



嬉しいよ



2が3になったら?



超嬉しい



3が4になったら、超超嬉しい?



うん
67. 海外の研究者から質問メールが届く



論文って海外の人も読むんよね



読むよ。ある日、知らない海外の研究者からメールが来ることがある



英語で?



そう、英語で。あなたの論文を読みました、この実験条件について詳しく教えてほしい、とか



すごいじゃん。地球の反対側から、ご指名で質問が届くんだ。返信はどうするの?



丁寧に書くよ。一文字ずつ人差し指でポチポチ打つ



はよ書けよ
せめて両手で頑張ろうよ
68. RAで指導経験を積める



博士学生は、学生実験の講義で後輩に実験を教えることがある



RA(リサーチ・アシスタント)ってやつだよね



そう。何に気を付けて実験するかとか、どうやってデータを考察するかとか、学部生と一緒に考えるんだよ



先生みたいだね



教えてみると、自分が分かったつもりだった部分も露呈するよ。後輩から、なんでこの操作をするんですかって聞かれる。昔からそうしてるからです、では済まないんだな



素人質問が飛んでくるのか
答えられなかったら、恥ずかしいね



意外とね、



答えられる?



答えられない
理解があやふやになっているなって気付かされて、あとで急いで勉強する



全然ダメじゃん
この先輩、頼りにならない



うるさいなぁ
分かんないものは分かんないんだから、仕方がないだろ
69. チームマネジメント力が鍛えられる



博士課程って、自分の研究を一人で進めるイメージがあるけど、複数人でやることもあるの?



あるよ。後輩と一緒に実験したり、共同研究者から測定結果をもらったりして、一つの論文を作ることもある



自分のリズムで仕事を進められないんだね



そうなんよね。自分の実験が終わっていても、別の方の解析結果が来ないと論文を書けないことがある。だから、いつ頃できそうか相談して、こちらも先に進められるところを進める



博士学生なのに進捗管理までやるのか



そう。それでさ、あるデータのシミュレーション結果が待ちきれなくてさ、論文を書いて出しちゃって、



え! で、どうなったの?



四回連続でリジェクトされた笑



笑いごとじゃないよ
データ不足だよ



待てばよかったなって後悔した
70. 後輩の成長を間近で眺められる



後輩に実験を教えていると、その人が上手くなっていくところも見られるんだよね



見られるよ。最初は装置の使い方から教えていた学生が、何か月かすると自分で実験条件を考え、データを持って相談に来るようになる



おお、すくすく育ってる



さらに時間が経つと、こっちが何も言わなくても研究を進めていく。なんか達成感があるよ。自分が教えたことも、多少は役に立ったのかなって



親みたいな気分?



そこまでじゃないわ
卒業式で泣き始めたら重すぎるだろ



さすがにね


















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