日曜日の朝、目が覚めると身体が勝手に支度を始めています。歯を磨いて着替えてリュックを背負い、気づけば研究室の前に立っている。誰に頼まれたわけでもないのに、休日も研究室へ行ってしまう。 ウチの研究室がブラックだからというわけではなく、純粋に研究室へ吸い寄せられてしまうんですよね。まさに、研究中毒。まるで薬物かの如く、研究室を求めてやまないのであります。
ただ、この生活を一年以上続けてきて分かったことがあります。休日の研究室には、確かなメリットと無視できない副作用がある。 薬と同じで、効能だけを見て飲み続けると痛い目に遭います。
この記事では、研究中毒歴一年超の人間が、休日に研究室へ通うメリットとデメリットを本音で語っていきます。
- 私と同じく土日も研究室へ行ってしまう研究中毒の学生さん
- 研究中毒者の気持ちを理解したい学生さんやパートナーの方
- 配属された学生を研究中毒にしたい大学教員様
こうした方々にピッタリな内容なので、是非最後までお付き合いください。
かめそれでは早速始めましょう!
メリット
静かな居室で作業に没頭できる


平日の研究室は人の出入りや話し声が飛び交っていて、集中しようとしても不可抗力で乱されてしまいます。思い通りに研究を進められず歯がゆい思いをしている方も多いのではないでしょうか。
休日は研究室へ来る人がほんの僅かしかいないので、雑音がほぼ存在しません。もし他に人がいても、休日にわざわざ来るのは研究熱心な方ばかりですから、居室が急にパーティー会場のようにうるさくなる心配がないわけです。平日と休日とでは研究室内での過ごしやすさがケタ違いで、私のように静けさを好む人間にとって、休日の研究室は最高の作業環境なんですよね。
実際、私は平日よりも休日の方が作業の進捗が速いです。感覚的には1.3〜1.5倍速で仕事を処理できています。平日は雑音をシャットアウトするために膨大なエネルギーを消耗しますが、休日はそのエネルギーを全て作業に振り分けられる。休日の方が作業が早く進むのに、疲労度は平日より少なく感じるんですよ。
あまりに休日の作業効率が高いので、毎日休日だったらいいのに、と思ってしまうほど。春・夏の長期休暇は毎日静かで天国です。
先生にめちゃくちゃ気に入ってもらえる


休日にも研究室へ行くと分かりますが、大学教員は休日にも出勤してデスクワークをしています。論文を書いたり大学の雑務を片付けたりするには平日だけでは到底終わらず、休日も研究室へ来て仕事をする必要があるんですよね。
休日に学生が顔を出すと、先生は研究熱心な「同志」と見なしてめちゃくちゃ気に入ってくれます。「おー、頑張ってるねぇ」と声をかけてもらえたり、口には出さずとも心の中でポジティブな評価をしてもらえたりする。
先生からの評価を上げておくと、平日の研究室やゼミ発表で先生の当たりが目に見えて柔らかくなります。不真面目な学生には厳しめの口調で指摘するのに、休日にも来る研究中毒の学生には優しく諭すような口調になるんですよ。
「先生のお気に入りになるためだけに休日を潰すのは嫌だなぁ」と感じる方も一定数いらっしゃるでしょう。正直、ブログを書いている私自身も、先生からの評判を気にして大学へ行くのは嫌だと思っています。
しかし、それでもあえて休日に顔を出し続けていると、何か良い成果を出した際に先生から嫉まれることが少なくなるんです。「あれだけ頑張っていたら、すごい成果を出して当然だよな」と、成果を運ではなく努力の賜物と見なしてもらえるわけであります。
研究室サバイバル生活を生き抜くにあたり、嫌味のない形で普段から教員へ信頼を積み上げておくことはものすごく重要です。実力主義の世の中ではありますが、実力以外の可愛げなど人間的な要素も磨き忘れないようにしてください。
デメリット
「行かなきゃ」と強迫観念に駆られ、休むべき時に休めなくなる


「休む日」と書いて休日です。本来は平日に溜めた疲れやストレスを解消するための時間のはず。
貴重な憩いの時間を研究に充てれば間違いなく研究は進みますし、休日に休んでいる人とは週2日以上も稼働時間が違うわけですから、ゆったりペースでやっていても差をつけられます。
一方で、休日も休まず働いていると少しずつ心が疲れてきます。それでも無理して研究室へ行けるうちはまだマシなのですが、研究中毒が重症化すると「研究をしたい、でもやる気が出ない…」とガス欠のような状態に陥るんですよね。さらに重症化したのがいわゆる燃え尽き症候群で、心を虚無感が占めて何もできなくなり、研究の進捗がピタリと止まります。
周囲の目がまた厄介なんですよ。休日出勤で速い研究ペースを維持していると、周りからはその速いペースがデフォルトだと勘違いされてしまう。「いやいや、無理して飛ばしているだけだよ」と反論しても、「休日にまで研究室へ行く人は生粋の研究好きなんだから、無理なんて感覚はないはずだ」と輪をかけて誤解されがちです。
周囲からの評判を傷つけたくないあまり、もう限界だ休みたいと心が悲鳴を上げていても「いや、ここで行かなきゃダメでしょ」と強迫観念に駆られてしまう。休まなきゃいけないときに休めなくなり、燃え尽き症候群へまっしぐらです。
燃え尽きそうなのを察して頑張って一日休んだとしましょう。すると週明けに誰かから「昨日はどうしたの?」と、休日に来なかったことを心配されてしまうんですよ。どうしようもないですね。
燃え尽きを回避するには、周囲の声を気にしない力と強迫観念を追い払う力が大切です。「二週間に一日は絶対休む」と自分でルールを決めて、意識的に休日を設ける努力をしてください。
娯楽に疎い世捨て人になる


土日も研究室へ通っていると、間違いなく世間のトレンドに鈍感になります。研究室メンバー同士の会話についていけなくなりますし、ついていけないのがつまらないから益々殻の中へ引きこもって世情に疎くなっていく。ドラマも芸能人も知らない、昨日のニュースも分からない、流行りの食べ物なんて知る由もない。最低限の情報だけ備えた大学版・世捨て人の完成です。
世捨て人になった当人は、実はあまり困っていません。困るのは周りの人間で、何を話題にしたら食いついてもらえるか途方に暮れてしまう。世捨て人サイドとしては自分の研究を肴に話しかけてもらえると大変嬉しいのですが、いかんせん「話しかけるなオーラ」が全開ですから、大好物の研究話をエサに釣り上げようにも、エサを投げ込むこと自体を尻込みされてしまうわけです。
世捨て人は娯楽が苦手、いや嫌いと言っても過言ではありません。 たとえ研究中毒者のあなたが今は遊びが得意だとしても、研究へ純粋な心で没頭すればするほど遊ぶのが煩わしくなってきます。遊びって刺激が強いんですよ。サイエンスに比べて脳がヒリヒリしてしまって、遊んでいるうちに気持ち悪くなって遊びたくなくなる。休日に研究室へ通い続ければ、こうした副作用に確実に見舞われますので、くれぐれもご利用は計画的に。
研究をやりすぎて、一周回って研究嫌いになる


一つの研究テーマを極めていくと、自分の研究テーマを嫌いになってしまう瞬間がふと訪れます。それまでは大好きだったのに、次第に自分や装置の限界が見えてきて「やれることが限られているな…」と壁に直面するんですよね。研究をする動機自体が揺らぐケースもあります。
私自身、次世代電池を実現すべく日々材料研究に勤しんでいるものの、「電池ってエコなのか? 核融合で無限に電気を作れるようになったら電池なんていらなくない?」と研究のモチベーションにヒビが入りかけたことがありました。
研究とがっぷり四つに組まなければ、こんな悩みは浮かび上がってきません。休日まで研究室に行く真面目な人ほど研究嫌いになりやすいので、嫌いになるほど自分を追い込まないよう十分注意してください。
最後に
休日に研究室へ通うメリットとデメリットを語ってきました。
静かな環境で作業効率が跳ね上がるのは確かですし、先生からの信頼が積み上がるのも事実です。ただし副作用は重い。強迫観念に蝕まれ、世捨て人と化し、好きだったはずの研究を嫌いになるリスクと隣り合わせです。
冒頭で研究中毒を薬物に例えましたが、一年以上この生活を続けてきて、あの例えは冗談ではなく実感だったと思い知らされています。効くけれど、量を間違えれば毒になる。 休みたいと感じた日曜の朝、布団の中で「今日は行かなくていいんだ」と自分に許可を出せるかどうか。研究を長く楽しく続けるコツは、たぶんそこにあります。
日曜の朝、身体が勝手に支度を始めてしまったら、一度立ち止まって自分の心に聞いてみてください。本当に行きたいのか、行かなきゃと思い込んでいるだけなのか。その問いに正直でいられるうちは、まだ大丈夫です。



















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