北大と国研で研究している化学系大学院生のかめです。博士課程の一年繰り上げ早期修了に挑戦しています。
研究にお金はつきものです。お金があって初めて研究できます。研究費だけあっても仕方がありません。日常生活に費やせるだけの十分なお金が必要です。お金は日々の笑顔に、そして精神の安定剤になるでしょう。お金がないと毎日が不安。研究対象よりも銀行の残高を気にせねばならない未来が訪れます。
博士課程は、研究の辛さを全身で受け止めてもがき苦しむ試練の期間。修羅の道を歩むにあたって、お金に困ると目も当てられません。そこでこの記事では、博士課程でお金に困らぬよう、修士のうちにできることを解説します。
- これから博士進学するM2の方
- 博士進学の検討を加速しているB4やM1の方
こうした方々にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。
それでは早速始めましょう!
JASSO奨学金の返還免除を狙おう
博士課程へ進学するなら、修士課程で貰える奨学金をなるべく多く懐に貯めこんでおいてください。
日本学生支援機構 (JASSO) は、修士学生へ無利子で月8.8万円のお金を貸しています。2年間で合計200万円以上もの大金が得られるのです。銀行口座へ振り込まれるやいなや、衝動的にすぐパーッと使ってしまってはいけません。使いたい気持ちはよく分かります。お金があったら全部気持ち良く使い切りたくなるのが人間の性分です。学費や生活費など諸々の支払いを除き、なるべく使わず取っておいてください。修士でお金を貯められれば貯められるほど博士進学後の生活が楽になるでしょう。
修士課程で借りられるJASSO第一種奨学金には「返還免除制度」が設けられています。専攻内で学業や研究の業績が優れた人間へ徳政令が発布されるのです。奨学生のうち上位一割が全額返還免除、上位二割が半額免除に。全額免除なら200万円。半額免除でも100万円手に入ります。コレがあるかないかでは、生活余裕度が太陽とアザラシほども違う。仮に全額返還免除を勝ち取りでもしたら、博士進学後にお金で苦しむ場面はまずないと言って構わないでしょう。
博士進学を志す皆さん。奨学金返還全額免除を狙ってください。とにかくまずは業績を積み立てましょう。ライバルより業績が多ければ多いほど200万円に手が届きやすくなります。国内外問わず学会へ出ましょう。論文を書いてください、なるべくファーストオーサーで。講義で好成績をとりましょう。全部”優”以上を狙ってください。TAやRAをしましょう。もし募集があれば、専攻内のボランティアへ積極的に手を挙げておくと良いですよ。
奨学金返還免除に向けて積み上げた業績は、次の章で述べる学振DC1申請に大役立ち。全ての努力が無駄になりません。ですから、安心して業績を余念なく積み立てていってください。
学振DC1に内定しよう
博士進学する方なら、「学振DC1」と聞いてピンと来るものがありますよね。アレですよ、アレ。耳にタコができるほど聞き馴染んだ言葉です。
さて皆さん、ご唱和の時間です。どうぞご起立ください。それではいきますよ。いち、にのさん、、はいっ!
ニホンガクジュツシンコウカイトクベツケンキュウインディーシー、ワン!!
せっかくなのでもう一度行きましょう。せぇ、のっ!
ニホンガクジュツシンコウカイトクベツケンキュウインディーシ~~、、ニャン!!!!
めちゃくちゃ溜めましたね。ありがとうございます。ネコバージョンも可愛いですよ〜。ついでにもう一度やっておきましょうか。今度は私も混ぜて下さい。一緒にやりましょう。せぇ、のっ!
ニホンガクジュツシンコウカイトクベツケンキュウインディーシー、ニャン!
ニホンガクジュツシンコウカイトクベツケンキュウインディーシー、、ニャン!!
はい、皆さんご唱和ありがとうございました。どうぞご着席願います。
閑話休題。話を戻しましょう。あれっ、何の話をしていたっけ… そうだそうだ、学振DC1の話でしたね。
博士進学するなら学振DC1を狙いましょう。DC1に受かれば月20万円を三年間貰えます。正直、研究費なんかどうだって構わないのです。なんせ研究費は、家賃や食費といった非・研究支出に使えませんから。学振DC1で重要なのは、コレに採用されれば必要最低限の生活費を標準年限分確保できる点。お金使いのイカれた港区女子を除けば十分博士生活をやっていけるでしょう。博士進学者がクリアを目指すべきはお金の問題。学振DC1が全てを解決してくれます。とりあえず皆、DC1を目指しましょう。
学振の競争倍率は6~7倍。DC1は700名程度、DC2だと1,000人ぐらいの採用者数。日本人に加えて留学生も採用されます。学振に通るのは世代別トップ学生だけ。DC1へ内定するには傑出した業績量が必要です。論文出版や国際学会発表、あわよくば学会賞受賞を目論みましょう。自己アピール欄へ記すエピソード作りも余念なく行ってください。自己分析を意外とたくさん書かされます。申請書を記す段になって困り果てぬよう、普段から意識してネタを集めておくと良いかもしれませんね。
学振DC1内定を目指すにあたって、本気で努力するのは当たり前。私を含め、DC1へ採用される人間は例外なく研究を頑張っています。精一杯の努力を重ねたうえでようやく当落選ラインに上がれるのです。そこで採用されるか否かは運がかかわってくる世界。普段から善い行いを心掛けておいて下さい。
学振DC1不採択後の策として、科学技術振興機構 (JST) が創設したフェローシップを使いましょう。当フェローシップは学振よりも採択者が数倍多く、北大なら申請すればほぼ誰でも通る状況です。創設時よりも境遇が良くなっています。そうはいっても、2025年1月現在の月給は18万円と、学振DCより若干劣るのが現状。月18万円は生きていく分には困らないだけの額。お金の問題を”完全に”解決するにはやや心もとないかなぁ、と。たくさんお金が欲しいなら学振DC1内定を目指しましょう。そのために、研究をしっかり頑張って下さい。
企業の奨学金に採用されよう
世の中には学生想いの親切な企業があるようです。博士進学するM2を対象とし、月に幾らかのお金を渡してくれる会社があります。北大の場合は、「お、お値段以上。ニトリ♪」が相当します。博士進学確約後、M2の一年間、月に約8万円支援してくださる。ニトリの奨学金は、博士修了後のニトリ就職を義務付けるものではありません。純粋なる善意で学生にお金を配って下さります。
学生の進路束縛を条件に奨学金を配る企業も。博士修了後の入社を前提として奨学金採用面接を受け、受かれば月5~10万円程度の支援と企業就職が決まるのです。化学系だと三菱ケミカルや旭化成。一年間だけならレゾナックも支援制度があります。博士採用を積極的に行う超大企業が奨学金制度を設けているようです。たくさんのお金を貰えるのは大きなメリット。博士課程で気が変わっても進路を変えられないのはデメリットと言えます。進路が固定されてしまってもいい、むしろ先に決まっていた方が安心するというという方はぜひご応募を。
最近、学振DCのレギュレーションが変わりました。学振の給与と企業奨学金の併給が許可されたのです。うまく併給できれば月30万円の需給も見込めます。30万円あったら港区女子でもさすがに何とかなるのではないでしょうか?(ならんわな) 皆さんの大学にもニトリのような奨学金制度があるかもしれません。就職の検討を加速している企業が奨学生を募集している可能性が無きにしも非ず。博士進学するなら、企業奨学金情報を入念に集めておいてください。ほんの少しの情報収集が博士課程での自分を助けてくれますよ。
万策尽きたら先生に土下座
JASSO奨学金は借りられなかった。学振DC1には落ちた。あろうことか、フェローシップにも弾き飛ばされた。企業奨学金は全社不採用。ぶら下がれる彼氏も彼女もいない。万策尽きた。さて、どうしましょうか。
まだ諦めるのは早計。皆さんにはまだ最終兵器が残されています。そう、土下座です。コレでどうにもならなかったらお仕舞いです。恥も見栄もプライドも全てかなぐり捨てましょう。ただ無心で、何も考えず、先生へすがりつきましょう。「先生、助けてぇぇぇ~~~!!!」と号泣してください。「この世の中をぉぉぉ~~~、変えたいと思ってぇぇぇ~~~!!!」と情熱全開で泣き崩れるのです。中途半端に泣いたら鼻で笑われてThe end. やるなら徹底的に。相手がドン引きするほど豪快に泣きましょう。
優しい先生なら「分かった、分かった。もうっ、分かったから!」と慰めてくれます。それだけで終わりの場合もあるし、運が良ければRA(リサーチ・アシスタント)として雇用していただける可能性があるでしょう。支援額の大小は先生の懐事情次第。大型プロジェクトに採択中の先生なら学振ぐらいのお金を支援していただける。タイミング悪くプロジェクト数がゼロなら「悪いけど、自分で何とかして」と言われます。
土下座はあくまでも最終手段。土下座に頼らず、奨学金や学振への内定でどうにかなるよう最善を尽くしてください。
お金で困ると本当に苦しい。修士のうちから入念な対策を!
以上、修士学生が博士課程進学に備えて行える対策について述べました。
私が口を酸っぱくしてお金、お金と言っているのは、自分がお金大好きマンだからではありません。学生時代にお金がなさすぎて苦しみ続けたが故、皆さんに同じ苦労をしてほしくないと思って申し上げています。
私はD2の8月まで、下宿に自分の冷蔵庫を置けませんでした。家具家電付きのアパートへ入ったけれども、そこに置かれていたのは故障済みの冷蔵庫(*洗濯機も壊れていて、脱水しかできませんでした)。大学進学前に貯めていた貯金など、一人暮らしひと月目で尽きた。バイトすればするほど腹が減ってお金が無くなるだろうからバイトもしませんでした。食べ物は室温で野ざらし。腐ったものを食べるのは日常茶飯事。頻繁に腹痛を起こして気分が悪くなりました。夏なんて酷い。納豆のようにネバネバに発酵したお米を食べていたのです。
そのような生活を七年半続けました。D2の8月になってようやく冷蔵庫を買えるほどの余裕が生まれたのです。家に冷蔵庫が届いた日は嬉し泣き。ブンブン言いながら懸命に内部を冷やしてくれる冷蔵庫が健気に見えて仕方がありませんでした。何度も何度も冷蔵庫を抱きしめた。今でも大学へ行く時と帰るときは冷蔵庫とガッチリハグをかわしています。
B4の頃、お金がなくて卒業旅行に行けませんでした。博士課程修了を記念して海外へ行こうと思っていたけれども、諸方向への金額返済に伴って破産しそうだったのでそれも断念しました。節約でケチケチしすぎて、B4のころ彼女にフラれました。大学の食堂はあまりに高すぎて、八年間で計7回しか行けませんでした。学生時代はお金に散々困らされた。お金がなければ何もできないのに、お金がないから本当に何もできなかった。
この記事をご覧の皆さんには、私と同じような気苦労をしていただきたくありません。せめて博士課程の間だけでも幸せに生きてもらいたい。そう願って長々と文章を記しました。
以上です。
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