植物園
最終日の朝は、絶好の観光日和。どこまでも飛んでいけそうな青空と、清々しいほどカラッとした大気。
9時から北海道マラソンが始まる。道マラ開始とともに、札幌中心部の道路が封鎖される。移動経路が不自由になる前に行動を開始しておきたい。今こそ動き出さねばならぬと思っている。だからこそ、今こそ動き出さねばならぬと思っている。
昨日は、神社とわちゅごなスタジアムへ足を運んだ。さてさて、今日はどこにしようか。
北大札幌キャンパスは札幌駅北口にある。実のところ、北大の敷地は、札幌駅の南側にもある。
北海道庁の隣の隣の隣の隣の、そのまた隣に「北大植物園」がある。クラーク先生の亡霊が大志を抱きつつ、夜通し管理していることで世界的に名高いとか、いや、やっぱり名高くはないとか。大手の観光ガイドブックには載っていない。札幌ローカルのタウンページレベルで、ようやく紹介されるかどうか。
植物園は、穴場スポット。時計台や青い池の混雑度合いを100とすれば、植物園の混雑度は1と3/4ぐらい。とにかく空いている。


植物園の良いポイントは、北大関係者にやさしい所。通常400円ほどする入場料が、北大生なら無料で入場できる。北大早期修了者の私は、学生証の期限が一年残っている。何気なく学生証を見せたら、きっと無料で入場できる。実のところ、財布にはまだ学生証が眠っている。これはとんでもない節約術を思い付いたモノだ。
さて、SHUCDEC社員の私が、不正入場などしても良いのか。たった400円。ハーゲンダッツに換算すれば1.5個相当。最近15円になったうまい棒なら26.6666666666本分。うまい棒26.66666666666666666666666666666本をケチってどうするつもりなのか。やはり、お金はちゃんと払うべき。たった400円でも北大にお金を落とし、北大への恩返しとしたい。
お金は、マネーである。力こそ、パワーである。
北大生だったころ、何か嫌なことがあるたび、植物園で散歩した。植物園は、植物まみれ。緑に囲まれているうちに、血も汗もフォレストとなる。ついでに息までリフレッシュできる。札幌デンドライト界隈では、植物園は「見るフリスク」と言われている。
入場門でパンフレットを受け取り、中へ。およそ一年ぶりに歩く植物園。いつ来ても静かで癒される。サクッと土を蹴り歩く音。ホー、ホケキョ?と首をかしげるウグイス嬢。ドングリと教養科目の単位を、目を血走らせながら集めるエゾリス。目を閉じ、日向の芝生で手を広げる。ああ、気持ちがいい。背筋がほぐされる。

花が植えられているエリアに着いた。赤くて健気な花が目に入る。
彼女の名前は「ノルディア」さん。イギリスから輸入されたらしい。バッキンガム宮殿の脇に植えられていてもおかしくはないゴージャスさ。「私、別にあなたの世話にならなくても咲いてみせますけど?」と言わんばかりな意志の強さを感じる。イギリスの女性もノルディアと同じぐらいゴリゴリである。男以上の馬力でもって働き、フランス人へ紅茶をドバドバと湯水のごとく浴びせかける。
夏だからか、花のバリエーションが少なかった。ほとんどの花は枯れて萎れていた。見ごろは春だったのかもしれない。次は春、北大の学生証を携え、花を愛でに札幌を訪れたい。札幌は、いつ、何回訪れても楽しい。札幌は二度漬けでも三度漬けでもしたい街。
丸善ジュンク堂

地下歩道経由で本屋さんへ。学生時代に行きつけだった丸善ジュンク堂 札幌大通店へ足を運ぶ。ここには、地下2Fから地上4Fまで、本がギッシリ詰め込まれている。
丸善ジュンク堂は”ちゃんと本を売っている”雰囲気。店内はどこまでも落ち着いている。エスカレーターの「手すりにご注意ください」的な案内の無限ループもない。書店の中が、とにかく静か。布団を敷けば、きっと10秒で寝られる。立ち読みしながら、こくり、こくりと舟を漕いだこともある。
札幌市内には、大きな本屋が三か所ある。駅ビル内の三省堂、駅西口の紀伊国屋、そして大通の丸善ジュンク堂。
自分が好きだったのは、大通の丸ジュン。アパートから丸ジュンまで、ほふく前進で軽く2時間はかかる。先に挙げた三つの中では最も遠くて行きづらい。それだけかけても行く価値がある。丸ジュンに行けば、誰でも本が好きになる。人間に本を愛させる不思議なエキスが、丸ジュンの店内には漂っている。

私はSHUCDEC社員。ぽんぽこりんの業務を担う引き換えに、手取り20万円オーバーの大金を受け取っている。20万といったら、20万円である。毎月、冷蔵庫を5個は買える。家が二か月で冷蔵庫まみれになる。冷蔵庫の面心立方格子。冷蔵庫ハウスでも作ってみるか。
大変贅沢な悩みがある。頭の毛量が多すぎて遺憾である。切っても切ってもすぐ生えてくる。ひと月に一度も散髪へ行かねばならない。三カ月に一度ぐらいなら楽なのだけれども、ひと月に一度だなんて面倒くさすぎる。博士課程のころ、セルフカットに挑戦した。あまりにガタガタになりすぎて挫折した。髪型が、生まれたてのヒヨコみたいになった。後輩に笑われたくなくて、散髪屋通いに戻した。
正直、そんなことはどうでもいいんですが(じゃあ書くな)。せっかく本屋さんに来たのだ、何か本を買って帰ろう。書店に入ると、必ず一冊は本を買うことにしている。書籍代は、本屋への入場料。たくさんの本を立ち読みさせていただいた御礼に、心ばかしの募金をさせていただく。
今回は、札幌でしか買えない本を買いたい。北大進学前に買い、いつの日か売ってしまった「札幌学」を購入した。札幌学には、北海道にまつわる様々な雑学が記されている。広島から札幌へ移住するに伴い、札幌学の知識が大いに役立った。手袋は「履く」。ゴミ捨て場は「ごみステーション」。札幌駅は「サツエキ」。広島でもう一度、札幌学を読む。北大時代の思い出を棚卸しして、学生時代の二度漬けを楽しみたい。
札幌学だけ買おうと思って、足をレジへと向けかけた。突如、後方から強烈な引力を感じ、導かれるがままに歩いて行った。
たどり着いたのはオカルトコーナー。右手が、いかにも怪しげな書籍「TUFTI(タフティ)」を持ち、目は字面へ釘付けになった。ちょっと何が書いてあるのかよく分からない。マネキン? 三つ編み? 現実創造…? 指導教員みたいなことをいうね、この人は。
最近、自身の運気が停滞気味。学生時代のような勢いをまるで感じられない。ここらで良い運勢を引き寄せたい。タフティでは、夢を叶える方法が具体的に論じられている。タフティを理解して実践すれば、何か変わるかもしれない。丸ジュンでタフティと札幌学を購入した。さてさて、これからどのような未来を創っていこうか。
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