北大博士課程を早期修了した化学系大学院生かめ(D2)です。来年度から地元の民間企業で技術開発職に従事します。
博士課程へ行くか行かないか。これは、多くの修士学生の頭を悩ませる難しい問題。今晩はうどんにするかラーメンにするかといった話とは別次元。どちらを選ぶかで将来が大きく変わる、人生のターニングポイントなのです。博士進学を前にして悩むのは当たり前。自分もD進決断前は悩みました。悩みすぎて髪の毛が少し薄くなったほど。真面目な方は一年単位で悩んでしまうかもしれません。
博士進学するか・しないか。この問題について、何らかの判断基準があれば嬉しいですよね。基準に則って進路を検討できれば悩みは雲散霧消するでしょう。
そこでこの記事では、運命の分岐点に立つ皆さんへ博士進学の判断基準を提案します。自らの経験と指導教員との対話を通じて得られた知見を盛り込みました。D進をご検討中の方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

それでは早速始めましょう!
研究が好きかどうか


一つ目は「研究に対する想い」に関して。研究が好きか。少なくとも嫌いではない、か。研究へ時間を割けるのが嬉しいか。三年間、研究漬けの毎日を送るのに抵抗がないか。これらの観点から考えてみてください。
博士進学に適しているのは研究好きな人。三度の飯より研究が好き。平日はもちろん、休日も暇さえあればついウッカリ研究してしまう方が向いています。研究を趣味の一環で楽しめる人。物事を深く考える、考え続けるのが楽しくてたまらない人。
研究への想いがさほど強くない方がD進したらどうなるか。試練直面時に心が挫け、易々と白旗を掲げるでしょう。博士課程は理不尽な辛さで溢れています。研究の不進捗。論文リジェクト。学位審査での激辛コメント。連続的に迫りくる試練を乗り越えて学位取得へと至るのです。研究への思い入れが強くなければ博士課程へしがみついていられません。研究好きなのは大前提。スキル云々はそのあと論じられるべきものです。
研究テーマに対する想いも重要です。「修士在籍中のいま行っている課題をあと三年間やりたいか」と自問してみてください。
博士課程ではひとつのテーマを掘り下げていくでしょう。研究して明らかになった疑問点を解消すべく別の研究を行い、そこでまた明らかになった不明点を解決すべく別の研究をします。物事の探求には、研究対象への十分な好奇心が欠かせません。”知りたい”という気持ちがあって初めて詳しく調べてみる気になるからです。いま取り組んでいる研究テーマとはもうあと三年のお付き合いに。現行テーマに三年取り組むだけのモチベーションがあるか。やっていて飽きないか。心から楽しめるか。進学前によくお考えください。



博士進学の際に研究テーマを変えても構いません。この場合、研究に関する知識を最初から学び直すことになるでしょう。学び直す意欲はあるか。三年間で博士論文を提出できそうか。自分に研究成果を出す力はあるか。色々な観点からの慎重な検討が必要です
ロールモデルになる覚悟があるかどうか


修士までと博士以降とでは生き方が質的に異なります。
修士までなら模範となるロールモデルがたくさんいるでしょう。大半の学生と一緒のタイミングで企業就職し、企業の中で長く過ごしてキャリアアップを図る人生が待っています。
博士課程へ進む場合、自分のモデルとなる生き方をする先輩が周りに居ないことが多いです。研究者になりたくても、研究者になった先輩がいない。企業就職したくても、民間企業へ行った先輩がいない。そもそも研究室には過去に博士進学した方がゼロ名かもしれません。私の場合はそうでした。自分が初めての博士進学者。右も左も分からない。何も情報が入ってこない。(本当にD進しても大丈夫かな…)と心細くなったのをよく覚えています。
博士進学者は、博士課程修了後の人生も多種多様。読者さんの中には海外で研究者になる方が現れるでしょう。海外の大学や研究所で日本人初の教授になる方だって居られるはず。起業、ポスドク、YouTuber。人の数だけ進路があります。どのような道へ進もうが構いません。道なき道を進んでもいい。道が無ければ作ればいいだけ。自分で自分の未来を作って切り開いていく勇猛果敢さが求められます。
そう。博士課程へ行く限りは、自らがロールモデルになる覚悟を問われるのです。日本人のうち博士号を持っているのは200人にひとりの割合。博士課程を修了したが最後、否応なしに少数派の道を進む人生が待っているでしょう。先駆者を探してもなかなか見つかりませんよ。自分の未来は自分の頭脳で作っていくしかありません。というか、誰かと一緒の生き方をしていたら、せっかくの博士号がもったいないですよ。先駆者の居ない方面を探してご活躍ください。自分が”○○初の△△”になって、地球の中で燦然と輝きを放つのです。
誰かと一緒の人生で構わなければ修士就職が良いでしょう。自分だけのオリジナルな物語を紡ぎたい方は博士課程へ行ってください。
スペシャリストとして生きたいかどうか


修士までと博士以降とで決定的に異なる点がもう一つ。
修士人材は「ジェネラリスト」として扱われます。何でも屋さん。よろず屋さん。基本的には何でもできるでしょう。企業の中では重宝されます。大企業が大きなビジネスを動かしていくのに欠かせない人材です。
博士人材は「スペシャリスト」とみなされます。専門家。職人さん。一芸に秀でた人種です。全体的なスペックは高め。一応、博士人材も修士課程を経ているので。加えて、博士人材はある分野に精通しています。全貌が頭に入っているのはもちろん、専門分野において未解明の課題を明らかにする術も有しているのです。博士人材も修士人材と同様、会社で重宝されるでしょう。特にR&D部門では即戦力扱いされること間違いなし。
皆さんはどちらの生き方をしたいですか? ジェネラリスト? それともスペシャリスト?
皆さんが博士進学を選んだ場合、きっとスペシャリストの人生を歩むでしょう。何かの専門家として生きる一生。責任重大。やり甲斐も満点。ジェネラリストには見られない高みからの景色を見られるかもしれません。スペシャリストのスペシャルな人生を歩みたい方はD進してください。何でも屋さんの方が楽しそうと感じる方は修士就職しましょう。
スペシャリストになるにあたって、ひとつ考えておくべきテーマがあります。それは『どの分野』の専門家になりたいかということです。皆さんが専門家になるのは【博士課程で取り組んだ研究分野】で、です。私なら電気化学。電池材料や金属メッキ、エネルギー事情に関して提言できるようになりました。興味のある分野の専門家になるのが本来あるべき姿。万一、興味関心がない分野の専門家になってしまったら寂しいですよね。
博士課程で取り組んだテーマや専門分野は、今後生きていくうえで自身と不可分の関係になるでしょう。言い換えれば、博士論文が『思考回路のルーツ』になるということ。どのような分野に立脚して生きていきたいか。どのような着眼点の思考回路を身につけたいか。社会トレンドの趨勢と併せて専攻分野を選んでみると良いかもしれません。
最後に
博士課程進学するかしないかでお悩み中の皆さんへ判断基準を提案いたしました。本記事で述べた3つの観点「研究好きかどうか」「ロールモデルになる覚悟があるかどうか」「スペシャリストになりたいかどうか」から進学の可能性をご検討ください。
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