研究室生活春夏秋冬vol.19 M1・9月 指導教員へ博士進学を宣言

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初旬:実家へ帰省してD進の気配を漂わせる

初旬、私は静かな決意を胸に実家への帰省を決めた。先月にはすでにD進への思いが99%まで膨らみ、その道筋は確実なものとなっていた。だが、一人っ子である私にとって、この選択は家の存続にも関わる重大事。親の心情を探りに行かねば、後々の波乱も懸念された。

そこで9月初旬、広島の実家へと足を運び、さりげなくD進への意思を匂わせることにした。正式な宣言はM1の年末に予定していたが、その布石として、この機会に両親の反応を確かめておく必要があった。

研究室での日々を語る私の目は自然と輝きを帯びていた。「もちろん楽しいことばかりじゃない。でも、自分の手で新たな発見を生み出す喜びは他の何事にも代えがたいんだ」と研究への情熱を存分に語った。

それまで大学での様子を殆ど話さなかった私が、突如として饒舌に語り出したものだから、両親も驚きを隠せない様子だった。だが、我が子が研究に没頭する姿を見て、彼らの表情は次第にほころんでいった。

そこで私は計算された演技を披露した。「こんな面白い研究があと1年半でおしまいかと思うと…」と、意図的な物憂さを滲ませてみせた。就職後の研究開発では自由度が格段に下がる。その事実を踏まえ、学生生活の終わりが近づくことへの切なさを演出したのだ。

効果は予想以上だった。「そこまで言うならもう少し大学院に居てもいいかもね」という言葉に、私は内心でガッツポーズを作った。ただし、続く一言で現実に引き戻された。

「博士に行くなら自分のお金で何とかしなさい」

D進後の経済的問題を真剣に考えていなかったことに気付かされた。学振DC1の採択を目指して努力はしているものの、それを前提としたプランでは、不採択時に詰んでしまう。M1のクリスマスまで、資金調達の方策に頭を悩ませることになった。

初旬:国際学会でのポスター発表

帰省中、国際学会でのオンラインポスターセッションを行った。Zoom上で自身の研究を発表するという形式。正直なところ、自分の専門性の高い研究に興味を示す人などいないだろうと高を括っていた。

案の定、2時間のセッション中、最初の1時間半は閑古鳥が鳴いていた。しかし残り30分を切ったところで、突如として韓国人研究者が入室。のんびりモードから一転、真剣な英語でのディスカッションが始まった。

相手は私の研究を深く理解し、明瞭な発音で質問を投げかけてくれた。初めての英語ディスカッションながら、私も思いのほか堂々と応答できた。ただ、「この研究の応用価値は?」という質問に「分からない(笑)」としか答えられなかったのは、少々心残りだ。

下旬:指導教員へD進宣言

9月下旬からの2ヶ月に及ぶつくば出張を前に、私は重要な決断を下した。出発前日、休日出勤していた指導教員の部屋を訪ね、「博士課程へ行きます」と宣言したのだ。

その後の3時間、私たちは博士課程への進学理由や今後の研究活動について熱く語り合った。先生からはDC1以外の経済的支援の可能性についても示唆を得た。このタイミングでの宣言には理由があった。つくばでの2ヶ月を、確固たる目的意識を持って過ごしたかったのだ。

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