論文をトランスファーするメリットとデメリット

目次

デメリット

一方で、トランスファーにはデメリットもあります。

  • 高IFジャーナルへの掲載チャンスを手放すことになる
  • トランスファーの判断を巡って指導教員と揉める可能性がある

こちらも順番に整理していきます。

高IFジャーナルへの掲載チャンスを手放すことになる

トランスファーを選ぶと、初回投稿先よりランクの低い雑誌での出版を目指すことになります。

IF40以上のジャーナルに投稿してリジェクトされた場合、提案されるトランスファー先のIFはおおむね5〜10程度。仮にIF42の雑誌では通らなくても、段階的にIFを下げていけばIF20やIF15の雑誌に通る可能性は十分にあります。しかし、トランスファーを選んだ瞬間、高IFジャーナルへの掲載チャンスをみすみす手放すことになるのです

IFの高い雑誌に載った論文ほど注目を集めやすく、引用や共同研究の話につながりやすい傾向があります。高IFジャーナルで出版を重ねるグループは高額な科研費を獲得しやすく、潤沢な資金で実験環境を整え、さらに質の高い論文を書ける好循環に入っていく。富める者はますます富む。アカデミアにも資本主義は通底しています。

もちろん、論文の価値は、中身で決まります。 IFの高低に意味はありません。ないんですけど、悲しいかな、人間は全分野の論文を内容で吟味できるほど賢くはない。分野が少しずれれば、もう誰が何をやっているのか分からなくなる。実際、私は液系電池の研究をしていますが、全固体電池の論文を読んでも、おぼろげにしか理解できません。

だから、分野外の論文を読む際、雑誌のIFが内容の権威性を担保する指標として機能してしまうんですよね。高IF雑誌に載っていれば「よう分からんけど、きっと凄いんやろな」と受け取られるわけです。学振DCや科研費の審査でも、IFのもたらす先入観は当然影響があるでしょう。

時間に余裕があるなら、トランスファーを断り、別の高IFジャーナルへチャレンジしてみるのも有力な選択肢です。

トランスファーの判断を巡って指導教員と揉める可能性がある

高IFジャーナルにアクセプトされれば、指導教員は科研費採択のアドバンテージを得られますし、研究者志望の学生は研究職のポストに近づけます。ただ、研究職に興味のない学生であれば、自分の論文が載る雑誌のIFなどどうでもいい話でしょう。IF40の雑誌に載ろうがIF1の雑誌に載ろうが、論文出版数は同じ”一報”なのですから。

修士課程のJASSO第一種奨学金返済免除は、論文の本数で判定されます。博士課程修了を占う業績量も、論文の本数で評価される。IFは評価の対象外のことが多く、本数を稼ぎたい学生の立場からすれば、早期のアクセプトこそ最優先でしょう。

高IFジャーナルほど査読期間が長く掲載まで時間がかかります。そのため、一度目の高IFジャーナルへの投稿は了承したとしても、リジェクト後に再び高IFジャーナルへ挑戦するのは、時間がかかって仕方がありません。高IFジャーナル行脚が続けばアクセプトは遠のく一方ですから、トランスファーの誘いには喜んで乗りたいはずです。

一方で、指導教員の立場は正反対。高IFジャーナルへの掲載は科研費獲得に直結しますから、IFを維持したまま粘る方が教員側の利益に適っている。学生の都合よりIFを優先する先生も、残念ながらそこそこいらっしゃいます。

ここで問題が生じます。トランスファーを断固拒否する指導教員と、一刻も早くトランスファーしたい学生。 利害がぶつかり合い、論文の投稿先を巡って揉めに揉める可能性があるのです。先生は手を替え品を替え、トランスファーを思いとどまらせようとしてくるでしょう。

私がトランスファーの誘いを受けた際も、指導教員とかなり揉めましたが、最終的には懐柔されてトランスファーを辞退しています。辞退からアクセプトまでに追加で5ヶ月。この5ヶ月に何の意味があったのかは、未だによく分かりません。

最後に

トランスファーには明確なメリットとデメリットがあり、正解は人それぞれです。キャリアプランや研究室の方針、何より自分の精神的な余力と相談しながら判断するしかないでしょう。

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