札幌と筑波で電池材料研究をしている北大化学系大学院生かめ (D2)です。就職と博士進学 (D進) とを天秤にかけた上でD進を選びました。学振DC1への内定1やビッグジャーナルへの論文アクセプト2、それに大企業への内定3等を経て現在に至ります。
私自身、D進してみて本当に良かったなぁと感じました。D進しなかったらできなかったであろう様々な経験を日々積めているからです。もちろん楽しい出来事ばかりじゃありません。半年以上も論文がアクセプトされずに長らく苦しみを味わった期間も。しかし、それ等を鑑みても楽しいのです。自分が老人になった時、博士課程の二年間を良き思い出として振り返られるのではないかと思います。
この記事では、大学院博士課程へ進学する4つのメリットについて解説します。
- D進を検討していらっしゃる方
- D進しようか/就職しようか決めかねていらっしゃる方
こうした方々にピッタリな内容なので、ぜひ最後までご覧いただければ幸いです。
それでは早速始めましょう!
修士課程に引き続きあと3年研究を続けられる
研究好きな方にとって『あと3年研究を続けられる』というのは相当大きな魅力に映るのではないでしょうか?D進すれば自身の持ちうる時間のほぼ全てを研究にぶつけられ、各々の知的好奇心を思う存分満たせます。
修士で企業に就職する場合、必ずしも研究に携われるとは限りません。開発職や設計技術職、もしくは生産技術職での採用となるかもしれないのです。悲しいことに、どの職種で働くことになるかは入社する直前までブラックボックスな状態。いわゆる【配属ガチャ】ですね。全くもって恐ろしい話。採用面接時に研究職を希望していたとしても、研究職は博士号を持つ人材から配属されるから希望が叶うとは限らない。修士人材が研究職にありつけるか否かは博士号ホルダーの人数次第な所があります。
その点、D進すれば、修士修了後の3年間を確実に研究活動へ宛てられます。「研究なんてもう嫌だ」と言いたくなるぐらい研究漬けの毎日を過ごせるのです。博士人材は修士人材よりも研究職に就きやすい傾向が。3年後、企業やアカデミアでポジションを得た後も研究に携われる可能性が高め。ひょっとしたら研究が生業になるかもしれません。研究で飯を食っていきたい方はD進がオススメです。
自分に合った進路をじっくりと決められる
修士課程を出てからすぐ企業へ就職する場合、自身に研究適性があるのかどうかさえ分からないままの就職となってしまうはず。明確に研究が得意か、あるいは不得意な人材以外は、研究適性の判別などつけられません。そりゃそうだ。就職する学生は一年と少ししか研究に専念できないのだから。夏季インターンや早期選考の準備をする場合、研究だけに時間を捧げられる期間はごく僅かです。自身の研究適性診断には最低でも3~4年は必要。3~4年、本気で研究に打ち込んで経験値を積んでみて、それでようやく自信を持って「自分は研究に向いているかも/不向きかも」と言えるようになります。
少し勇気を出してD進すれば、3年間のゴールデンタイムを得られます。研究純度100%の日々を送る過程で研究の向き・不向きをじっくりと見定められるのです。進路を決めるのはD2の終わり頃。それまでの間、「アカデミアに残ろうかな」とか「やっぱ就職しようかなぁ」とかいった風に迷いに迷えます。進路決定時期に「研究者になろう!」と思えたならばアカデミックポストをお求めになれば良いでしょう。自身に研究適性を感じられなかったならば、研究とは無関係の業界へ転身するのが良いでしょう。いずれにせよ、修士修了後に就職するよりも時間をかけて自分に合った進路を熟慮できるのが魅力。『M1で研究適性なんて見定められない!』という方はぜひ博士課程までお越しください。
研究スキルや研究に関連する様々な技能を身に着け・飛躍的に高められる
博士学生の仕事は研究。実験や飼育、シミュレーション等を行い、集めたデータを論文にまとめて出版するまでがお仕事。規定本数以上の論文を出版しなければ博士課程を永遠に修了できない仕組み。博士修了認定に温情や義理人情は通用しません。修了要件を早く満たせた学生には早期修了のルートが。修了要件を満たせない学生にはオーバードクターの地獄が待っています。
博士学生は自身の将来のため、日々懸命に研究活動へ勤しんでいます。卒業を懸けて研究するわけです。研究への熱の入れようも相当なものに。実験テクニックや解析手法、文書作成術に語学力など、研究に関連する様々な技能のレベルが修士よりも数段階レベルアップするのです。私自身、修士時代よりも博士時代の方がアウトプットの質が劇的に向上しました。現に、D2になってからM2の時に書いた修士論文を読むと、「もっと上手く書けたな…」「もっと工夫して実験できたよな…」と反省点が次々と浮かび上がってきます。今ならもっと文章をうまく書ける。それはスキルが高まった何よりの証です。
修了すれば世界中で通用する『博士号』を得られる
【博士号】は世界中で価値が認められている数少ない資格の一つ。『エイケン?トーイック?…ナンジャソリャ~?』とサッパリな方にさえ『Ph.D?シッテルヨ!アナタ、ドクターナノ…?!スッゴイネェ!!』と敬まってもらえます。
博士号とは、ある分野で『知的フロンティアの開拓者』として人類の知的領域を拡張した者に与えられる称号。博士人材とは、あるジャンルに関して世界一豊富な知識を持つ人間なのです。つまり本来、博士号ってめちゃくちゃ凄い資格なはず。弁護士や公認会計士と同じぐらいの重みがあります。しかし、こと日本に限っては、博士号の価値は遍く知られていません。足裏の米粒と揶揄・卑下されているぐらい。世界に出れば、片田舎のおばあちゃんでさえ博士号の重みを知っています。博士号の重みが世間にもう少し伝わって欲しいなぁ…と願ってやみません。
博士号を持っていれば、国内外を問わず、様々な企業や研究機関へ応募可能。日本を出れば報酬が高めで待遇の良い仕事が盛り沢山。博士号を持つ魅力は、働く国を選ばなくて済むようになる所。もしも日本が飽きたらイギリスへ、その次はドイツへ…といった感じのジョブホッピングが出来るように。D進して修了すれば、世界中で通用する博士号を得る権利を手にできます。日本だけでしか通用しない難関資格の勉強に何年も費やすぐらいなら、同じ時間だけ博士課程に費やした方がコストパフォーマンスが良さそうに思えるのは私の気のせいでしょうか?
最後に
大学院博士課程へ進学する4つのメリットについては以上。博士課程への進学を考えていらっしゃる方の検討を加速させられたら幸いです。
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