【学振DC】研究遂行経費と科研費の違い

北大と国研で研究している化学系大学院生かめです。日本学術振興会特別研究員DC1としてご支援いただいております。

特別研究員として採用されると、給与以外にも研究費の支援を受けられます。その支援は主に「研究遂行経費」と「科研費」の2種類。しかし、これらの制度にはビギナーさんを戸惑わせる複雑さがあるのです。私自身、採用当初は両者の違いを正確に理解しておらず、効率的な研究費の活用に苦心した経験があります。

そこで本記事では、私の実体験を交えながら、研究遂行経費と科研費の違いについて分かりやすく解説していきたいと思います。この記事が、特別研究員として採用された方々の研究活動の一助となれば幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

額の規模

  • 研究遂行経費:年額72万円
  • 科研費:人によって異なる(約100万円)

研究遂行経費の額は、特別研究員全員が同じ。給与の三割に相当する月6万円(年額72万円)が経費枠に設定されています。学振DCから学振PDに資格変更しても経費枠の割合はDC時代と変わりません。月給36.2万円の三割に当たる月10.9万円が経費枠になるのです。

科研費の場合、特別研究員ひとりひとりに割り当てられる額が異なります。科研費の額は、申請分野や申請書の出来によって変わってくるでしょう。予算の少なめな文系分野は年額50万円程度。理系分野の相場は100万円。飛びぬけて優秀な理系人材には、最大値の150万円近い額があてがわれます。特別研究員時代に科研費をたくさん受給したければ申請書の作り込みが必要です。採用者の中でも突き抜けた業績量をも求められるでしょう。

お金を貰えるか貰えないか

  • 研究遂行経費:もらえない
  • 科研費:もらえる

研究遂行経費は経費「枠」。自分の給与から研究に割いたお金を経費認定していただくだけのもの。実際にお金がもらえるわけではありません。経費として認めて貰えたものに限って所得を抑えられ、それが節税に繋がります。

科研費の場合、お金はもらえます。ただし、研究のために費やしたお金が後で口座に振り込まれるのです。特別研究員自身の立て替え払いが必要。使った分だけ後で補填される仕組み。その観点から鑑みれば、科研費というより科研費「枠」と申し上げた方が適切でしょう。年額150万円の科研費があてがわれるといっても、口座の中へドカンと150万円振り込まれるわけではありません。

使途

  • 研究遂行経費:研究関連の支出分
  • 科研費:研究関連の支出分

研究遂行経費も科研費も、使途はほとんど変わりません。研究関連の支出ならばだいたい認定してもらえます。使用する優先順位は科研費の方が上。科研費ならば後で補填してもらえるから懐が痛みません。研究遂行経費は自腹になってしまって、使えば使うほど懐事情がますます苦しくなってくるでしょう。

使用手続き

  • 研究遂行経費:年に一回、4月に申請
  • 科研費:逐一申請

研究遂行経費の使用手続きはシンプル。年に一度、使用分だけマイページで申請して認可を待つ仕組み。書類も何も必要ありません。何に何円使ったかは全て自己申告制です。研究遂行経費として使用した分をどこかへ記録しておけば申請するとき楽ですよ。自分はD1時代、経費を一切メモしていませんでした。そのせいでD2の頃、D1時代の経費を申請するにあたって面倒なことになりました。

科研費の使用手続きは随時。お金を使おうとするたびに申請が必要です。領収書や宿泊予約証明書、航空便搭乗証明書などを専用フォームにてアップロードせねばなりません。書式の書き方やアップロードすべき書類が不足していると、大学事務から再提出の催促メールが届きます。ハッキリ言って申請は超面倒。お金をもらえるからやるしかありません。

使用手続きの複雑さの違いから、少額な研究用途の支出は研究遂行経費で済ませてしまいます。科研費を使うのは万単位の使途のみ。科研費使用申請がもう少し楽になれば気軽に使えるのですが…

最後に

研究遂行経費と科研費には、明確な使い分けポイントがあります。研究遂行経費は経費控除による節税支援。科研費は、使った費用を後から補填してもらえる直接支援です。

私たち特別研究員は普段、この2つの制度を金額で使い分けています。高額な支出には科研費、小さな支出には研究遂行経費というのが定番パターン。科研費は申請が面倒だけど補填があるし、研究遂行経費は手続きが楽だけど自己負担が必要なのです。特別研究員になられた方には、研究遂行経費の使用記録をつけておくのをオススメします。後からまとめて経費枠分の支出を調べるのは面倒ですよ。

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