札幌と筑波で電池材料研究をしている北大化学系大学院生かめ (D1)です。10月から英国・オックスフォード大学に長期留学中です。
留学に出発する直前、9万円ほどのコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)を買いました。スマホで高画質の写真を撮れる時代に、なぜわざわざ高価なカメラを買い足したのか。出発前の私自身、レジに進む寸前まで自問していました。本当に、スマホでよくないか、と。
結論を先に書いてしまうのは野暮なので避けますが、半年が経ったいま、カメラのストラップを首から下げて石畳の上を歩く自分が、出発前にレジで震えていた自分に伝えたいことが幾つかあります。本記事はその伝言の代わりに、長期留学にコンデジを持っていって良かった理由を、3つ書き残しておきます。
かめそれでは早速始めましょう
圧倒的な高画質。スマホの次元を超えた写真が手元に残るから


スマホでも高画質の写真は撮れます。ただ、10万円近いコンデジの性能には、現状まだ敵いません。
画素数を比べてみると、両者に大きな差はありません。むしろスマホのほうが多いケースさえあります。ですが、画像を処理するメモリの性能には大きな差があります。
コンデジは写真撮影に特化した機械なので、大きなメモリを積んでいます。一方、スマホは写真撮影もできる機器であり、写真処理に潤沢なメモリを割いてはいません。この差は、撮影画像を拡大したときに表面化します。スマホの写真は各画素がぼやけて見える瞬間があるのに対し、コンデジは画素単位で高品質。色鮮やかな一枚を残せます。
この章の先頭に挙げたのは、コンデジで撮影したオックスフォード大学のクライストチャーチカレッジ。これほど鮮やかな写真をスマホで撮るのは、なかなか厳しいのではないでしょうか。
せっかく海を渡るのです。目に映った景色を、目に映ったままの形で残したくありませんか。お金を積んでコンデジを買えば、一生の思い出を最高の形でいつでも引き出せるようになります。今や被写体にレンズを向ければ、機械の側が勝手に最適な設定を組んでくれる時代。一眼レフのような小難しい設定を覚えなくてはいけないのかな、と身構える必要もありません。レンズを向けて、シャッターを押すだけで、最高画質の一枚が完成するのです。
スマホのバッテリーを節約できる。機能分担で本来の役割に専念させられるから


写真を撮ろうとすれば、その都度、機器に電源を入れなければなりません。スマホならスマホ、コンデジならコンデジの電池が削れていくでしょう。
コンデジは撮影専用機なので、電池が切れても特に問題はないでしょう。写真が撮れないのは問題ですけれども、写真を撮れないからと言って死にはしません。しかし、スマホはそうはいかない。道に迷ったり、トラブルに見舞われたりしたとき、スマホの電池が切れていたら窮地に陥る可能性があります。そう、異国の地でスマホは命綱なのです。
写真撮影をカメラに任せられれば、スマホの電池を長持ちさせられます。撮影のたびにスマホの電源を入れ直す必要もなく、頻繁な電源のオン・オフによる電池へのダメージも減らせるでしょう。結果として、スマホの電池をいざというときのために温存しておけるわけです。
私はとにかく道に迷う人間で、スマホの地図機能で現在地を確認する頻度が異様に高いです。ただでさえ消耗の激しい電池を撮影にも回していたら、満充電で家を出ても、夕方前には電池切れを起こしていたかもしれません。
もっと良い一枚を求めて、外へ出るようになったから


格好よくてオシャレなカメラを首から下げれば心が昂ります。レンズを構え、シャッターを切る瞬間に快感が走る。
カメラを買うまでの5年間、私が撮った写真は500枚程度でした。ところがオックスフォードに来て以降、ひと月で500枚ペースで狂ったように撮りまくっています。写真とは、こんなに楽しい遊びでしたか。
何も考えずオートモードで撮るだけでも面白いのに、あえてマニュアルモードに切り替え、フォーカスやパラメータを自分の手でいじってみるのもまた一興。設定ひとつで写真の雰囲気が全然違ってきて、楽しいです。
撮影が楽しくなってくると、もっと撮りたい、と心が叫び始めます。撮るためには屋外に出るしかなく、結果としてよりアクティブになれます。土日、特に用事がなくてもカメラを片手に外へ出て、街中の何気ない風景にさえ魅力を感じ取り、シャッターを押すのです。
世界中のありとあらゆるものが被写体に変わるこの感覚は、至高と言っても過言ではありません。カメラを持つ前と後で、目に映る景色がまるで変わってしまったのです。
最後に
レジで震えていた半年前の自分に、いま声をかけられるとしたら、私は迷わずこう言うはずです。「買え」と。あのとき怯えながら買って手に入れたコンデジは、半年後のクライストチャーチ・カレッジの石壁になり、テムズ川の朝霧になり、パブの窓から漏れる橙色の光になって、私の手元に戻ってきました。記憶は時間とともに薄れていきますが、画素単位で焼き付けられた風景はそう簡単には色褪せません。
留学にカメラを持っていく価値があるかどうか、と問われたら、半年前の私のように躊躇している人にこそ、家電量販店でひとまずレンズを覗いてみてほしい。カメラなんて時代遅れですよ、と切り捨ててしまうには、世界はあまりにも撮り甲斐がありすぎます。少なくともオックスフォードの石畳は、スマホでは収まりきらない情報量を抱えていました。























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