北大と国研で研究している化学系大学院生かめです。2023年4月より日本学術振興会特別研究員DC1として研究しています。
博士進学の検討を加速中の皆さんにとって「学振DC1」は気になる存在。採用者は年間700人。その称号を得られるのは各世代トップ学生だけ。栄誉を求めて血眼になっているでしょう。DC1内定の可否に極めて大きな影響を及ぼすのが申請書。研究計画や自己分析について詳細な記述が求められるのです。
以前、当サイトでは、私の学振申請書(自己分析欄)と申請書全体の記し方を解説しました。しかし、執筆を開始すべき「時期」についてはまだ伝えられていませんでした。
そこでこの記事では、学振DCの申請書作成にはいつから着手すればいいか教えます。
- 学振DC内定を目指していらっしゃる方
- 学振DC内定確率を少しでも高めたい方
こうした方々にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧いただければと思います。
それでは早速始めましょう!
- 2022年9月:日本学術振興会特別研究員DC1 内定(140万円×3年の研究費)
- 2023年7月:JASSO第一種奨学金修士課程Ver. 返還半額免除
早ければ半年前。遅くとも2月初旬
学振DC申請書へ着手すべき時期は、ズバリ「提出半年前」です。例年、申請書はゴールデンウィーク明けの提出となります。その半年前にあたる12月中旬あたりから書き始められたら最高でしょう。
えぇぇぇーーー!!!
ちょっと早すぎるんじゃないっすか?
さすがに年明けからで良くないですか?
…ダメ?
ダメです。絶対に内定したいなら年明け前から始めて下さい
にゃん…
例年、申請年度の書類テンプレートは、提出3か月前の2月に公開されます。大半の申請者はテンプレ公開を待ってから書き始めるようです。
当サイトでは、それよりはるか前からの着手を推奨いたします。学振DCは、受かる人よりも落ちる人の方が圧倒的に多いセレクション。内定するにはライバルと少しでも差をつけて出し抜かねばなりません。他人と何かで差をつけねばならない。ならばせめて「執筆へ費やす時間」ぐらいは傑出した存在でいたいものです。
申請書執筆には、どれだけ遅くとも「2月初旬」には取り掛かって下さい。書き始めてから提出するまでに少なくとも3か月半は欲しいです。3か月ないと皆さんを受からせる自信がありません。本当は年明け前に始めて欲しい所。研究スケジュール的にそれが難しい人も居るでしょうから2月初旬と申し上げています。2月初旬から始める場合、テンプレ公開直後からの猛スパートを覚悟しておいてください。
構想に一か月半、推敲に一か月、添削修正に半月必要
申請書執筆は以下3段階から成ります↓
- 全体の構想:1.5~3カ月
- 文章推敲:1~2カ月
- 文章の添削修正:1カ月
それぞれについて解説していきましょう。
全体の構想:1.5~3カ月
申請書を作成するにあたって、まずは頭の中で構想を練ってみましょう。どの時期にどのような研究を行いたいか。それを進めるための手段はあるか。どこまで研究が進めば良しとするか。研究のKPIは何なのか。海外への留学はどうするか… きっと、妄想がとめどなく膨らんでいくでしょう。楽しいですね。存分に妄想してください。
悲しいかな、申請書に全てを盛り込むことはできません。何を書き、何を書かないかを取捨選択しなければならないのです。内容を絞り込めば絞り込むほど端的で深い書類が出来上がります。広く・浅くだとのっぺらぼうな申請書になる。我々申請者は、審査員さんの記憶に残る内容を目指さねばなりません。アピールポイントを絞って自らの個性が伝わるよう心がけましょう。
なお、申請書へ”記さない”と決めた内容は、頭の中で忘れてしまわぬようどこかへ書いて保管しておいてください。博士進学後、事前に立てた研究計画を完遂したときに取り掛かる時間があるかもしれません。あるいは、研究計画破綻時の救世主となりうる可能性も。計画は所詮、理想論でしかない。失敗する可能性を鑑みて、なるべく多くのプランを持って進学すれば後の苦労が減りますよ。
以上述べてきた「全体の構想」には、最低1.5カ月、できれば3か月費やしましょう。ここで時間をかけられればかけられるほど学振内定が近付きます。いきなり申請書執筆へ着手する方がいるかもしれません。構想ゼロで執筆へ取り掛かったら、書いては最初から書き直すヘビーローテーションになる危険性が大。頭の中の考えをまとめたいなら、白いA4コピー用紙へ色々と殴り書きするのがオススメ。私の場合、文章作成前にコピー用紙を30枚ほど使ってじっくりと構想を練りました。
文章推敲:1~2カ月
いよいよお待ちかねの文章執筆。頭の中で熟成された構想を言葉で具現化するプロセスです。
まずは申請書へ載せる図表を作り上げて下さい。文字100%の申請書よりも図表付きのモノの方が圧倒的に読みやすいです。審査員さんは現役研究者。日常業務の合間を縫って我々の申請書に目を通します。申請書を見た瞬間に文字しかなければ、泡を吹いて倒れてしまうかもしれません。審査員さんの目にやさしい、なるべく読みやすく分かりやすいレイアウトを心掛けるべき。
研究全体を象徴する概念図があれば満点。それを見ただけで計画の流れを掴める「分かりやすいイメージ図」があると良いですね。
図表作成後、研究構想内容を淡々と記していきます。主観を入れず、なるべく客観的に。”自分はロボットだ”と言い聞かせながら記すと論理的で明快な文章が出来上がるでしょう。書きたいことを全て書いていたら、おそらく内容が収まり切らないはず。構想ステップでもある程度絞り込んだでしょうが、文章執筆ステップではもっと絞り込まねばなりません。削って削って削りまくる。削りすぎたら適宜付け足してください。
我々申請者は、研究計画に加え、自己分析と評価書の提出も求められています。研究計画と比較したとき、完成度が多少甘くなってしまうパートかもしれません。皆さんが学振に受かりたければ自己分析の執筆も頑張りましょう。研究計画と同様、自己分析欄や評価書も評価対象になるからです。学振レースは、最低点まであと0.1点差で泣く人が現れる世界。ハナから失ってもいい点など1点たりともありません。
研究計画と自己分析を1~2か月で完成させましょう。完成したら、一度申請書と距離をとり、時間を空けて文書全体の推敲を行って下さい。最初は「これで完璧だ!」と思うかもしれません。申請書を一週間後に読んでみたらもっと良いアイディアを着想する可能性があります。思考は何度か寝かせることで成熟するもの。寝かせられるだけの時間的余裕を持つべく、早め早めの作成着手を心掛けましょうね。
文章推敲と同時並行で、申請書を周りの人に見せてフィードバックを受けるのがオススメ。独りよがりな内容になっていないか、もっと分かりやすい内容にできないか一緒に検討していきましょう
文章の添削修正:1カ月
自分で満足する内容が出来上がったら、まずは生成型AIに見せて誤字脱字を確認しましょう。Copilot AIやChatGPT (有料版でも) は誤字を結構な頻度で見逃がします。2025年1月現在、言語処理は「Claude AI」が最も得意です。Claudeの無料版だけでも文書は素晴らしい仕上がりになるでしょう。懐に余裕のある方はぜひ月$20払ってアップグレードしてみて下さい。世界が変わりますよ。AIってこんなに凄いんや…と恐怖さえ覚えるかも。
次に、申請書を指導教員か先輩に見せましょう。内容はもちろん、細かな言い回しまで徹底的に直してもらってください。相手の意見はまず聞き入れて。拒絶からではなく受諾から入りましょう。我々の申請書を審査するのは、我々ではなく審査員さん。他の人間と比べたときに申請書が優れていることが求められる以上、客観的な視点でのアドバイスを聞き入れるべきなのは道理です。
色々な人からのフィードバックを参考に、申請書をより一層ブラッシュアップしていきます。もうやるだけやった。これ以上は熟成させられない。コレで落ちても文句はない。後悔しない… そんな心境になったら提出しましょう。皆さんが採用されるのを心よりお祈り申し上げます。
執筆期間3か月未満で通る人がいるけれども例外的
当サイトで皆さんへご提案したのが最低3か月半の執筆期間。普通の人が採用へと至るには、ある程度時間をかけて記して勝算へ期待するしかありません。
もちろん、過去には、3カ月未満の執筆期間で学振DCへ通った方はいらっしゃるでしょう。皆さんの周りにも突貫工事で通った先輩がいらっしゃるかも。短期合格を掴んだ方々は「凄い人」だと思っておいてください。業績や自己分析エピソードの力でゴリ押ししたか、普段から文章を書き慣れていて執筆に時間がかからない人たちです。皆さんが「凄い人」なら三日前から始めても間に合います。極論、Natureへの掲載実績があるならば、締め切り当日から書き始めても良いぐらいです。
この記事は、そうした「凄い人」ではなく、圧倒的多数の「凄くない人」に向けて記しています。ビッグジャーナルへの掲載歴などない、ごくごく平凡な業績しかない方へ学振に通っていただくために作りました。凡人が学振へ内定するには、申請書をしっかり時間をかけて入念に作り込まねばなりません。しっかり事前準備を重ねて臨んでようやく天才と同じ土俵で戦えるのです。時間を費やせば費やすほど良い申請書が完成するでしょう。勝ちたいなら早めに着手すべき。我々が学振へ通るには時間を味方につけるしかありません。
最後に
以上、申請書を書き始める時期について解説していきました。
余裕を持って準備に取り掛かるメリットは計り知れません。構想を練る時間を十分にとれれば、研究計画の練度や完成度は格段に向上していくでしょう。
学振DCの採用倍率は非常に厳しいです。わずかな差で明暗が分かれる状況も珍しくありません。厳しい競争を勝ち抜くために我々ができるのは「なるべく時間をかける」こと。最も確実でかつ王道な戦略でもって内定を手繰り寄せましょう。
皆さんには、本記事で示した時間軸を参考にしていただき、時間に余裕を持って申請書作成に取り組んでいただきたく存じます。早期から始める丁寧な準備は、回り回って学振DC内定への最短経路となるに違いありません。
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