博士課程在籍中に海外留学すべき理由

北大博士課程を一年短縮修了した技術開発エンジニアかめです。

D1の後期に三カ月半ほどイギリスに留学していました。諸事情につき、D1の一年間まるまる研究が止まることになり、日本へ居ても実験できないため留学する運びになったのです。留学先では肝心の実験を一切行えませんでした。渡航先の実験設備が軒並み壊れていて実験どころではなかった。結局、研究面での進捗はゼロ。しかし、研究以外の分野ではたくさんの収獲がありました。

博士課程在籍中に海外留学して良かったか。自分は「良かった」と思っています。後輩にも自信を持って勧められる。在籍中に一度は海外留学へ行くべきです。お金とチャンスとやる気があるならぜひ行ってください。ただし、私が渡航して酷い目に遭ったラボ以外の研究室へ。

この記事では、博士課程在籍中に海外留学すべき理由を解説します。海外留学を考えている大学院生にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

海外に居る同世代のすごいヤツらを見て刺激を受けられるから

私が留学したのはイギリスのオックスフォード。大学世界ランキングで毎年ひと桁台に入っている名門校。

オックスフォード市街には賢そうな学生がウロウロしています。話さなくても見ただけで分かる。「コイツら、めちゃくちゃ賢いんだろうな」と。背中からは存在感がにじみ出ている。羽織っている濃紺のローブでは隠しきれていない。顔からは自信と余裕があふれ出てきている。正視するだけでコチラが縮み上がってしまうほど。この人らと自分とでは人生の階層が何ランクも違うのだろう。

生まれてからD1後期に至るまで、黙って立っているだけでオーラを発する人間を勉強関連で見たことがありませんでした。スポーツの世界でなら一度だけあります。中学・高校時代に国体へ出場したとき、選手村ですれ違った人から尋常ではないオーラを感じ、後で確認したら北京オリンピックに出場した超一流選手だったのです。オックスフォードで見てきた連中のオーラは、国体選手時代に見た五輪選手と似たようなもの。しかも彼らは私と同世代。いや、私より5歳以上も年下。なのになぜそんなオーラを放てるの?自分と彼らとの本質的な違いって何なのだろうか。

白状します。B1からD1まで北大で七年過ごしてきて、自分より賢い人間に出会ったことがありませんでした。自分は北大総合理系の次席合格者。獣医学部や医学科(*面接点を加味)の合格点も軽々超えてきました。自分より賢い、コイツには絶対敵わないとひれ伏せざるを得ない人間などいなかったのです。どうやら井の中の蛙だったみたい。世界には自分より遥かにすごいヤツがうじゃうじゃいるのに、北大という狭いくくりの中でトップになったからって気持ち良くなってしまっていました。

海外留学へ行って一番良かったのは、同世代や年下の「すごいヤツら」を見て刺激を受けられたこと。北大の中で傲慢になりかけていた私の鼻をオックスフォードがへし折ってくれたのです。

イギリスから帰国して以降、生きる姿勢をガラリと変えました。限界を設けず徹底的に追い込む。研究でもそう。スポーツでもそう。ブログ運営でもそう。何事にもがむしゃらになって励むように。オックスフォードで見た連中のようになりたければ真の実力を付けねばなりません。本気でやらなきゃ絶対に ああ はなれない。本気で取り組んだってああなれるかどうかは分からない。だったら遮二無二やり切るしかないよね。オックスフォード大学の連中を仮想ライバルとして驀進できるようになったのが収穫です。

「異質」と出会って価値観を揺るがせられるから

イギリスには日本と全く異なる価値観が通底していました。

たとえばクリスマス。イギリス人はクリスマスを「家族と祝う神聖な時間」とみなしています。一人ぼっちで過ごすクリスマスなどあり得ないわけです。イギリスではホームステイをしました。ホームステイ先の奥さんに「クリスマスはずっと一人で過ごしてきました」と言った所、真っ青な顔で「かわいそうに…」と憐れまれたものです。英国では『クリぼっち』という概念がありません。クリぼっちは反社と一緒。社会的秩序を乱す存在として警戒されます。

あるいは忖度。イギリス人はアメリカ人ほどではないにせよ、自らの思っていることをズバズバ言ってきます。本音をあまり包み隠さない人種です。合理的に考えて妥当でなければ「なんで?どうして?」と尋ねてくる。職場で忖度などするぐらいなら退職をお選びになるのではないでしょうか。忖度社会を生きる日本人からすれば目からウロコ。こんな風にズバズバ言って良ければいいのになと羨ましくなりました。

イギリスでは大学の事務手続きに大苦戦させられました。営業時間中に事務部へ行っても誰も居ません。複数回訪問してやっと人を見つけ、手続きを依頼しました。相手は突き抜けるほど清々しい笑顔で「いいよ!」と快諾してくれます。いつまで経っても手続き完了のお知らせが届きません。結局、超簡単な手続きを終えるのに一か月間も待たされました。日本なら即日終わるような手続き。どうしてこんなに時間がかかるのだろう。イギリスの事務方はよほどのナマケモノなんだろうなと感じた次第。

このように、日本とイギリスは異質の国です。自分にとっての当たり前が相手にとって常識外なケースがよくあります。

留学するメリットは、【異質】との出会いを機に、自らの価値観を多様な観点から眺められるようになること。「当たり前だと思っていた考え方が当たり前ではなかった」と知るだけで得がたい学びになるでしょう。自分自身、日本に帰ってきて以来、考え方が柔軟になりました。自分とは異なる価値観を容易に許容できるように。相手の良い所を自らへ吸収しようとする姿勢も根づいた。日本国内に居たままでは思考回路が硬直して頑固じじいになっていたはず。海外へ出てみて良かったなと感じています。

海外で働くイメージをつけられるから

日本は財務省による自国民絶滅政策の効用で急速に衰退していっています。毎年人口が数十万人単位で減っていっている。行きかう人々に生気が見られない。元気なのは引退した老人だけ。現役世代は将来に希望を見出せなくて苦しんでいる。

GDPを見れば世界第五位の経済大国。バブル崩壊以来ほとんど成長しておらず、財務省の支配が続く限りは今後も成長は見込まれないでしょう。日本は衰退の一途をたどっています。人口的にも経済的にもそう。今後三十年間ほど、団塊世代が居なくなるまではこの暗い流れは変わらないでしょう。三十年先までこの国が存立しているかどうかも際どい所ですが。

視点を外に移してみましょう。
日本は衰退していく一方。世界も同じか。いえ、今後も発展が見込まれているのです。

2050年までに地球の総人口は100億人へ達すると言われています。アメリカをはじめとする一部の先進国や、東南アジアやインドを中心とする新興国が盛り上がっていくとされているのです。GDPは人口が増えれば増えるほど増大していくもの。日本がかつて高度経済成長を果たしたように、いまは経済的にイマイチの国でもやがては一流国になるポテンシャルがあります。栄えていく一方の国に生きる人民は希望に満ち溢れている。どんよりと薄暗い表情を浮かべる日本人とは対照的に、未来に対する希望で胸をパンパンに膨らませています。

理系分野で博士号を取れば、世界中で働けるようになります。研究機関や技術メーカーから引っ張りだこなのです。博士人材が報われないのは日本だけ。世界は違います。博士人材に対して相応な待遇を用意してくれるのです。そう考えれば、活躍の場を日本国内に限定するのはもったいないと思いませんか?いったいどうして我々は暗いムードの国で劣悪な待遇のもと働かねばならぬのでしょう?

海外留学して良かったのは、一定期間、海外生活を経験できたところ。海外で暮らすとはどういうことか。面白い点や難しい点は何か。こうした事柄を実体験して、海外生活が怖くなくなったのです。海外で働くイメージも付けられました。今後、日本に限界を感じた際、スッと躊躇なく海外へ飛び立って行ける気がします。

渡航先選びには十分注意して

博士課程在籍中に海外留学するのは賛成です。渡航するチャンスとお金が噛みあったらぜひ飛び立っていただきたいです。

ただし、留学先はどこでもいいというわけではありません。私のようにハズレ研究室を引き当てたら研究進捗ゼロで帰国する羽目になります。時間とお金が無駄になるでしょう。友達も知り合いも研究者の人脈も作れない。途方もないやるせなさと虚無感を引っ提げて、帰国日の夜、羽田空港第三ターミナルの展望デッキで泣くことになりかねない。

留学先は慎重に選びましょう。石橋をたたいて叩き壊すぐらいの勢いで入念に渡航先研究室へ確認を取るのです。ホームページに載せられている実験設備は実在するものなのか。”在籍中”と謡っている学生やポスドクはいま在籍しているのか。使用予定の装置は本当に動くのか。不安材料を払拭して「ここなら大丈夫だ」と確信を持てたときに渡航先を決定してください

私のイギリス留学が失敗したのは、渡航前に確認を怠ったから。受け入れ相手に信頼を置きすぎたのが良くありませんでした。実験設備は実在しないものが多々あった。10人在籍中と謡っていたけれども行ってみたら1人しかいなかった(たまにしか来ない)。使用予定の装置は全部壊れていた。ハズレもハズレ。大ハズレ研究室。オックスフォード最悪の研究環境だったのではないかな。これらのトラブルは事前確認で把握できたでしょう。ハズレ研究室への留学を回避できたはずなのです。

皆さんには私が味わったような悲しい思いをしてほしくありません。どうせ留学するなら楽しい思い出を作っていただきたい。渡航先選びには十分注意してねとのアドバイスをお送りして締めくくります。

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