研究室生活春夏秋冬vol.22 M1・12月 論文執筆とフェローシップ

目次

論文執筆が佳境に入る

IF42という高インパクトジャーナルへの投稿を目指し、7月から取り組んできた論文がようやく佳境を迎えていた。最大の難関だったイントロダクションを乗り越え、つくばの共同研究者による添削を待つ段階まで漕ぎ着けた。私は長き執筆の道のりを振り返り、感慨に浸っていた。

指導教員によれば、電気化学分野の論文は通常3ヶ月程度で完成するという。私のように半年を要するケースは極めて稀だそうだ。しかし、その「完成」さえも、まだ道半ばだった。

共同研究者から突如として「一回リセットして構成を考え直してみようか♪」というメールが届いた。論文の骨格を根本から見直す提案だった。図表の配置順を変更するということは、それに付随する結果と考察のセクションも再構築する必要がある。さらに、順序の入れ替えに伴い、各図表の説明内容も微調整を要した。この予期せぬ修正作業が、私の憩いの時間を再び奪っていった。作業完遂には年明け1月中旬まで要した。残すは英文校正のみ。ようやく重圧から解放される時が訪れた。

クリスマスイブの贈り物

慌ただしい11月に申請したフェローシップの結果がクリスマスイブに届いた。「内定」の二文字に、私のD進後の経済的不安が一気に払拭された。このフェローシップは、月額15万円の研究奨励金に加え、年間40万円の研究費、さらには就職支援まで含む手厚いサポートを博士課程3年間にわたって提供するものだった。

これは私にとって計り知れない意味を持っていた。もしJASSOの実質的な学生ローンに頼らざるを得なかったら、博士修了時には数百万円規模の借金を背負うことになっていただろう。そう考えると、このような支援制度のなかった時代の博士課程の学生たちの苦労は想像するだけで身が震える。

私の専攻では3名の募集枠があり、応募者も3名だった。しかも応募者は私と同じ研究室の同期、そして別の研究室の親しい同期という顔ぶれ。全員が採択されたことで、喜びは倍増した。

この朗報を受け取ったのは、毎年恒例のクリスマスイブの献血から帰る道中だった。「良いことをしたらちゃんと還ってくるものだなぁ」と、善行が報われた喜びを噛みしめた。このフェローシップ内定により、私のD進は確固たる現実となった。次なる課題は、年末年始の帰省での両親への報告。その重要な一歩を前に、私は静かな決意を胸に秘めていた。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

カテゴリー

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次