海外へ博士留学すべき人と国内で博士進学すべき人

札幌と筑波で電池材料を研究している北大化学系大学院生かめ (D2) です。学部→修士→博士とエスカレーター式に内部進学しました。D1の10月から1月まで3か月半ほどイギリスの大学へ研究留学した経験も。国内外での博士生活を通じて自身の海外適性を見定められました。

博士課程へ進学 (D進) する際、海外へ行こうか、それとも私のように国内へ留まろうか迷う方が多くいらっしゃるはず。海外留学は人生を左右するほどのイベント。そう簡単には決められませんよね。そこでこの記事では、自身の経験を踏まえ、海外へD進すべき人と国内でD進すべき人の特徴をそれぞれ解説していきます。

  • 海外留学を迷っていらっしゃる方
  • 国内以外にも「海外」という新たな選択肢を持ちたい方

こうした方々にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

海外で博士進学すべき人

海外でD進すべき人の特徴は以下の3つ↓

  • 将来は海外で働こうと考えている人
  • 海外で研究するのに十分な語学力を有している人
  • 奨学金や給与を確保できた人

それぞれについて解説していきます。

将来は海外で働こうと考えている人

博士課程修了後は海外で働こうと考えていらっしゃる方は、博士課程から海外の大学院で過ごすべき。海外大学院に集う人間のレベルを肌で感じ、ぬるま湯に浸かって安心しきっている自分へ強烈な危機感を抱かせなければなりません。日本と海外とではレベルが段違い。表情の引き締まり方、研究業績集めへの貪欲さなど、本当に日本と同じアカデミックの世界なのかと疑ってしまうぐらいの別世界。海外へ行ったら衝撃を受けますよ。外国の研究者ってこんなに優秀なのか、、と。将来、海外で働くのであれば、自分よりはるかに過酷な環境で鍛えられた外国人研究者とポジション争いせねばなりません。椅子取りゲームで負けずに済むよう、国際競争力強化のため海外D進をオススメする次第です。

海外大学院の研究室には博士課程の学生が多く在籍しています。日本みたいに各研究室へ博士学生が一人いるか/いないかといったレベルではなく、5人や10人、ビッグラボには20人以上の博士学生が居るのです。博士課程を一人だけで乗り越えるのは辛い。自分の周りに同世代の仲間が何人もいれば心強いでしょう。彼らと支え合いながら博士課程を耐え切って下さい。優秀な学生と日々議論して切磋琢磨しつつ研究のレベルを爆上げしていきましょう♪

海外で研究するのに十分な語学力を有している人

海外大学院への進学には、TOEFL90以上、IELTSなら7.0以上のハイスコアが求められます。英語学習者の中でも上位数%に入るほどの高い語学力が求められるわけですが、それぐらい外国語を自在に使いこなせなければ研究を進められないし、海外生活もできません。研究をするにあたり、外国人の指導教員や博士研究員とのディスカッションが不可欠。自分のやりたい実験や知りたい内容を外国語で伝えられなければスムーズに議論を行えません。日常生活でも語学力は必須。スーパーで買い物をしたり理容室で散髪をしたりするときに流暢な外国語を話せると、相手になめられず、現地民と同様の良質なサービスを受けられるのです。

英語や現地の外国語がペラペラな方は、是非、海外で博士生活をお送りください。”是非”というか、勿体ないです。語学力があるのにそれを活かさないだなんて。海外D進すれば語学力がますます鍛えられます。そこで強化された語学力は一生涯、自身の武器としてあらゆる場面で重宝するでしょう。外国語を話せるのに日本の中へとどまっている理由が見当たりません。帰国子女の方や語学を頑張って勉強してきた方はD進時に海外留学を検討してみて下さい。

奨学金や給与を確保できた人

日本と同様、海外でD進する場合もお金の問題は付きまといます。学費や家賃、生活費などに相当する額を稼いで博士生活の原資にせねばなりません。イギリスで知り合った博士学生もお金の問題で頭を抱えていました。お金がなさすぎてアパートを出ていかなきゃいけないかも…と悲痛なうめき声をあげていた記憶が。お金がなくて困っているのは博士学生の万国共通の悩み。裕福な博士学生などいません。実家が屋久杉ほど激太な方ぐらいでしょうか。

日本と違い、海外では研究室のボス (PI) から博士学生へ給与が支払われます。PIに雇用され、PIの指示に従って研究を行うようです。しかし、必ずしも給与が出るとは限りません。給与が支払われる研究室もあれば、日本と同じく一円も支払われない研究室もあるのです。給与を貰えない場合、自分でお金を拵えるしかありません。JASSOや民間財団の海外奨学金、または各国政府の外国人用奨学金を利用するほかないでしょう。留学後、現地でアルバイトをしてお金を稼ぐのもアリかもしれません。いずれにせよ、お金の目途を立てられた方は海外D進をご検討ください

国内で博士進学すべき人

国内の大学院へ博士進学すべき人の特徴は以下の3つ↓

  • 将来は日本国内で働こうと考えている人
  • 語学力がイマイチな人
  • お金の問題を解決できなかった人

それぞれについて解説します。

将来は日本国内で働こうと考えている人

日本国内でやりたいことがある。家庭の都合で日本を離れられない。日本で就職するしかない。海外で働くのは選択肢に入らない… 以上の項目のどれかに当てはまる方は海外ではなく国内でD進すべき。海外へ行くと自分の希望する進路へ至るには少々遠回りになるかもしれません。また、日本で働きたいなら日本国内にいた方が色々と情報が多く入ってきます。海外に居たら日本の情報はネットを介さなければ分からないけれども、日本に居ればネット情報に加え、実際に現地へ赴いて様子を確かめることが容易にできるでしょう。

日本国内で働きたい方は、海外の人とわざわざ切磋琢磨してレベルアップを図らなくとも構いません。ポジション争いの相手が自分と同じ日本人に限られるから、椅子取りゲームの難度は海外ほど高くはないのです。有力なPIと仲良くなっておけばコネでポジションを斡旋してもらえるかも。日本でD進した方が日本国内でのコネの作りやすさはずっと簡単でしょう。民間企業への就職だって事情は同じ。日本に居た方がインターンや面接へ行きやすく、内定獲得までスムーズに事が運ぶでしょう。

語学力がイマイチな人

海外留学すれば語学力が向上するのは間違いありません。というか、向上させなければ生きていけないので、語学力を”向上させざるを得ない”のです。事実、私は3か月半のイギリス留学で英語力を飛躍的に向上させられました。20語程度の英文でも思考時間ほぼゼロ秒で話せるように。聴き取る力も伸ばせられました。ぼそぼそと喋るイギリス人の声を聴き取ろうと集中して耳を傾けたらリスニング力が高まったのです。

海外旅行ならいざ知らず、語学力がほとんどない状態で海外D進するのは危険。外国人研究者と議論にならず、いつまで経っても研究を始められません。研究に関して議論するには高度な外国語力が不可欠。自らの意図を言葉で伝えられるのはもちろん、相手がまくし立ててくる外国語をどうにか聴き取って理解する必要があります。最低限の語学力さえなければ語学力向上の端緒をつかめません。盤石な基礎の上にしか語学力は築き上げられない。基礎が疎かであれば積み上げは見込めないのです。

海外D進は語学力向上のために行うのではありません。既に外国語が達者な方が、その高い外国語力を活かして研究するために行うのです。外国語があやふやな状態で海外D進したら酷い目に遭いますよ。貴重なお金と時間を無駄にして何ら成果を得られないかもしれません。外国語が苦手な方は、母国語で研究を進められる日本国内でD進するのが安心。博士修了後、どうしても海外へ行きたければ、博士在籍中に語学を勉強しておきポスドクから海外へ羽ばたけば宜しいかと。

お金の問題を解決できなかった人

海外留学には莫大なお金が必要です。学費だけでも年間数百万円します。家賃はシェアハウスでも月15万円。食費は切り詰めても月5万円。円安ならもっと高いでしょう。巨額の出費を賄えるだけのお金を確保する必要が。先述の奨学金や給与、アルバイト、さらには学費支払い免除制度の活用等が挙げられます。

悲しいかな、各種支援制度には人数制限が設けられています。博士学生全員が支援してもらえるわけではなく、支援枠の範囲内の人間だけが支援してもらえる仕組み。枠からはみ出た人間はお金を貰えないのです。たくさんお金を貰える制度ほど倍率が高く、雀の涙ほどのお金しか貰えない制度でも厳しい選考に勝ち抜く必要が。最近は女性支援枠なるものもありますね。女子はまだしも、男子にはその制度への応募資格すらありません。

お金の問題を解決できずに海外D進を諦めざるを得ない方がいらっしゃるかも。たとえどれだけ外国語が得意でも、研究に対する志が高かろうともお金がなければ留学できません。残念ですが、お金を用意できなかった方は日本国内でD進しましょう。日本なら学振DCやJSTフェローシップ等でD進者のほぼ全員がお金を貰える体制が整っていますから。

私が北大での国内D進を選んだ理由

私が北大で博士課程へ行こうと決めたのには2つの理由があります。

まず一つ目は、やりたい研究テーマを扱う研究室が世界で北大の一か所にしかなかったからです。似たような研究をしている研究室は世界にも数か所ありました。しかし、自分の興味や関心に最も合致する実験ができる研究室は海外のどこにもなかったのです。自分の研究では特殊な装置が必要。その装置を使って実験できるのは北大の研究室だけ。研究内容で妥協したくはなかったからD進先は北大一択でした。

二つ目の理由は、語学力が低かったから。将来の留学に備えて学部&修士在籍中に英語をめちゃくちゃ頑張って勉強したものの、TOEICでは800点に届くか届かないか、英検も準一級取得が限界。留学応募可能スコアに到底届かない英語力しか培えませんでした。これでは研究力以前にスコア不足で海外大学院へ入学させてもらえないでしょう。海外D進できるものならしたかったですよ。留学するには致命的なほど語学力が低くて海外留学を諦めました。

最後に

海外へ博士留学すべき人と国内で博士進学すべき人の特徴は以上。海外D進を迷っていらっしゃる方の参考になれば幸いです。

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