学部生や大学外の皆さんからすると、「研究室」と聞いてもあまり実態を想像できないのではないでしょうか。白衣を着た人たちがフラスコを振っている、くらいのイメージかもしれません。半分合っていて半分違います。
この記事では、研究室で4年以上活動してきた私が、研究室の内部構造を解説していきます。これからラボに配属される学部生の方や、大学の研究室に興味がある方にピッタリな内容です。
かめそれでは早速始めましょう!
研究室とは?
大学の研究室では、学術分野の研究を進めています。「とある学問のとある分野の○○現象について研究する」といった具合に研究対象がかなり絞り込まれていて、扱う内容は非常に発展的かつ専門的。世界でその研究室しか手をつけていない分野だってあります。
大学や学部の偏差値に関わらず、どの大学のどの研究室でも世界最先端の研究が行われています。旧帝大でも地方の私立大学でも研究に関しては最先端。ここ、意外と知られていないので強調しておきたい。
研究はその性質上、論文にまとめて出版して初めて「研究を行った」と認めてもらえます。しかも学術雑誌へ論文を掲載するには、何かしら世界初の仕事が求められる。最先端の知見を得て、論文を発表し、研究予算を獲得し続けた研究室だけが大学で生き残れます。だから、どの大学にも最先端のラボしか生き残らないのです。大学の中では、非常に厳しいサバイバルレースが現在進行形で繰り広げられています。
研究室の階層構造


研究室では厳然としたヒエラルキーが存在しております。上から順に
- 教授
- 准教授
- 講師や助教
- 博士研究員や博士課程学生 (←私ですね)
- 修士課程学生や学部生
このような形の階級社会。ちょっとした封建社会ですね。上の役職の方の指示には従う必要があります。
ただ最近は、世間のパワハラ撲滅運動の影響を受けて、上の階層からの圧力が急速に弱まりつつあるようです。下の階層の人間からすれば、随分のびのびと過ごせる時代になりました。逆に上の階層の人間は、「自分の言動がパワハラに当たらないか…」とかなり気を遣っていらっしゃるみたいです。大変そう。
教授と准教授って何が違うの?


教授と准教授の違い
教授は研究室の中で給料を最もたくさんもらっています。一千万円プレイヤーが大半のようです。その代わり、めちゃくちゃ忙しい。研究だけでも大変なのに、講義を持ち、各所との付き合いをこなし、教員会議にも出席しなければなりません。おまけに、週に何度も出張していらっしゃいます。研究室に居る日の方が少ない月だってあるのです。高給取りの代償は、尋常ではない多忙さ。
准教授は教授より給料が少なめのようです。大学運営や諸所との付き合いは教授と同じくありますが、教授に比べると会議が少なめで、そのぶん研究に集中しやすいようです。とはいえ、准教授も仕事に忙殺されてしまいがち。平日は夜遅くまで、週末も朝から晩まで仕事をやっていらっしゃいます。
なお、教授と准教授は同じ研究室に所属しながらも、ほとんど別行動をとっています。ウチの研究室の場合、両者はまるで別の研究室ではないかと疑ってしまうほど違う研究をしていますね。
助教・講師・ポスドク
助教は講義を受け持たず、研究を中心に学科運営や研究室の安全管理を担当しています。教授や准教授と比べれば穏やかな仕事量で、研究に最も集中しやすいポジションと言えるでしょう。若手研究者が助教職に就き、業績を積み重ねて准教授へとステップアップしていきます。
講師は、講義を受け持つ助教と思っていただければ分かりやすいでしょう。助教以上、准教授未満の存在が講師ということです。
大学教員の登竜門たる助教・講師職ですが、応募倍率は10倍、時に100倍を超える超難関です。「大学教員にオレはなる!」と決意したところで、なれる保証はどこにもありません。むしろ夢破れる方が圧倒的に多く、ワンピースの世界より過酷かもしれません。
博士課程を修了し、助教職やアカデミアポジションを得るまでの間、若手研究者は博士研究員(ポスドク)として研究業績の積み上げに勤しみます。1〜3年の任期で研究室を転々とする生活です。日本で、イギリスで、ドイツで…と世界を流浪しながら、定年制のポジションを得られるその日まで戦い続けます。
年収は300〜500万円程度だそうです。正直、企業へ就職した方が遥かに良い待遇で迎えてもらえます。それでもポスドクを続ける方は、「どうしても大学教員になりたい」とか「個人の名で成果を発表できるのってカッコいい」とか、お金では買えない高貴な夢を胸に抱いて生きているのです。
特任教授・特任助教とは
研究室の中には、役職に「特任」と付くポジションがあります。特任教授もいれば特任准教授もいますし、特任助教もいる。なんだかカッコいい響きですよね。
ただでさえ凄い教員職なのに、「特任」と付いているだなんて一体どれだけ凄いのか、、、と思いきや、「特任」は任期付き採用の証です。終身雇用ではなく、「○○年から△△年まで」と期間を区切って採用される形。任期切れのタイミングで定年制ポジションへ上がれるかどうかが審査されます。
最近は大学予算も逼迫してきて、任期付きの教員職が増加傾向にあります。だから、特任と名の付かないポジションでも任期制のポジションの場合があるようです。予算が厳しくなったときに人員を調整しやすい方が大学としてはありがたいのでしょう。
研究室ごとにルールが違う


それぞれの研究室は、まるで一つの独立国のようです。一つ隣の研究室へ行くだけでまったく異なるルールが定められています。ルクセンブルクやモナコ公国、バチカン市国よりもさらに小さい国など、大学は数多の小国をまとめた集合体だと思ってください。
たとえば、私の研究室にコアタイムはありません。ちゃんと成果さえ出していれば、いつ来ていつ帰っても構わないのです。ところがよその研究室ではそうもいかない。とある研究室では「特別な事情のある日を除き、平日は9時から17時まで居てください」とのルールがあります。コアタイム中、昼休み以外はスマホを使ってもダメなラボまであるようです。使っているのがバレた場合、「何をやっているんだ!」と叱責されるのだとか。恐ろしいですよね。
研究室を選ぶ際には、その研究室で制定されているルールをよくよく確認しておいてください。入ってから後悔しても遅いですよ。海外旅行で、入国前にビザの要件を調べるのと同じです。
学生が実働部隊、先生方は研究費を稼ぐ司令塔


研究室で過ごしていると、教授や准教授がなかなか実験室へ顔を見せないことに気付くかもしれません。サボっているわけではありませんよ。大学運営に授業に論文執筆にと、山積みの業務を処理していらっしゃるのです。
手を動かして実験するのは、学生や研究員たち。では先生方は何をしているのかというと、研究費集めです。先生方が懸命に各所から研究費を集めてくださっているからこそ、我々学生は思う存分研究できるのです。企業に出向いて共同研究を持ちかけ、研究費を引っ張ってくださることもあります。そう、先生方は尊い存在なのです。
私もフェローシップに申し込むときに研究申請書を書いた経験があり、研究費を稼ぐ大変さはよく分かっています。先生方は年に何件もああいう書類を書いているのですから、実験に手を回す余裕がないのも当然の話です。先生方には感謝しかありませんから、我々学生が手を動かして頑張るしかないという訳です。
最後に
研究室にまつわるさまざまな疑問を解消する記事は以上です。
外から見ると謎に包まれた研究室ですが、中に入ってみれば、それぞれの立場の人間が持ち場で懸命に動いている場所だと分かります。配属される前に内部の景色が少しでも見えていれば、初日の緊張も和らぐのではないでしょうか。























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