【修士課程】博士進学と修士就職で迷ったら就活してみよう

研究熱心な修士学生なら一度は考えたことがあるのではないでしょうか。「博士進学するか、修士就職するか。どちらにしようかなぁ～」と。定番かつ究極の二択。どちらを選ぶかで人生が変わります。迷いに迷って当然です。しっかり考えて納得のできる選択をしましょう。

博士進学に踏み切れないのは、企業就職への魅力を感じているため。お給料をもらえる。実務経験を重ねられる。ライフイベントの消化が容易。様々な利点があります。
そうかといって、皆さんは易々と企業就職を決断できないでいるでしょう。研究が面白い。企業と比べて自由に時間を過ごせる。今の研究を続けられる。大学の持つ様々な魅力に心惹かれているから博士進学の検討を加速しているのかもしれませんね。

D進か、それとも就職か。人生の分岐点でお悩み中の皆さんへ提案があります。一度「就活」をしてみませんか？　大学院を離れ、会社の中に入って様子を探ってみませんか？　就活すれば見える景色が変わります。どちらを選ぶことになるにせよ、より納得感を持って進路を決められるようになるでしょう。

この記事では、博士進学と修士就職で迷ったら就活してみようというお話をします。B4とM1の方にピッタリな内容です。ぜひ最後までご覧ください。

どちらにするか迷ったら就活してみよう

”就活してみよう”と私が先述した際、「いやいや！まだ就職と決まったわけじゃないんだけど…」とお思いになったかも。分かっていますよ。皆さんがどちらにするかまだ決めていないのを承知のうえで申し上げています。

私が就活をオススメする理由は、企業生活とラボ生活とを天秤にかけられるようになるためです。

大学の中で過ごしていると企業生活の実態が見えてきません。そりゃそうです。まだ我々は大学の中だけでしか過ごしていないのだから。情報源は書籍やネット。通勤がある、定時がある、働いた分だけお金が貰える、といった感じの断片的な情報しか得られないでしょう。そもそも働くとはどういうことか。働く場所の雰囲気や業務スタイルはどのような感じなのか。会社の中の様子を一度も見た経験がなければ想像できないでしょう。人生で一度も「赤色」を見たことのない人が「赤色」を想像できないのと同じです。

我々はラボ生活の情報を多く有しています。ラボで一年か二年過ごしてみて、研究室生活にも慣れてきたでしょう。博士課程へ進んだからといって生活スタイルが劇的に変わるわけではありません。博士進学する場合、皆さんがいま営んでいる生活があと三年続くことに。そう、皆さんは博士生活のイメージができます。博士課程へ行ったらどうなるかを何となく想像できるわけです。一方で企業生活はどうですか？企業へ行ったことが無ければ何のイメージも浮かんできませんよね。

ふたつの進路からひとつの道を選ぶ際は、ふたつの道を歩む自身の克明なイメージを持っておきたい所。皆さんは「博士進学」と「修士就職」からひとつを選びます。D進の方はイメージできる。就職の方はイメージできない。納得感を持って進路選択したければ、「就職後の自分」をイメージできるようになりましょう。そこで行うべきが【就活】なのです。

業界研究、インターン参加、工場見学などを行ってみてください。会社の中で社員の姿を眺めて未来の自分を想像しましょう。特に現地開催の複数日インターンシップはオススメ。会社員生活の実態はもちろん、自らの会社員生活適性を見定める所までできるはず。博士進学後の自分。修士就職後の自分。両者を想像できるようにしたうえで進路選択なさってください。

就活した自分の体験談

私自身、博士進学か修士就職かで一年近く迷っていました。最後のひと押しとなったのが就活。就活したおかげで納得感を持って博士進学を選べたのです。

就活したのはM1の夏と冬。
夏には企業説明会に参加しました。当時、企業生活のイメージは全くできていません。社員の方から話を聞いていく過程で『企業の中で働くとはどういうことか』のイメージを養いました。企業生活は”少し融通の利く高校生活”って感じ。通退勤は登下校と一緒。作業服を着るのは制服を着ていた高校時代と重なります。違うのは報酬面でしょうか。お金を払って通っていた状態からお金を貰って通う状態に変わるのです。指示通り動くだけでお金を貰えるだなんてパラダイス。

夏にはインターンシップにも応募しました。しかし、残念ながら落ちてしまいました。いま振り返ればメチャクチャな文章を書いていましたね。誤字脱字の嵐。質問に答えていない。アピールポイントを間違えている。これでは通るはずがありません。冬以降の就活に活かせる教訓を得られました。同じ過ちはもう二度と犯しません。

冬にも企業説明会に参加しました。8社ぐらいは参加したでしょうか。業態はメーカー。化学系、機械系、素材系、自動車系など色々受けたのです。当時は就職してもいいかなという気持ちでした。心情的にはD進：就職＝4.5：5.5の割合。とりあえず採用面接を受けてみることに。結果を受けてからまた進路を考えよう、と。M1の3月に最終面接を受け、ある化学系メーカーから内定をもらいました。

内定の連絡をいただいた際に感じました。「コレ、博士課程へ行っても内定をもらえるんじゃないの？」と。

進学したからといって就職の道が閉ざされるわけではありません。進学しても三年後に就活すれば内定をもらえるでしょう（後述）。進学したいとの気持ちがある。決して無視できないレベルのモチベーションがある。だったらD進しないと勿体なくないか？　D進しなかったら後で悔やまない？　自分の性格的に（やっぱ進学しておけばよかった）となる気がする。選ばなかった方の道を歩んだ未来をつい想像して辛い気持ちになる。進学したらしたで辛いだろう。けれども、進学せずに味わうやるせなさに比べればマシだ。

このような経緯で博士課程への進学へ舵を切ったのです。

博士進学を選んでも三年後に就職できる

博士課程進学へ二の足を踏んでいらっしゃる皆さんは何か誤解しているかもしれません。博士進学を選んだら就職できなくなるかもしれない、と。
安心してください。D進しても企業就職できます。特に理工系博士学生の就活は楽勝です。ちゃんと真面目に研究活動していれば大丈夫。私なんてD1後期、就活開始から1か月で内定をもらいましたよ。同じ会社には理学部数学系専攻の博士学生も。専攻と関係のない分野への就職も目指せるでしょう。

就活への不安が払拭されたいま、皆さんが真剣に悩んでいる問題の論点は「二十代中盤をどう生きたいか」に集約されるのではないでしょうか。体力も気力も感受性も豊かな二十代中盤の過ごし方を問われているのです。大学院の中で研究に専念するか、会社員としてキャリアを重ねるか。大学の中で過ごしても大丈夫。三年後に会社員になれますから。修士就職しても構いません。機会とご縁があれば博士進学への道が自ずと開けるでしょう。

イントロでは「いまが人生の分岐点」と述べました。しかし、いずれの道を選んだとしても、移ろうと思えばいつでも反対側の道へ移れるのです。そんなに深く悩まなくてもいいんですよ。どちらを選んでも何とかなりますから。進路を決める際に重要なのは「D進と就職のどちらに気を惹かれるか」。どう過ごせば人生が楽しくなるか、充実した生活を送れるのはどちらの道なのかとお考えください。

最後に

この記事では、博士進学と修士就職で迷ったら就活してみようという話をしました。

面倒臭がらずに就活してみましょう。企業生活と研究室生活をともに想像できるようになったうえで進路選択してください。私は就活したうえで納得感を持ってD進する決断を下しました。就職するにせよ、D進するにせよ、どちらを選んでも大丈夫。博士課程修了後に就職できます。就職しても会社員として博士課程へ行く道が開けるでしょう。