【学振DC・学振PD】研究遂行経費のメリットとデメリット!使い切れなかったらどうなるか

札幌と筑波で電池材料を研究している北大化学系大学院生かめ (D2)です。日本学術振興会特別研究員DC1として日本政府からご支援いただいております。

学振DC・PD内定者の頭を悩ますのが『研究遂行経費』を申請するか否か。申請するメリットってあるの?もしも申請しなかったらどうなるのだろう?そもそも研究遂行経費ってなに?正直な所、申請してみるまでは研究遂行経費の実態がよく分からないかもしれません。昔の私だってそうでした。特に何も分からないまま研究遂行経費を申請してしまったのです。結果的には申請しておいて大正解。この記事を最後までお読みになれば、研究遂行経費を申請すべき理由が皆さんにもお分かりになるかなと存じます。

かめ

それでは早速、研究遂行経費の解説に移っていきます

目次

研究遂行経費とは、税金対策のこと

研究遂行経費とは何なのか?ひと言でまとめるならば【税金対策】です。

研究遂行経費を申請すれば、所得税の賦課対象となる課税所得額を下げられます。本来は年間240万円の所得に対して負荷されるはずだった所得税が、3割の経費枠を除き、残りの7割 (168万円) に対してしか課税されなくなるのです。所得税簡易計算ツール [リンク]を用いて所得税額をシミュレーションしてみました。左が経費を申請した場合、右が経費を申請しなかった場合の所得税になります↓

経費申請した場合
経費申請しなかった場合

研究遂行経費を申請すれば年間3.2万円もの節税に。およそひと月分の食費に相当する出費を抑えられると考えたら大きいと思いませんか?

学振特別研究員は所得額の都合上、親の扶養には入れないため、健康保険を離脱して新たに国民健康保険 (国保)へと加入することに。課税所得額が減れば国保料をも抑制可能。国保の保険料 (国保料)は課税所得額に応じて変動します。課税所得額が多ければ多いほど国保料は上がり、少なければ少ないほど国保料が下がっていく仕組み。国保料シミュレーター [リンク]を用いて国保料をシミュレーションしてみました。左が経費を申請した場合、右が経費を申請しなかった場合の国保料です↓

経費申請した場合
経費申請しなかった場合

研究遂行経費を申請すれば年間6万円以上もの国保料節約が可能。6万円あれば何でもできます。ハーゲンダッツアイスクリームを180個買い、隔日で一年中あの極上の食べ心地を味わえるのです。

研究遂行経費を申請すれば、所得税と国保料とを合わせて年間10万円弱もの税金削減に。ただでさえ手取りが少ない学振特別研究員の家計防衛手段として利用せぬ手はありません。

どのようなお金が経費として認められるか?

日本学術振興会曰く、研究遂行経費として認められるのは以下4つの出費だそう↓

  1. 学会関係経費
  2. 各種研究集会等への参加費
  3. 学術調査に係る経費
  4. 所属・関連機関への交通費

①学会関係経費とは、学会の年会費や参加登録費のこと。学会の運営側としてお金を出せば会場運営費をも経費枠に入れられます。

②各種研究集会等への参加費とは、自宅と学会発表会場の間を往復するための交通費。研究費ではカバーされない分の交通費 (家ー空港間、新幹線駅ー学会会場間など) をこの項目にて計上することができます。

③学術調査に係る経費とは、研究に費やしたあらゆる出費のこと。実験試料はもちろん、カメラ、パソコン、モニター、専門書など多種多様。私の場合、研究連絡用に使っているスマートフォンの通信費をも計上できました。ChatGPTの利用料まで申請可能。もはや何でもアリですね。授業料と家賃は例外的に計上できない点に要注意。

④所属・関連機関への交通費とは、共同研究先へ赴くための出費。学振PDなら自宅ー所属研究室間の往復交通費をも含められるそうです。

研究遂行経費を申請するメリットとデメリット

ここで改めて、研究遂行経費を申請するメリットとデメリットを整理しておきましょう。

メリット:年間十万円単位の節税になる

最大のメリットは税金の支出を抑えられる点。所得税なら年間3万円、国保料に至っては年間6万円以上減らせます。

大半の学生の場合、博士課程では自活していかねばなりません。食費や光熱費、その他もろもろの生活費全てを自分の懐から拠出する必要が。学振特別研究員の収入は月20万円 (←給与が上がれば月24万円)。私のような地方住みの人にとっては十分でも、関西や関東にお住まいの方からすればあまり余裕を持って生活できる額ではないでしょう。無駄な出費は一円たりともしたくないはず。支払わなくて済む出費はなるべく抑えていきたいですよね。研究遂行経費を申請すれば10万円弱のお金を手元に置いておけます。月換算だと8,000円。8,000円あるか無いかで生活余裕度が随分と変わってきますよ。

デメリット:経費の申告があまりに面倒臭い

敢えてデメリットを挙げるとすれば、経費申告が超絶面倒臭い点でしょうか。自分が何にお金を使ったのかをひと項目ずつ手入力せねばなりません。前年度分の経費申請を行うのは4月。ただでさえ報告書の執筆で忙殺されるこの時期に経費申請まで行うのはホント大変。申請時期までに経費の使途を整理しておけばまだ楽でしょう。私は整理を面倒臭がった結果、過去一年分のクレジットカード明細とAmazon購入履歴とレシートの山を眺め、経費申請できそうな項目を抽出していく地獄を味わいました。お金を使うたびにスプレッドシートへ使途を記入しておけば良かったです。D1時代の反省を踏まえ、D2現在、経費申請できそうなお金を逐一記録しています。

経費枠を使い切れなかったらどうなるか?

研究遂行経費枠は所得の3割分に相当。学振DCなら72万円。学振PDならおよそ130万円。経費枠を全額使い切れば何の問題も生じません。経費枠を余らせてしまった時がちょっと厄介。どうなるか?追徴課税を食らうのです。使い切れなかった経費枠分の10.21%を別途支払う必要が [日本学術振興会]。仮に経費枠を10万円余らせたとしましょう。追徴課税額は100,000×0.1021=10,210 [円]になります。

私の場合、D1時代に経費枠を6万円余らせてしまいました。どう贔屓目に見ても経費枠に入れられそうな支出が66万円しかなかったのです。D2の6月中旬、日本学術振興会から追徴課税を伝えるメールが。D1時代の追徴課税分はD2・7月分の報酬額から源泉徴収されるようです。特別研究員最終年度に追徴課税額が発生した場合、特別研究員退任後の支払いに。大学院修了以降も院生時代の税金を支払わされるのは心苦しいですね。

経費は正直に申告しよう。嘘をついて罰金を食らうより追徴課税を支払った方が良い

経費の申請がいくら面倒だとはいえ、経費申請時に領収書の提出が求められるわけではありません。あくまでも自己申告。どの項目に何円使ったか、その本当の所は己のみしか知らないのです。

嘘をつこうと思えば簡単につけます。余程あからさまな嘘以外は、おそらく、学術振興会側に露見しないでしょう。数字をちょちょっといじくれば経費枠を簡単に満額埋められるはず。追徴課税を免れるために嘘をついている特別研究員の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、特別研究員は嘘をついてはいけません。研究遂行経費制度が特別研究員の良心を信頼して運用されているためです。研究員と学術振興会との信頼関係が崩れたが最後、経費制度がなくってしまいます。たった一人の嘘が原因で、特別研究員全員が年間10万円程度の支出増に苦しまねばならなくなるだなんて酷い。

また、申告の嘘がバレた場合、追徴課税どころの騒ぎではなくなるでしょう。良くて罰金。悪くて特別研究員解雇。最悪の場合、大学から追い出される可能性も。これほど大きなリスクを背負って嘘をつくぐらいなら、経費枠を使い切られなくても正直に申告して追徴課税を支払った方がマシ。せいぜい数千円~数万円の課税です。嘘をつけなかった正直者の勲章として甘んじて受け入れましょう。

最後に

学振DCや学振PDの研究遂行経費に関する解説は以上。私の研究遂行経費の使用使途を以下の記事にまとめましたので、もし宜しければご覧ください。

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