【事前準備】ちょって待って!手を動かして実験する前に必ずやるべき5つのこと

こんにちは!札幌と筑波で蓄電池材料研究をしている北大工学系大学院生のかめ (D1)です。日本学術振興会特別研究員DC1として国費から給料と研究費を頂いています。

研究を進めるにあたって重要なのが”如何に効率良く進捗を得るか”。やたら滅多に実験してもゴミデータしか得られない場合があるし、限られた時間内に成果を得られないと学位取得にも差し障るでしょう。そこでこの記事では、手を動かして実験する前に必ずやるべき5つのことについて解説します。

  • これから実験に取り掛かる研究室へ入りたての学生さん
  • 研究をもっと効率よく進めたい院生さん

こうした方々にピッタリな内容なのでぜひ最後までご覧ください。

かめ

それでは早速始めましょう!

目次

①意義:”やる意味のある実験なのか?”、”もっと良い方法はないか?”と冷静に少し考えてみる

まず最初にすべきなのは、『ホンマにやる意味のある実験なのか?』と一度立ち止まって考えること手を動かす前に頭を動かし、”その実験を行う意義があるのか”と落ち着いて自分に問うてみるのです。何となく (必要じゃないかな?)と思って着手した実験であっても、後になって

  • もっと上手い方法があったんじゃないか?
  • こんなにたくさん実験をせずとも所望の成果は得られたのではないか?

と着手自体に後悔を覚えるケースが数多く存在します。膨大な体力と時間を失った後に気付かされるのだから質が悪い。まぁ、実験経験をたくさん積まなきゃ”やる意義があるかどうか”の判別は不可能。かといって次から次へと実験していては早晩心身に変調をきたす。実験前に目前の実験の必要性をよく考えることが将来の自分の身を助けます。研究全体を通してやるべき実験量を大幅に減らせる可能性もあるため、思考停止で実験するのではなく少し考えてから実験するようにしてみて下さい^ ^

②先行研究の調査:前例があれば実験せずとも論文の引用だけで事足りる

いま取り掛かろうとしている実験、よく探せば行われた前例が過去にあるかもしれません。一つの検索ワードでGoogle Scholar内を探してヒットしなかったとしても、言語を変えたり検索ワードを変えたり別の検索エンジン (Web of Scienceなど)を使ったりしてみましょう。すると、いくら探しても出てこなかった先行研究が見つかる場合も。もし前例が既にあるなら、(再現実験でもない限り) わざわざ同じことを行う必要性はあまりないのではないでしょうか?自身の論文内で先行文献を引用するだけで主張の裏付けに繋がります。実験する労力を削減でき、かつ論文を楽に受理まで漕ぎつけられるのです。また、研究のメインへ据えている実験の前例が見つかれば、それを見つけるのが早ければ早いほど傷口の拡大を抑えられます。前例がある研究をいくら頑張っても学術論文にはなりにくいですし、如何に早く方針転換して別の実験へ取り掛かられるかが学位取得の命運を分かつのです。

先行研究の調査については”もう無理…!”というほど徹底的にやるべき。”前例がない”と速断をせず、実験や論文執筆と同時並行で最後までやり続けてください。

③実験結果の大まかな想定:どんな結果を得られそうか?どんな結果が出たら妥当なのか?判断基準を設けておく

三つ目にやるべきなのは実験結果の大まかな想定。『この実験をやったらどんなデータが得られそうか?』と結果の仮説を立てて下さい。仮説を立てなきゃならない理由は、どんなデータでもって”妥当”とするか、実験前に基準を設けておくため。妥当な結果が素直に出たなら数回で実験を終えられますし、実験行程の短縮により空いた時間で休めるからです。また、もし直観に反するデータが出たとしても、それが

  1. 実験セル/装置の不具合によるものなのか?
  2. それとも全くの未知の現象を見つけてしまった結果なのか?

と新たなる考察へすぐ乗り出せることに。①と②とではその後やるべき試行錯誤の質が全く異なってくるのです。ちょっとした事前準備が実験中/後の負担を軽くします。仮説立案は漠然とでも構わないので必ずやっておくべきです。

④プランB, Cの想定:失敗したらどうするか、何パターンか方針を立てておく

実験を最善案 (プランA)だけで終えられるだなんて本当に稀なケースです。大抵は何度も失敗を重ね、(何で上手くいかないんやろなぁ…)と頭を抱えて苦しむことに。失敗する可能性の方が圧倒的に高いのは自明ですから、プランA失敗時に備えて次善策 (プランB)や次々善策 (プランC)を実験前にこしらえておくべき失敗してから頭を抱えるより、失敗前に失敗後を想定して次の矢を放つ準備をするべき

自身も経験があるから分かるのですが、行き当たりばったりな実験をするのはもの凄くハードで辛いんですよ。進むべき方向が分からない。何をすればいいかもその都度悩む。失敗回数を重ねるにつれて人格がバラバラと壊れていきます。自分の生きる価値すら見失いかけて目の前が真っ白になったことも。その点、プランBやCの用意があればプランAで心置きなく失敗ができます。(大丈夫。最悪、別の実験をすればいいし♪)と気楽に実験ができるのです。私の思う事前準備とは、失敗を許容できる環境をどこまで整えられるか勝負であります。挽回策の用意が多ければ多いほど心置きなく失敗が可能。

人間の性質上、実験は失敗を重ねるにつれ経験値を積んで上達します。一方で失敗はネガティヴな気持ちになりがちなので、『どれだけ気持ちの落ち込みを抑えて失敗できるか』が実験上達の速度に関わるのです。

⑤成功期限の設定:締め切り効果を使って爆速で成果を出しにいく

最後にやっておくべき実験前の準備は、実験を行い、成功させる期限をあらかじめ定めておくことです。無期限で実験をゆっくりやるのも良いのですが、『○月○日までに成果を出すぞ!』と決めておくのが能率的。人間は締め切りの直前に馬鹿力を発揮することが知られています。夏休みの宿題が典型例。8/30まで怠けていても、8/31から9/1早朝にかけて急ピッチで宿題を済ませていきますね。「毎日8/31の気分で過ごして下さい」とはさすがに私も言いません。そんなことでは心がたちまちボロボロになってしまう。締め切り効果を実験へ使うには、実験成果を何個かに小分けし、それらを期日までに一つずつクリアしていくのがオススメです。たった一つの期日だけ定めて大きな成果を狙いに行くより、幾日かに締め切りを分散させて各個撃破していくイメージ。後者の方が長期間にわたってダレずに実験を継続できます。その際の心理的負担もいくらか抑えられる実感があります。自分で締め切りを設定すれば実験が驚くほどスイスイ進む。最終的に得られる成果の量も段違いに大きく・多くなるのです。

最後に

手を動かして実験する前に必ずやるべき5つのことはコレで以上になります。まとめると、

  1. やる意義のある実験なのか?と冷静になって考えてみる
  2. 先行研究を徹底的に調査する
  3. 実験の結果について、大まかに仮説を立てておく
  4. 最善策の失敗に備え、次善の策を用意しておく
  5. 実験の成功期限を何日か設定する

このような形になります。

本記事で述べた5つの事前準備をしたのち実験を行ったならば、今までより格段に実験の進捗を得られるようになるでしょう。皆さんの研究室生活をさらに上向かせるお役に立てれば幸いです。

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