「学振DCは有名研究室の学生しか通らない」は嘘

北大と国研で研究している化学系大学院生かめ (D2) です。研究室史上初の課程博士学生となり、研究室で初めて学振DC1に採用されました。

学振DC1採用者の所属を調べてみると、旧帝大や首都圏有名大の有名研究室に所属している場合が多いようです。指導教員自体が学振DC内定経験者であるケースも多々見受けられます。

このように書くと「有名研究室に所属していない自分には通る可能性がないよな…」と落ち込む方が現れるかも。安心してください。そのようなことはないですよ。私自身、ネームバリューが高い研究室に居る訳ではありません。学振DC1に内定する前までは「ビッグラボのライバルには勝てないかも」と思っていました。そもそも私の進学前は博士学生すらいない研究室だったのです。そんな無名研究室の私でもDC1に採択されました。採用者の中で最高峰となる年間140万円×3年の科研費を添えて。

研究室や指導教員のネームバリューは、採用可否を決定付けるものではありません。この記事では、有名研究室の学生が学振に通りやすい理由、および我々無名研究室の学生が学振に通りたければやるべきことを記します。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

学振内定と所属研究室のネームバリューに正の相関がある理由

有名研究室の所属学生が学振に多く通っているのは事実。しかし、所属研究室が有名だから通りやすいのではありません。それはあくまでも結果論。有名研究室には学振DC内定メソッドが受け継がれているから通りやすい傾向があるだけです。

学振DCに採用されるにはコツがあります。採用されるために必要な業績量1も、それらを集め切るにはいつ頃から動き出せばいいのか2も、内定を得やすい申請書の作り方3も昔からさほど変わっていないでしょう。有名研究室内では内定者のデータが先輩から後輩へと受け継がれているのです。業績量然り、内定者の申請書然り、申請書作成で気を付けたポイントもまた然り。学振DC内定を掴む方法論が確立してしまっています。内定メソッドは、申請書のフォーマットが多少変わった所で決して揺らぎはしません。

有名研究室と無名研究室とで圧倒的に異なるのは情報量。博士進学者の少ない無名研究室では実体験に基づくアドバイスを貰いにくいでしょう。DC1内定には業績が重要だと知らなければ、業績を集め始める時期で後れをとるかもしれません。申請書を他人に見てもらう機会に恵まれなければ、ブラッシュアップが不十分なまま提出となり、審査員に研究の魅力を伝えきれないまま不採択となってしまう可能性も。結論、ネームバリュー云々は関係ありません。所属研究室間の情報格差が内定確率の高低を生み出すのです。

学振DC内定には、学生個人の能力が一番重要

学振DCの採用確率は20%以下。博士進学を志す/進学した者のうち、6~7人に1人しか採用されません。とはいえ、有名研究室の所属学生が必ずしも採用されている訳ではないのです。有名研究室の学生プロフィールを見ると、学振ではなくJSTフェローシップを受給している方がチラホラ。逆に、無名研究室の学生でも採用されている場合があります。研究室史上初の学振採用者となった私をはじめ、地方国立大で孤軍奮闘している学生がDC1に採用されているのを確認できるでしょう。

学振DC内定に最も重要なのは学生個人の実力。所属研究室のネームバリューではなく、申請者各位の研究計画構築力や業績量がモノを言うのです。

有名研究室に所属していた方が内定メソッドを活用できる分だけ有利。たとえどれだけ素晴らしい方法論を持っていようとも、学生個人が研究や努力を怠ってしまえば、折角のリードも無駄になってしまうでしょう。無名研究室に所属する学生は決して研鑽を怠らぬように。有名研究室の所属学生と多かれ少なかれ差があることを自覚し、目の前に広がるリードを各々の努力で埋めるために周囲の利用可能な資源をフル活用して下さい。

隣の芝を羨む前に、まずはやるべきことをキッチリとやろう

『学振DCは有名研究室の学生しか通らない』は通らなかった人の言い訳にすぎません。無名研究室出身でも通ります。私も、私の所属研究室の後輩も、無名研究室からDC1に採用されました。

有名研究室の学生を羨む前にまずは自分のなすべきことを済ませましょう。学会に出て発表しよう。プレゼンスキルを磨いて賞を取ろう。データをまとめて論文を書こう。自己アピール用のエピソード素材を作ろう。死力を尽くして学振DCに挑み、それでも落ちてしまったら仕方がありません。本気で頑張る前から諦めぬように。内定確率アップの術を申請書提出寸前まで血眼になって探してください。

最近では、研究業界の多様性を確保するため、有名研究室の学生に学振DC内定が集中するのを防ぐ措置が講じられているそうです。評価へ業績を過度に重視しないようにしたり、研究計画を精査して独自性を昔よりも重視するようになったり。無名研究室の学生が採用される可能性は上昇傾向に。今後、学振制度の更なる改革によって一層通りやすくなるでしょう。

無名研究室出身の私は、自分と同じような境遇の人間が有名研究室との情報格差を少しでも無くすために当サイトを作りました。当サイトはWEBサイト。24時間・365日、世界のどこからでも閲覧可能。分からないことがあれば札幌デンドライトの記事一覧からお探しください。もしも読者さんからリクエストをいただければ、新しく記事を執筆するつもりです。

脚注

  1. 【博士進学】日本学術振興会特別研究員DC1へ内定するには ↩︎
  2. 学振DCの存在を知ってからDC1に内定するまでの軌跡 ↩︎
  3. 【2022年度申請書】学振DC1内定を掴んだ『研究遂行力の自己分析』と『目指す研究者像』と『評価書』 ↩︎

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

カテゴリー

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次