博士課程で後悔しないため、進学前に知っておきたい現実

最近、博士課程へ進学する学生への金銭的支援がどんどん充実してきました。もともと存在した学振DCに加え、JSTのフェローシップ制度、国研の研究員制度、卓越研究員制度と、次から次へと新しい支援枠が登場しています。「お金がないからD進できない」は、もはや過去の話となりました。

お金はあるから、あとは当人のやる気次第。研究を続けたければD進するでしょうし、したくなければしなければいい。D進問題は、シンプルになったはずでした。

制度の充実に伴い、大学教員が学生へD進をさかんに薦めるようになりました。「お金をもらいながら研究できるんだよ!D進してみない?」とグイグイ引っ張ってくるのです。居酒屋のキャッチーでしょうか。私も、指導教員の誘いにまんまと乗ってD進した者のうちの一人です。

ただ、いざ博士課程を修了してみると、やたら滅多にD進を推奨する風潮へ違和感を覚えるようになりました

なぜ違和感を覚えたのか。博士課程では何が起きるのか。D進の検討を加速中の皆さんに、経験者の本音をお話しさせてください。

かめ

それでは始めていきますね

目次

D進は、全員に無条件に勧められる道ではない

博士課程はとてつもなく辛い場所です。成果を出さなければ修了できないのに、肝心の成果がなかなか出てこない。人間関係で理不尽な目に遭っても、修了するまで耐えなければならない。修士で修了した同期がライフステージを駆け上がっていくなか、自分ひとり取り残される焦燥感もある。辛さのフルコースである以上、万人にはオススメできません。

私なんて、あまりに辛すぎて、顔が別人のように老けました。入学前の写真と見比べたら、同一人物だと信じてもらえないかもしれません。博士課程は、アンチエイジングの対極にあります。

基本的に博士課程は自力で切り拓く世界です。指導教員がつきっきりで手取り足取り教えてくれることはなく、自分の面倒は自分で見る必要がありますし、研究方針も最終的には自分で決め、責任まで取ることになります。苦境突破力のある人ならば何とかなるでしょう。でも、困難を前にして途方に暮れてしまった方は、ドロップアウトしていく運命が待っています。ああ、無情。

大半の人は博士課程で身もだえするほどの苦しさを味わいます。辛くて空を見上げた時、我々はふと思うわけです。「どうしてこんな所に来てしまったのか」と。

私はD1の12月、留学中にストレスで追い込まれすぎてトイレで喀血しました。意識がもうろうとして、本気で死ぬかと思いました。一時は中退も覚悟したほどです。北大から遠く離れた異国の地で、ひとり便器を見つめながら、己の人生を振り返るとは思いませんでした。無事に帰って来れてよかったですよ、本当に。

最初に述べたように、博士課程は過酷な世界です。よって、高強度・高負荷なストレスに数年間耐えられる人間が行くべき場所だと考えています。まして、いまの若年層は打たれ弱いとよく言われます。博士課程のストレスに耐えられるタフな心の持ち主は、どれだけ多く見積もっても同世代全体の5%程度でしょう。万人がそのストレス耐性を備えているとは思えません。

行くのであれば、覚悟を決めて

仮に皆さんがストレス耐性の持ち主だったとしましょう。おめでとうございます。博士課程でやっていける素養をお持ちです。ただし、一点注意があって、たとえD進に向いている方でも、覚悟を固めてから進学してください

博士課程は、進学者の一部が退学します。具体的には、全体の一割は学位を取れずにドロップアウトしてしまいます。三年で修了できず、四年目のオーバードクターへ突入してしまう方もチラホラ。三年以内に学位を奪取する大変さは、外から眺めているだけでは分かりません。入ってみて初めて「あっ、これ無理ゲーでは?」と気付くパターンが実に多いのです。

こうした事実を知ったうえで、それでもD進したいのであればD進してください。「自分に博士号が取れるのかな」と不安になったら、誰かに相談するか、進路の再検討をオススメします。自分も迷った末にD進したので、迷う気持ちはよく分かるのですが、迷いがあまりに強すぎる人はD進に必要な狂気が足りず、進学後に苦労するに違いありません。

博士課程に入ると、生活が研究中心に回り始めます。起きてから寝るまでの大半の時間、脳内は研究関連の思考に占拠されるでしょう。通勤中も、風呂に浸かっていても、布団に入ってからも、考えるのは実験条件やら論文の構成やら。学位審査が近付いてくるにつれ、時間が足らなくて焦りが募るかもしれません。休日返上で研究を進める涙ぐましい自主性が求められることもあります。

趣味も気休め程度にしかできないと思っておいてください。私の場合、D2あたりから趣味の記憶がほぼありません。

研究の世界は残酷です。やればやっただけ報われるとは限りません。努力を評価してもらえるのは修士までで、博士課程からは結果がすべて。

膨大な時間を研究に投下し、成果物のみで評価される世界と承知のうえで進んでください。生半可な決意で行ったら、試練にはね返されます。行きたい人は腹をくくっておきましょう。覚悟を固められる方に限ってD進をオススメいたします。

博士課程には、行きたい人だけが行けばいい

D進希望者へ脅し文句を連投してしまってごめんなさい。脅したいのではなく、厳しい所だと承知したうえでD進した方が皆さんにとって得だから、あえて脅させていただきました。ここまで読んでくださった皆さんの忍耐力があれば、博士課程もきっと大丈夫です。たぶん。

もし皆さんが研究を続けたいなら、思い切って進学してください。将来研究者になりたい方もD進一択です。

誰かに勧められたのを機にD進を検討するのはアリでしょう。私だって指導教員の勧めを契機にD進の検討を加速し始めました。ただし、誰かの勧めを決定打にしてD進するのはやめておきましょう。D進にはストレス耐性と覚悟が必要です。博士課程を走り切れる力が自分にあるかどうか、冷静に熟慮してほしいと思います。

受け入れる側が「博士課程へおいで!」と宣伝する構造は、正直どうかと思っています。制度が充実したぶん間口が広がりすぎて、適性を吟味する前にD進して悲惨な目に遭う学生が出てきかねないでしょ。もしD進が合わずに中退してしまうと、学生の未来が潰えるんですよ。もちろん、アカデミアの皆さんは誰も助けてくれません。「自己責任でしょ?」と突き放されるでしょう。

博士課程へ行くか否かは、冷静に、慎重に考えたうえで決めてください。誰かの誘いにホイホイ乗って決断するのは危険ですよ。D進が幸せに繋がる保証はどこにもないし、D進しなくても幸せになれる道はたくさんあります。

要するに、自分の価値観次第ってことです。何を大切にしたいか、何を人生の軸に据えたいか考えて、ゆっくり進路を検討してみてください。考えに考えたうえでD進するのならば、皆さんの周りの方はもちろん、私も応援させていただきます。(*≧∀≦*)

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