連休終了
10連休ということは、休みが10日間で終わるということ。11日目には出社しなければならない。休めば欠勤扱い。日割り分の給与は支払われない。一円でも多くのお金が欲しい。旅行するにも、生活必需品を買うにも、それなりの原資が必要。今日からまた働きに出るんだ。心を躍らせろ。弊社は、ファンタスティックワンダーランドだ。
11日目の朝、ふと気が付く。今日は祝日だ。振替休日。弊社のカレンダーを見る。就業日だ。血も涙もない。振替休日ぐらい、ぶつかり稽古を休んではどうか。休まないらしい。今日も工場は動く。弊社の製品が届くのを心待ちにしている人がいる。弊社ファミリーのために弊社は頑張る。弊社、万歳。労働、万歳。ああ、働くって面白ーい。
布団をめくって体を起こそうとする。起きない。身体が出社を拒否している。ぶつかり稽古はもう勘弁してくれ。そろそろ本当の相撲を取りたい。実戦演習に入りたい。いつまでも教習ばかりで飽きた。頭がパンクする。インプット過多で蕁麻疹が出そう。
起きろ。今日も弊社に行くんだ。これは義務だ。労働者としての責務を果たせ。楽しい/楽しくないの次元を超越しろ。お前は機械だ。お前は、歯車だ。金属無機物に意思などいらん。身体を弊社に持って行け。弊社の指示通りに身体を動かせ。
心身を労働マシンモードに切り替える。身体を布団から抜き出せた。心の中のリトルかめが「まだ連休やれます!」と叫んでいる。うるさい。連休はもう終わったんだ。いつまで休んでんだ。とっとと働け。とっとこハム太郎ですら働いている。お前はハムスター以下か。博士(ハム)だったのか。回し車に載せて走らせるぞ。もう一度、博士課程にぶち込むぞ。それは嫌だ。マジで勘弁してくれ。
カバンに筆記用具と飲食物を詰め込む。戦闘服を着る。おのずと気合いが入る。玄関に立つ。扉をオープン。裸足だった。靴下とシューズを履き、出直す。
祝日出勤唯一のメリットは、朝の通勤列車が空いていること。普段の半分以下しか人が乗っていない。押しくらまんじゅうをしなくていい。それだけで気分が楽。毎日、振休だったらいいのに。乗車率は130%程度。弊社関係者と部活生しか乗っていない。空席はない。吊り革にぶら下がる。気分だけは内村航平選手。月面宙返りを試みる。やめておこう。観衆があまりの美技に感銘を受けて心臓を止めたらいけないから。
祝日退勤のデメリット。電車の本数と車両数が普段よりも妙に少ない。
帰宅ラッシュがえげつなかった。車内がぎゅうぎゅう詰めに。身動きを取れぬほどの窮屈さ。地層に押し固められた化石のような気分。恐竜も最期はこのような心情だっただろう。主要駅を過ぎても乗車率は下がらない。自分の降りる駅に着いた。人をかき分け、やっとの思いで下車。行きはよいよい。帰りは怖い。祝日出勤は、しんどかった。これなら平日の方がまだマシ。
それにしても、広島の通勤列車のあの混雑度合いは酷すぎる。どうにかならないのか。混みすぎやろ。いかんせん、車両数が短すぎる。山手線ぐらいの両数にすればいいのに。三両や六両ではどうにもならない。せめて八両。余裕をもって十両。いや、十一両。もうひとこえ、十二両。ここは素数で十三両。金曜になると縁起が悪いから十四両。”四”も縁起が悪い。十五両にしよう。広島駅のホームに入りきらない? 知るか。線路で降りればいい。
弊社はホンマにラグビー部だった

弊社にはラグビー部があるらしい。福利厚生による招待を受け、試合観戦に向かった。おかしいなぁ。弊社は相撲部だったはず。どっかでどすこい、どすこいと四股を踏んでいたじゃないか。首をかしげながら弊車でスタジアムへ。この目で見るまでは信じられない。
弊社は太っ腹で名高い広島のSHUCDEC(スーパー・ハイパー・ウルトラ・超・どんだけ・エクセレントカンパニー)。内定式をはじめ、引越し、初任給など、様々な場面で新入社員に大金を気前よく渡してくれた。ラグビーといえば紳士のスポーツ。太っ腹というより、ごっついイメージ。相撲:ラグビー=カビゴン:ブルドーザー。正反対だ。相撲とラグビーを誤認するはずがない。
一応、私もアスリートの片割れ。馬術競技で全国優勝し、マラソンを2時間42分で走る現役ランナー。やはり、何かの間違いだろう。今日はスタジアムへ公開稽古に招待されたのだ。ラグビー? ちょっと何を言っているのか分からない。分かった。弊社は相撲の隠語として”ラグビー”を称するのか。なるほどな。であれば合点がいく。さ、”ラグビー”を見に行こうじゃないか。
スタジアムに着いた。グラウンドを眺める。Sumo Wrestlerは見当たらない。上裸の人もふんどし一丁の人もいない。皆、ちゃんと服を着ている。いや、試合が始まるまでは信じない。今は服を着ているだけ。ウォーミングアップを済ませ次第、服を脱いでふんどし姿になるはず。これから芝生全面で1 on 1が催される。ピッチが遠いな。実家から双眼鏡を持ってくればよかった。
試合開始のホイッスルが鳴る。グラウンドには双方23人のプレイヤーが。そこにあるはずのないボールまである。果たして目の前で何が行われているのか。もしかして、弊社は本当にラグビー部だったのか。どうやら、そうらしい。認めざるを得ない。博士号を持っている以上、科学的事実の前には忠実にならねばならない。
相撲を見るつもりでスタジアムまで来た。始まったのは、ラグビーの試合だった。驚くべき事実に刮目するばかり。頭を抱える。さぁさぁ、困った。ラグビーなど観たことがない。五郎丸選手の特徴的なキックルーティンしか知らない。しかも、この試合に五郎丸さんは出ない。どうしようか。本当に何も分からないぞ。
スマホで手早くラグビーのルールを調べる。
点を多く取った方が勝つ。点は「トライ」と「コンバージョンキック」のふたつから得られる。弊社も、相手チームも、一点でも多く稼ぎたい。目の前の試合に何としてでも勝ちたい。弊社の攻撃を相手が防ぐ。相手の攻撃を、弊社自慢の猛烈な太っ腹がはじき返す。
ラグビーには様々な反則がある。
たとえば「スロー・フォワード」。ラグビーでは、ボールを前に投げてはいけない。もし前に投げたら審判にネコパンチされる。もちろん嘘だ。相手ボールになる。ペナルティーが科される。「ノット・ストレート」というヤツもある。スローインでボールが真っすぐ投じられなかった際に課せられる。
反則には「ノット・リリース・ザ・ボール」もある。ボール保持者が倒されたとき、すぐボールを離さなかったら相手ボールになる。これは辛い。博士課程で喩えれば、公聴会で審査員から矢のように鋭い質問を食らい、悶絶しつつも返答するような所業。そんなの無理でしょ。無理でも”やれ”と言うのがラグビー。まったくもう。イギリス人はとんでもないスポーツを思い付くわ。アイツらの思考回路は尋常ではない。どうかしているぜ。自分ならまず思い付かない。さすがはブリカス。

ルールを頭に入れて試合観戦。
開始早々、相手にトライを決められた。おいおい、大丈夫か。先行きが危ぶまれる。相手の攻撃でスイッチが入ったのか。弊社が怒涛の反撃を開始する。トライ、またトライ。相手をなぎ倒してトライ。後半はワンサイドゲーム。相手に一点も決めさせてあげなかった。
結局、弊社は40-10で勝利。完勝だ。あまりに一方的な展開。相手に申し訳なくなった。Chu! トライしてご~め~ん。同じカテゴリーでご~め~ん。 Chu! 強すぎてご~め~ん。意識しちゃうよね ご~め~ん♪
三年後の自分は何歳かなと考えていた。三年後、自分は弊社を背負ってこのピッチに立つかもしれない。あるいは、立たないかもしれない。弊社の一員として力を発揮できるだろうか。ラグビー選手の身体はゴツすぎる。彼らの腕は、私の太ももぐらい太い。どれだけ筋トレを重ねても身体を大きくできないまま。三年後に実戦投入されたとき、最低限活躍できるよう、さらなる鍛錬の検討導入の検討を真剣かつ手厚く加速させていきたい。
芽郁ちゃんがクロちゃんに。万有引力のせい
人は見かけで判断できない。見た目は子供のコナンも頭は大人。見た目は大人の博士学生も中身はバブたん。見た目は清楚な橋本環奈さんも、中身はオラオラ・パワハラ系福岡人。
「永野芽郁さん」という女優さんが居る。連ドラ”半分、青い”でファンになった。以来、映画やYouTubeでたびたびお姿を拝観していた。第一、芽郁さんは顔が可愛すぎる。目がくりっとしている。パーツごとのバランスが整っている。いや、むしろ整いすぎている。人間離れした人間。いま最もアンドロイドに近い人間。
大好きな女優・永野芽郁さん。彼女にまつわる衝撃的なスキャンダルが暴露された。
彼女は既婚者と不倫デートしたらしい。ホテルでの2ショット写真。身体がピッタリくっついている。仲睦まじい姿には目尻が下がる。幸せそうで何よりです。
LINEのやり取りも文春にさらされた。これはクロだ。間違いなく不倫デートしている。芽郁ちゃんからクロちゃんになった。クロちゃん、マジかよ。ウソだといってくれ。ウソ? ああ、よかった。どうもありがとうございます。
ブリカス一味のアイザック・ニュートンは、リンゴの落下を見て「万有引力の法則」を着想した。地球上の万物は互いに引き寄せられる。クロちゃんと既婚者も引力で引き寄せられたのであろう。ふたりは有名人。万有引力定数が常人よりも大きい。おそらく、相当強い力で引き合ったはず。だが、しかし。共有結合までしてはいかんでしょう。そこは理性を働かせて踏みとどまって欲しかった。獣になれない私たちで終えて欲しかった。引き付けられるがままに結び合っていてはいかん。獣と何ら見分けをつけられない。
ショックがデカい。あまりの衝撃に、三周回って大笑いしてしまった。むせ返った。口の中に入れていたミネラルウォーターが全て鼻から出てきた。おかげで鼻腔がきれいになった。クロちゃん、ありがとう。ああ、耳が痛い。耳抜きを試みる。ガッキーが結婚したときと同等のインパクト。その破壊力は底知れない。辛すぎてレム睡眠しかできなくなった。90分ごとに目を覚ましては”隣にクロちゃんがいないかな”と寝返りを打つ。
芽郁さんは各社CMで引っ張りだこ。広島都心を歩いていたら、一日に一度は芽郁さんの顔を見かける。本通商店街には、ビールを持った芽郁さんの垂れ幕が。サッカースタジアムの大型スクリーンには、永野先輩が「コレ? JCBデビットだよっ♪」と言って微笑んでいる。芽郁さんは、写真より動画の方が可愛い。サッカー観戦でピースウイングに行くとき、スクリーンで永野先輩を見るのが静かな楽しみだった。

クロちゃんスキャンダルの発覚後、関係各社は迅速に対処した。本通からは芽郁さんの垂れ幕が消えた。芽郁さんがアライさんになっていた。それはそれで面白いからアリ。アライさんの笑顔は、クロちゃんよりも眩しい。
ピースウイングでは、JCBのCMが弊社のCMに変わっていた。永野先輩の「JCBデビットだよっ♪」を聞けなくなった。大変遺憾である。先輩を返してくれ。悪いのは誰か。言うまでもない、ニュートンだ。アンタが万有引力なんて生み出したからこうなったんだよ。あーあ。やっぱりイギリスはロクでもない国だ。ブリカスめ。大和撫子から奪った貞操観念を返してくれ。さもないとネコパンチするぞ。ネコパンチだぞ? おらおら、怖いだろう。
恋に落ちるのは好き勝手。そこには重力より重いものがある。気を付けねば。
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